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りん
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じいちゃんの思い出を探して、同窓会に入り込んだ。じいちゃんと親友さんの卒業アルバムの写真を顔認証にかけて、年代を指定してアーカイブからピックアップしてみた。
思った以上に映像が残っていた。
二人の話の流れの中で映し出すことを考えた。
次に、二人だけの空間を作りたくてシールドを考えて、苦戦していた。
不意に警報と共に、会長達が現れた。
「君は誰だ。断りなく侵入して何をしている。」
「逃げないで。君が本校の在校生であることは分かっている。」
「この二人は誰なんだ。この画像をどうするつもりだ。」
りんは胸が苦しくなってきた。言葉が出てこない。
会長達は、笑顔で言った。
「しかし、よくここまでひとりで構築したな。」
「何に苦戦している。」
「なぜ、シールドを張ろうとしているのか。」
「…私のおじいちゃんと親友さんです。」
りんは、同窓会で再会を果たすだろう二人のために準備していると。卒業式以来なので、二人で静かに話せる様に、周囲のギャラリーの心無い言葉を聴かせたくなかったからと。
単純だけど、暴力的な言葉や否定的な言葉は、一音目の文字を拾って同じ音で始まる虫に変えたらと。励ましや肯定的な言葉は花に変えられたらと。
笑っていた。可愛いなと言われた。
ちょっとホッとした。子ども扱いせずに、プログラミングについて、議論してくれた。わからないことは優しく教えてくれた。
「りん、困った時はこの呪文を唱えるんだ。テケスータ。あはは。」
会長は笑っていた。
じいちゃんも笑っていた。じいちゃんの部屋でパソコンを使ってる時は後ろでお茶を飲みながら付き合ってくれていた。
「思ったことは口に出して言うべきなんだ。」
県外の大学に合格し、いい気になって卒業式に片想いの彼女の告白するつもりだった。
前日に不安になって、彼女を呼び出して、先ず聞いて欲しいと親友に頼んだ。断られたが、無理矢理お願いして逃げて帰った。
「渡り廊下」が約束の場所だった。
二人は既に来ていた。彼女に伝えてくれていた。
あっさり彼女は、付き合っている人がいると断った。足が止まった。出て行くのが躊躇われた。彼が続けた。
「僕も君が好きだった。君が付き合っている人がいることを偶然知って諦めたけれど、僕の気持ちは伝えたい。」
驚いた。彼女に恋人がいると知っていたのか?
「彼も知っているの。」彼女も驚いて聞いた。
「アイツは知らない。いつもいつもアイツは自分の言いたいことを言って、勝手に思い込んで、僕の意見なんか聞かずに決める。」
「それも今日で最後なんだ。僕はアイツが嫌いなんだ。もう二度と会わないつもりだ。アイツの失恋も知ったことでは無い。アイツの最後の命令に従ったけれど、もう僕は自由だ。」
走りさる足音がした。それを追って行く足音も。
じいちゃんは動くことが出来なかった。
一人暮らしの大学生活が否応無しに始まったが、何も覚えていない。
親の期待と、辛うじて自分の学びたい学科だから大学は卒業した。そのまま故郷には戻らなかった。彼の望み通りにしようと思った。もう二度と会わない。
ところが、じいちゃんの父さんが急逝して家業を継ぐことになった。
家業を継いだじいちゃんの昔を知る人々は、丸くなったとか大人しくなったとか言われた。辛かった。
そして、ばあちゃんに出会い、あの朗らかさに救われた。可愛い子ども達も授かった。そして可愛い孫にも。
彼は一家で越していた。探そうと思えば探せたかもしれないけれど。
今思えば、あっという間の人生だった。どんどん記憶が薄れていくけれど、良い事よりもなぜか悪い事を覚えている。心の中にオリのように沈んでいるのがユラユラと立ち昇ってくる。
