平凡雑音日記。

赤屋カル

文字の大きさ
上 下
35 / 53

生ぬるい風

しおりを挟む
 どうやら私に彼氏ができたらしい。
相手は私より4歳上の社会人。

赤い車を走らせる。
華麗なキレのある駐車。

判断力のない方向転換は彼の性格を表している。

彼に告白されたのは終盤で,コンビニの駐車場だった。


真っ暗な夜の中,ぽっそりと置いてあるミニカーのような赤い車の中に私と彼。

私は帰ろうとドアを開けようとする。

「言いたいことがある」
と彼がいうので
私は
「なに?」

と聞いた。

「付き合って欲しいです。僕の彼女になってくれませんか?」
と。

漫画によくある。
ヒロインは男が告白するその瞬間まで気づかず

「えぇ!!」ぽわわ わーん
花びらひらひら的なトーンが寄せられている。

あのシーン。

残念ながら花びらは舞うこともなく
ぽわわ わーん みたいな感じにもならず

ただ似ているとすれば
告白したその瞬間まで,彼が私に想いを告げようとしていたことを知らなかったことだ。

デートして3回。
3回目にて告白。

世の中では普通なのだろうか。
私は少し「はやないか?」って思ったが
その価値観というか基準は人それぞれ違う。

「あ,はい。よろしくお願いします」
彼は
「ごめんね,」って言って
私を抱きしめた。

残念ながら
桃色のような頬にはならず
抱きしめられた私はただ,無。

多分まだ好きでないからだ。
なんでokしたのかはわからない。

わからないが,まぁ,付き合ってみて考えよーって軽い感じだ。

ええ,ここで「うわ,この女,最低」って思ったあなた。
多分普通。通常の心の持ち主だ。

しかしだ。

それは基準にすぎない。
人間の基準の考えであって,
私はその基準のレッテルを少しずれただけなのだ。

まぁ,そこはさておき。
抱きしめられた瞬間

「うわぁ…」
って少し引いた。

抱きしめられることが嫌だったのか。
早すぎないかって思ったのか。

それともまだ好きじゃないからか。

どっちにしろ引いた。

惹くのではない。引くのである。
これは大きな違いである。

そして私はその抱きしめられている時は,
あー,帰ってさっきのシュークリーム食べよっかなって考えてたことは,彼には黙っておこう。

シュークリームはちょっとかため。
生地の方が面積が大きかったので,クリームが少なく見えた。

「いちおし!」
って書いてあったが,
同じ店の「モンブラン」と書かれた
モンブラン風の栗きんとんみたいなやつが一番美味しかった。

彼のことはシュークリームと共に消え失せられたが,
次の日の彼のLINEでまた
あ,そういや彼氏になったんだよねって
ふっと

そよ風がササーーッてやってくる感じに
思い知らされるのである。

そよ風…いや
生ぬるい風である。

生ぬるい風は目を閉じて,全身で浴びても

「ハハハ」としか思えない
なんとも言えないアレである。


生ぬるさに打ち勝つには,適度な水分補給と自信の心の器がぼーーんってでかいのが大事だ。


生ぬるい風はそよ風より嫌よね。
そよ風ってなんか気持ちいし。
ハハハ
しおりを挟む

処理中です...