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1章 魔術探偵誕生
22話
しおりを挟む「おじさんだけで帰っていいよ。僕はこのままでいいから。」
「こんな所で一人で何をするんだよ。ここじゃあ食べ物や娯楽なんてものはないだろ。」
「いいよ。そんなもん。なくてもここで一人になりたいんだ。いや、もうどうでもいいんだ。それにここは、そんなのなくてもいいところだし」
「ハァー」
「なんで、最近の子供はこう自分から閉じ籠ることが多いんかね」
「え!?」
「別に、学校が嫌ならいかなければいいし、なんなら学校を変えればいいじゃないか。」
「おじさんは今の世の中を知ってるの?調べれば、すぐに情報が出回るんだよ」
「だからってまた、いじめられるのか?確か、まだ中学生だったよな。それなら学費も大差ないだろ、違うか?」
「そ、それは・・・」
これまで、たんたんとしゃべっていた、晴輝がとうとう言葉をつまらせた。
「さあ。帰るぞ。」
俺は晴輝に手を伸ばした。
「で、でも、今さら・・・」
「姉は、心配していたぞ。」
「・・・」
「『カッコいいことしやがって』っても言っていたぞ」
「え!!ホントに!」
「ああ。本当だ。帰ったらねーちゃんに聞いてみるんだな。」
始めて晴輝が俺の話を食いぎみに答えてきた。少し俺に心を開いてきているのだろう。
「お前は、まだ子供だ。人生なんていくらでもやり直せるだろ。・・・俺と違ってな。」
「え?」
「俺は昔、探偵じゃなくて、警察になりたかったんだ。人々の正義の味方になりたくてな。でも俺は逃げ出した。警察官学校の授業に耐えられなかった。でも、そんなときに探偵に誘ってくれた人がいたんだ。」
「それで、今は探偵に」
「そうさ。あの人がいなかったら今の俺はいないといっても過言じゃない」
こう言うときは、俺の話をして彼の心を完全に開いてもらった方が都合が良かった。
いや違う、段々と晴輝が俺と重ねていることに気がつき、俺が導かれたとのように、今度は俺が晴輝を導きたいと思い始めていた。
「だからさ。晴輝も変わることはできる。そのきっかけだと思って、ここから出ようよ。」
「・・・・」
晴輝はその場で考え込んだ。少しでも、『帰る』という選択肢ができた証拠でもあった。
「・・・わ、わかった。」
晴輝は差し伸ばした手を握り返し、帰る決心がつき俺は、心がホッとした。
「でもどうやって帰るの?」
「ああ、それならこれで帰れるって、魔術に詳しい人がいっていてな。」
ポケットから茜から貰った、あの防犯ブザーを取り出した。
「本当にそれでいいの?」
「さーな、俺も正直これでいいのかと思うとちょっとな。」
やはりそう思っていたのは俺だけじゃなかっただな。何かうれしいな。
「よし、晴輝!ここ、引っ張れ」
「わかった。」
ビビビビビ
防犯ブザーのうるさいおとがここにいる空間すべてに響き渡ったのと同時に、世界が明るくなった。
この異空間との最後の一時だった。
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