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ハルの太陽、ナツの月(番外編&スピンオフ)
One In A Million
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すっかり殺風景になったその部屋にはギターを持った2人の姿がある。
「この辺もっとシンプルにしたい。こんな風に」
ギターを鳴らしたのはタカハシだ。
「それだと平坦過ぎない?」
ハルがちょっとだけ不服そうだ。
「そうかな?逆にサビが目立つと思うけど」
「ナツはいっつも削りすぎだよ。カネゴンさんも言ってたじゃん」
「それはそうだけど・・・・」
カネゴンというのは業界では有名なレコーディングエンジニアだ。
ハルを始め多くのミュージシャンがお世話になっている。
フルネームはカネヒラ マサシで、誰もがカネゴンと呼ぶ。
「最終的に決めるのはハルでしょ?カネゴンさんも意見できないんだし」
ハルにはプロデューサー的な存在がいない。何でも自分で出来てしまうからだ。
基本的にエンジニアもバックバンドもハルのディレクションに従う。
「だってナツが正しいことも多いんだよ。この前の曲もそうじゃん」
先日、SOLことタカハシの曲をハルが演奏した。それが好評だった。
なんと2コードの曲だ。ミズタニ、カネゴンを始めスタッフの大半がシンプル過ぎて難色を示したが、ハルが気に入ったのだ。
「たまたまだよ。僕は音楽的な素養がないんだから」
「いつもそう言うじゃん」
「ハルの声ならどんな曲でも響くさ。本来なら僕は意見できる立場ですらないんだし」
ハルとタカハシは隠し事をしないという盟約を結んでいる。
こんな風にハルが若干ヒートアップすることも珍しくない。
タカハシはいつも冷静だ。俯瞰して物事を考えようとする。
こんな時は少し間を置くに限る。
タカハシがPCを起動して音楽を掛ける。
レコードはほとんど処分した。ミズタニを始めSRJのスタッフが買い取った物も多い。
社長まで欲しいと言ってきた時はハルと2人で笑ってしまった。
「国内盤初めて見ました・・・」
「これ重量盤出てるんですか?」
「スラップハッピーの国内盤・・・・まとめ買いしてもいいですか?」
「それは手放さないからダメ」
「そこを何とか・・・・・」
みんな興奮した様子で買いまくっていた。
SRJには社長をはじめ、特別そういう人たちが集まっているそうだ。
(ちなみにスラップハッピーはその後もしつこく頼まれたので渋々手放した。拗ねた顔をはじめて見た。byハル談)
「お、エタ・ジェイムス」
正反対な2人だが、音楽が好きだと言う一点だけは常に同じだった。
「ハルといると幸せだよ」
「負ける気がしないですね」
また、2人で笑う。
「これから先もさ」
「一緒にいれば、色々な部分も見えちゃうけど」
「喧嘩も沢山しよう」
今夜も世界中で愛が育まれている。
その中のひとつ、ほんのちっぽけな2人が創作し、小さな部屋で生まれた曲が世に放たれようとしている。
世界が変わったのではない。世界の見方がほんの少しだけ変わっただけだ。
それなら決して難しいことじゃない。
以前は悲しみと憎しみしか感じなかった世界なのに、今は考えれば考えるほど、思えば思うほど美しい世界でしかなかった。
ギターを抱えた男はまた笑う。
この温もりをずっと忘れていた。
目の前には太陽がいて、涙を乾かす。
「この辺もっとシンプルにしたい。こんな風に」
ギターを鳴らしたのはタカハシだ。
「それだと平坦過ぎない?」
ハルがちょっとだけ不服そうだ。
「そうかな?逆にサビが目立つと思うけど」
「ナツはいっつも削りすぎだよ。カネゴンさんも言ってたじゃん」
「それはそうだけど・・・・」
カネゴンというのは業界では有名なレコーディングエンジニアだ。
ハルを始め多くのミュージシャンがお世話になっている。
フルネームはカネヒラ マサシで、誰もがカネゴンと呼ぶ。
「最終的に決めるのはハルでしょ?カネゴンさんも意見できないんだし」
ハルにはプロデューサー的な存在がいない。何でも自分で出来てしまうからだ。
基本的にエンジニアもバックバンドもハルのディレクションに従う。
「だってナツが正しいことも多いんだよ。この前の曲もそうじゃん」
先日、SOLことタカハシの曲をハルが演奏した。それが好評だった。
なんと2コードの曲だ。ミズタニ、カネゴンを始めスタッフの大半がシンプル過ぎて難色を示したが、ハルが気に入ったのだ。
「たまたまだよ。僕は音楽的な素養がないんだから」
「いつもそう言うじゃん」
「ハルの声ならどんな曲でも響くさ。本来なら僕は意見できる立場ですらないんだし」
ハルとタカハシは隠し事をしないという盟約を結んでいる。
こんな風にハルが若干ヒートアップすることも珍しくない。
タカハシはいつも冷静だ。俯瞰して物事を考えようとする。
こんな時は少し間を置くに限る。
タカハシがPCを起動して音楽を掛ける。
レコードはほとんど処分した。ミズタニを始めSRJのスタッフが買い取った物も多い。
社長まで欲しいと言ってきた時はハルと2人で笑ってしまった。
「国内盤初めて見ました・・・」
「これ重量盤出てるんですか?」
「スラップハッピーの国内盤・・・・まとめ買いしてもいいですか?」
「それは手放さないからダメ」
「そこを何とか・・・・・」
みんな興奮した様子で買いまくっていた。
SRJには社長をはじめ、特別そういう人たちが集まっているそうだ。
(ちなみにスラップハッピーはその後もしつこく頼まれたので渋々手放した。拗ねた顔をはじめて見た。byハル談)
「お、エタ・ジェイムス」
正反対な2人だが、音楽が好きだと言う一点だけは常に同じだった。
「ハルといると幸せだよ」
「負ける気がしないですね」
また、2人で笑う。
「これから先もさ」
「一緒にいれば、色々な部分も見えちゃうけど」
「喧嘩も沢山しよう」
今夜も世界中で愛が育まれている。
その中のひとつ、ほんのちっぽけな2人が創作し、小さな部屋で生まれた曲が世に放たれようとしている。
世界が変わったのではない。世界の見方がほんの少しだけ変わっただけだ。
それなら決して難しいことじゃない。
以前は悲しみと憎しみしか感じなかった世界なのに、今は考えれば考えるほど、思えば思うほど美しい世界でしかなかった。
ギターを抱えた男はまた笑う。
この温もりをずっと忘れていた。
目の前には太陽がいて、涙を乾かす。
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