紫の君に恋をした僕は、

怠惰な雪

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本編

青の君と赤の君

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「さて、反省会をしよう。」

 椅子に座り足を組んだアシスがそう言った。ちなみに僕は床に座らされている。

「何だ、今日という日をただただ不毛に過ごし、貴重な一日を潰したお前に、こんな挽回のチャンスを与えているという、俺の破格のサービスに不満か?」

「いえ、そのようなこと絶対ございません!」

 家からの帰り道も、家に帰ってからもこうしてずっとアシスに迫られていた。どうやら本当に今日を無駄にしたことを起こっているらしい。

「まず、第一に今日なんでお前は誘わなかったのか、分かるか?」

「……。」

「まず、お前がヘタレだからだ。」

 アシスは俺が今日中思っていたことをなんてことなく言った。

 確かに誘うタイミングなんていくらでもあった。

「でも誘えなかったんだろ、お前がヘタレすぎて。」

 座っていたアシスが、まるで脅すように迫ってきた。

「いいか、これは神様からのありがたい天啓なんだ。ちゃんと意味があるものなんだ。だから、お前は絶対にこの天啓を活かせ。」

 反省会はこの一言で始まった。





「まずそもそもの問題なんだが、お前瑞希を誘うこと自体にどことなく嫌悪感を抱いてんだろ。」

 アシスにそう言われた瞬間、電流が走ったかのように、体がこわばる。

「やはりまだ瑞希を女子扱いすることに抵抗を感じるか。」

「やっぱり君は何でもお見通しなんだね」

 僕は瑞希のことをまだ女子としてみていた。しかし、そんな僕でも、勇気を出して伝えてくれた瑞希のことを、できるだけ男子として接して、受け入れてあげたいと考えていた。だけど……。

「そんな中、俺が現れたのか。」

 そこで受けた天啓なるものが瑞希をデートに誘えというものだった。

「瑞希は勇気を振り絞って僕に伝えてくれたんだ。でも、僕が瑞希をデートに誘ってしまったら、そんな瑞希の思いを踏みにじってしまうような気がして……。」

 体を床に倒して、天井を見ながらそう答える。

「男が男にデートのお誘いでもするってのも最近はおかしくないんじゃないか?」

「頭ではわかっているんだよ。でも、16年仕込の固定観念がそうはさせてくれない。」

 横に寝返りながら、そう自虐する。こんな調子だから、誘おうにも勇気が出ず、ヘタレたんだろうな。

 それにしても、今の瑞希の状態をなんと言葉にしていいのだろうか?男性でもなければ女性でもない、中間なのだろうか?いわゆるグレーゾーンなんだろうか?いや、この場合はそう呼びたくなかった。男性を表す青と女性を表す赤の混じり合った状態、まさしくパープルゾーンにいるとでも言おうか。男子でもなければ女子でもない、紫の君に恋をした僕はどうすればいいのか?

 そんな事を考えている僕を見かねたのか、アシスが急に立ち上がり、

「わかった、今のお前に瑞希をデートに誘うっていう事自体がハードルが高いんだ。はっきり言って、今のウジウジしたお前ではどのみちできない。」と言った。

 そんな今更かよ、と思い僕はアシスをじっと見つめた。

「まぁまぁ、そんな顔をするなって。まずお前はデートに誘うんじゃなくて、ただただちょっと二人で遊びに出かけるだけ、とでも考えればいいんだよ。」

 そんなので効果があるのか?それに根本的なものは何も解決してないのでは?

「結局のところ、気の持ちよう次第さ。さぁ、これで、反省会を終わり!」

 と、だいぶ強引に反省会を閉じた。
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