同窓会で会いたいと連絡が入って驚いた。生きていてくれて良かったと心の底から思った。そして生きてきて良かったと思った。
りん、見届けてくれ。
思った以上に映像が残っていた。
二人の話の流れの中で映し出すことを考えた。
次に、二人だけの空間を作りたくてシールドを考えて、苦戦していた。
不意に警報と共に、会長達が現れた。
「君は誰だ。断りなく侵入して何をしている。」
「逃げないで。君が本校の在校生であることは分かっている。」
「この二人は誰なんだ。この画像をどうするつもりだ。」
りんは胸が苦しくなってきた。言葉が出てこない。
会長達は、笑顔で言った。
「しかし、よくここまでひとりで構築したな。」
「何に苦戦している。」
「なぜ、シールドを張ろうとしているのか。」
「…私のおじいちゃんと親友さんです。」
りんは、同窓会で再会を果たすだろう二人のために準備していると。卒業式以来なので、二人で静かに話せる様に、周囲のギャラリーの心無い言葉を聴かせたくなかったからと。
単純だけど、暴力的な言葉や否定的な言葉は、一音目の文字を拾って同じ音で始まる虫に変えたらと。励ましや肯定的な言葉は花に変えられたらと。
笑っていた。可愛いなと言われた。
ちょっとホッとした。子ども扱いせずに、プログラミングについて、議論してくれた。わからないことは優しく教えてくれた。
「りん、困った時はこの呪文を唱えるんだ。テケスータ。あはは。」
会長は笑っていた。
じいちゃんも笑っていた。じいちゃんの部屋でパソコンを使ってる時は後ろでお茶を飲みながら付き合ってくれていた。
「思ったことは口に出して言うべきなんだ。」
県外の大学に合格し、いい気になって卒業式に片想いの彼女の告白するつもりだった。
前日に不安になって、彼女を呼び出して、先ず聞いて欲しいと親友に頼んだ。断られたが、無理矢理お願いして逃げて帰った。
「渡り廊下」が約束の場所だった。
二人は既に来ていた。彼女に伝えてくれていた。
あっさり彼女は、付き合っている人がいると断った。足が止まった。出て行くのが躊躇われた。彼が続けた。
「僕も君が好きだった。君が付き合っている人がいることを偶然知って諦めたけれど、僕の気持ちは伝えたい。」
驚いた。彼女に恋人がいると知っていたのか?
「彼も知っているの。」彼女も驚いて聞いた。
「アイツは知らない。いつもいつもアイツは自分の言いたいことを言って、勝手に思い込んで、僕の意見なんか聞かずに決める。」
「それも今日で最後なんだ。僕はアイツが嫌いなんだ。もう二度と会わないつもりだ。アイツの失恋も知ったことでは無い。アイツの最後の命令に従ったけれど、もう僕は自由だ。」
走りさる足音がした。それを追って行く足音も。
じいちゃんは動くことが出来なかった。
一人暮らしの大学生活が否応無しに始まったが、何も覚えていない。
親の期待と、辛うじて自分の学びたい学科だから大学は卒業した。そのまま故郷には戻らなかった。彼の望み通りにしようと思った。もう二度と会わない。
ところが、じいちゃんの父さんが急逝して家業を継ぐことになった。
家業を継いだじいちゃんの昔を知る人々は、丸くなったとか大人しくなったとか言われた。辛かった。
そして、ばあちゃんに出会い、あの朗らかさに救われた。可愛い子ども達も授かった。そして可愛い孫にも。
彼は一家で越していた。探そうと思えば探せたかもしれないけれど。
今思えば、あっという間の人生だった。どんどん記憶が薄れていくけれど、良い事よりもなぜか悪い事を覚えている。心の中にオリのように沈んでいるのがユラユラと立ち昇ってくる。
同窓会で会いたいと連絡が入って驚いた。生きていてくれて良かったと心の底から思った。そして生きてきて良かったと思った。
りん、見届けてくれ。
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