魔法なきこの世界で……。

怠惰な雪

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幼少期

クリスの夜

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 腕全体に衝撃がはしり、顔にべっとりとした熱い物がこびりついたような不快感がある。目の前にはもはや人間とは呼べない風体になった男が倒れている。

 そして強烈なめまいと焼かれるような感覚が襲ってくる。そして、だんだん鼓動が早くなっていき、呼吸が荒くなっていった……。




 その時、目が覚めた。俺はベッドの上で寝ていたらしい。寝汗で濡れた服がまとわりついてくる。

 なんとか気持ちを落ち着かせて、周りを見るとあの少年、いや、が寝ていた。

 その子の寝顔を見ているとクリスが部屋に入ってきた。もう寝間着に着替えている。

「大丈夫?体はもう平気?」と聞いてきたので

「あぁ、もう大丈夫。」と返す。

 クリスによると、小一時間くらい寝ていたらしい。今日はクリスに世話になってばっかしだなと思う。

「とにかく風呂に行ってきたら?元々汚れていたけど、寝汗のせいで更に凄いことになってるよ。」

 そう勧められて、風呂に入った。汚れと埃ともにいろんなものが流れ落ちていくような気がする。

 そうして、風呂から上がり元の部屋に戻っていった。クリスがベッドの上に座っている。

 こちらに気がつくとニッコリと笑った。

 その笑顔に癒やされたのか、安心したのか分からないが、ふっ、と力が抜けていってそのまま寝てしまった。





「なんだ、寝ちゃったか」

 クリスがそのまま寝てしまったルイスに近づきながらつぶやく。そしてルイスに毛布をかけた後、その横に寝そべる。

「まったく、寝間着の女子を見ても、何も言わずそのまま寝るなんて……。まぁ、でもこの人は昔からこんな感じの人だったのかもね。」

 そうして、ルイスを抱きしめながら、クリスは昔のことを思い出していった。
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