紫の君に恋をした僕は、

怠惰な雪

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その他

街頭インタビュー

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え?あ、はい、僕ですか?

何か?え?街頭インタビュー?

わ、分かりました。

えぇ。顔出し?別に構いませんが……。はい。

緊張してますかって……。まぁ、初めての経験ですし……。

はい、えぇ、分かりました。

「年齢や職業を教えて下さい。」

年齢は60後半とだけ。職業は教職です。

「ご自身の中で、何か大切な物や人なんか教えてください。」

えー、まぁ、家族とか。ですかね。

「手に結婚指輪をされていらしゃいますが、奥さんとの馴れ初めを教えて下さい。」

妻とは幼なじみなんです。馴れ初めはよく覚えていません。

「ほう、では、奥さんのことを好きになったきっかけなんてありますか?」

結構踏み込んできますね……。そうですかね。きっかけとはきっかけかも知れませんが、花畑に囲まれている彼女に惚れたじゃ駄目ですかね。

「素敵ですね。」

そうですかね。

「ご結婚されてから何年目か、教えて頂くことって……。」

結婚してから、大体……。もうかれこれ50年は……。はい、そうです。

「家族以外で感謝を伝えたい人っていますか?」

一人いますね。はい。

「詳しく教えてもらうことって出来ませんか?」

僕が学生の時に背中を押してもらったんです。照れ隠しなのか、最後もらった手紙はドイツ語で書いてありましたね。

全く読めなかったから、ドイツ語の辞書を買って逐語訳しました。

内容は、最後まで彼らしかったですよ。

「その人がいなかった場合、どんな今になっていたと思いますか?」

あまり考えたくないですかね。

でも、想像してみてもいいかも知れませんね。

ところで、コレ、何のインタビューなんですか?

「この写真の男性を見て下さい。」

お、この人は、今かなり有名な人ですよね。

確か、世界的に著名な脳外科医でテレビでよく報道されていますし……。

「実は今、この人の実験が波紋を呼んでいて……。」





「夏に雪が降る、そして桜が咲く。」に続く
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