魔法なきこの世界で……。

怠惰な雪

文字の大きさ
上 下
48 / 71
青年期

特別剣兵隊

しおりを挟む
 次の日の朝、ミラデナス書店では、クリスが何かを準備していた。

「ルイス、いつ帰ってくるのかな。」

 そう言って、窓の外を見る。外には誰もいなかった。

 もうすぐ、ルイスの誕生日だ。そのための準備をルイスが出かけている間に行っている。

「えっと、ルイスの誕生日プレゼントの飾り付けはこれでいいかな。喜んでくれるかなぁ。」

 その時、玄関を叩く音が聞こえた。

「ルイスが帰って来たのかな。」

 クリスは急いでプレゼントを隠し、玄関の扉を開けた。

 玄関の前には、緑の制服を着た男女が立っていた。玄関を叩いたであろう女が前に出てきた。

「クリス・ミラデナスさんですね。」

「そうですけど、あなたは?」

 その女は懐から紙を出し、前に掲げた。

「私は特別剣兵隊第2中隊4班班長、メアリー・シャーです。貴方を魔女の容疑で逮捕します。」

 そのメアリー・シャーの胸元には剣がかたどられたピンが光っていた。





「やっと、フォックス・ワイルドに着きましたね。」

 ルイスとエラがフォックス・ワイルドについたのは朝だった。

 そうして、家の前まで来ると、見られない馬車が停めてあった。

「ルイスさん。お客さんですかね。」

「どうだろ、確かあの馬車の横に描いてある剣の紋章って……。」

 その時家の中から、連れて行かれるクリスが現れた。気を失っているようでぐったりとしている。クリスを馬車の中に入れると、馬車は走り出した。

「ルイスさん、なんですか、あれって……?」

 エラがルイスの方を向くと、そこにルイスの姿はなかった。





「一体、どこにいくつもりだあの馬車は!」

 俺は路地裏を必死に走っていた。

 馬車の後を追いかけて、追いつくことなんて不可能だなんてことは明らかだった。

 俺は道の脇に積まれていた木箱の上を登り、建物の上に登った。

 あの馬車は大通りを抜けて、街の中心に向かっていく。

「逃がすかよっ!」

 俺は屋根の上を走り、馬車を追いかけていった。

 馬車は、曲がりくねった道を駆けていく。

 後もう少しで馬車に追いつけそうになった時、馬車が高い塀の建物の中に入っていった。

そこは、街にある刑務所だった。

「あの馬車の横に描かれていたあの紋章、思い出したぞ。」

ルイスは屋根の上で悔しそうに呟いた。

「特別剣兵隊だ。」
しおりを挟む

処理中です...