魔法なきこの世界で……。

怠惰な雪

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幼少期

思い出す

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 ふと気づくと俺はなかなかにナイスバディな茶色っぽい髪色のお姉さんに抱かれていた。目はきれいな茶色でまつげが少し長い。まだ年は20を過ぎていないような雰囲気だったが、その豊満な体つきのお陰でなんというか思わず甘えたくなってしまうような雰囲気を醸し出している。このときなぜかどこかの本で読んだ豆知識で、ワインのカテゴライズで女性の体に例える表現があり芳醇で濃厚なワインをフルボディという呼ぶことを思い出した。

 これは夢か?夢だな。

 俺はこんな素敵な女性に抱かれるほどできた顔ではないことをじゅうじゅう理解していた。
 
 悲しい話だがこのような展開は夢以外ありえないのは自分がよく知っている。

 じゃあ遠慮なく行くか。

 もう開き直ってせめて、夢の中だけでもいい思いをしたいと即断し、早速胸をつかもうとした。しかしここであることに気づいた。
 
 腕が短い。高身長ではないがこんなに短いはずがないよなと思い自分の体を見てみた。
 
 自分の体はなかった。いや正確に言えばあるにはあった。ただ布にくるまれていて分かりづらかったが、たぶん50センチもない。まんま赤ん坊の姿になっていた。

 なるほど、なるほど、いやなにこれ。

 その時近くの扉が開き背の小さい赤髪の男が入ってきた。こっちもまだ20にも届いていないだろう。

 ちくしょう、男と同棲しているのか。と俺は内心悔しがった。

「Oh, accipias intermissum」とお姉さんが聞く。

「Ah, nulla nunc elit.」
 
 そう言いながら男はこっちに近づいてきた。

「Hi Lewis. Pater tuus sum.」

  なんて言っているのこれ?

 と思っていたところに男が顔を触り、頭を撫でてきた。
 
 このとき初めてこれは夢でないと思った。あと、男は撫でんな、とも思った。
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