平凡雑音日記。

赤屋カル

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悲惨な日とじいじ

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 私は自分の部屋を開ける。
正式には家。
私の家は家の中にある。
だから自分の家のドアを開けると,まだもう一つの玄関が存在し、

共同通路というものは廊下である。

そんな廊下で私は悲劇に遭遇。

私は久々にじいじが来るってことで
白いシャツに真っ黒の長パンツを履いた。

ちょっとおしゃれした。

インドアな私は,一日中下着やパジャマでいることが多い。

髪はボーボーで,いつもベッドかソファの上にいる。

そんな私がじいじの為に外に出るのだ

じいじが来て,間もない時、
一緒にワンルームの私の部屋を
ビフォアフターしようということになった。

というのも,キッチンが丸裸だから,
友達が来た時に少し
嫌なのだ

なので,部屋とキッチンに仕切りがつくよう,カーテン見たいなレールみたいなやつを間に
くっつけてやった。


まるで満員電車に一か八かで入り込んだ主婦みたいだ。

サラリーマンではない。サラリーマンより主婦の方が強引な気がするから,ここは主婦を挙げておく。
決して,主婦に恨みがあるわけではない。
か弱い主婦だってきっといる。

ここは,化粧っけが濃くて,ピンクか赤の似合わない口紅をして,ちょっとモッサッと

鳥の巣が頭に乗っけてあるような,
紫の布に花柄がちらほら散りばめられてる
あの主婦を想像した。

「あら,そんなこともわからないザマスの」
ってやつ。

「ザマスの」とか言っちゃう主婦を想像した。

んで,顔はちょっとおたふくが治りかけなくらいの。

どしっとした肉体で,周りのサラリーマンやらをぐいぐいとネジのように回し,
自分をその電車へ押し込んでいく。

凄まじい光景。

そんなおばさんを想像したが,そんなことはどうでもいい。


話が逸れてしまったが,キッチンの仕切りの話に戻す。

そのキッチンのやつをつける為に,ドライバーってものが必要で

大家さんが持ってるかもしれないなって
共同ベランダ,共同の部屋を見た。

残念ながら見つけられず,結局100円ショップで買うのだが,悲劇は起きる。

ベランダから戻ろうと,通路を歩いていると,

「いてっ!」
何かが右脚のひざの裏に刺さった。

とげ。
棘のような痛み。
バッ!っと後ろを見ると

「僕は知りませーん」みたいな顔して後ろにスーって消えてく蜂がいた。

アシナガバチである。

初めて蜂を刺された私は,すぐにじいじに
刺されたことを報告しに行った。

親指と人差し指の先端で丸く円を作る。
そう,その大きさ。いや,それ良いもうちょいでかいかも。ビッグ。

私はただ怖く,逃げた。
幸いなことに針は刺さってないが,
刺された後は残ってあった。

後にこいつが,ぶわっと一部でおしくらまんじゅうがあったみたいな感じになるのだ。

まんまるく,赤く,ふっくらと。

あの蜂は私が黒いズボンを履いてたから
刺したのだろうか。

それとも,「こいつ,なんか気に入らね,刺してやろ。」っていう軽いノリで刺したのだろうか。

どっちにしろ,日光の照らされた扉に向かって飛んでいったあの蜂には

心の底から食ってやろうかと思ったが、
不味そうだし,アシナガバチの復讐なんか
されても嫌だからやめた。

ただ,光に照らされ消えていく後ろ姿を途中まで見送って,自分の部屋に帰った。

そんで私は今日,じいじに
あたふたなりながら蜂に刺されたことを報告する。

「これ,薬塗った方がいい?持ってないよ。買いに行く?」

「つまんで,毒素出しときゃ治る。
放置しとけ。」

「いや,軽すぎだろ。どうすんだよ,死んだら.」
「しにゃーせん」
「死んでも葬式で蜂で死にましたなんて言うなよ。せめてにこやかに旅立ちました。って言えよ。」

なんてその後のじいじの冷めた態度に心底びっくりしたが,

冷静なじいじを見て,
ああ,私もこんな冷静な人になりたいなぁって思った。

ああ,悲惨な一日だわ。
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