SEVEN TRIGGER

匿名BB

文字の大きさ
20 / 361
紫電の王《バイオレットブリッツ》

紫電の王《バイオレットブリッツ》4

しおりを挟む
(はぁ……)
 俺はここ数日間の何十回目か分からないため息を、相棒セイナにバレないように心の中で漏らした。理由は、珈琲店の仕事を終えて、あらかじめ誘っておいたセイナと一緒に電車に駆け込み、次の仕事場に向かうという慌ただしいスケジュールに疲れて出たものではない。むしろ、降りる駅だけセイナに伝え、今からやる仕事についての細かい説明を省いて電車の中で爆睡していたおかげで、多少なりとも仕事の疲れを取ることはできた。
 電車を乗り継いで東京新宿駅で降りた俺たちは、東口から北の方角にある歓楽街、歌舞伎町に来ていた。歩行者天国の角にドン・キホーテのある靖国やすくに通りを進んでいくと、居酒屋やキャバクラ、ホストクラブにラブホテルなどの看板が高層ビルに連なり、一つ一つが独特なネオンの明かりで怪しく光り輝いていた。そのネオンで光り輝いた通りを多くの人々が行きかう姿は流石日本最大の歓楽街「眠らない街」と表現されるのもよく分かる。
 正直、俺はこういった騒がしい場所はあまり好きではない。酒が普段から好きではないからとかそういう理由もあるが、単に人の多い場所がどこか落ち着かないのだ。つい数週間前に人の多い通りを歩いてせいで、反応が遅れてどっかの誰かさんに頭を狙撃されたばかりだしな。それに、俺の住む港町の通りの方がまだマシだ。こっちの通りと違って店前に銃を持った用心棒バウンサーなんて見ないからな。
 魔術の関係のテロ対策のために銃の規制が弱まった日本では、適切な理由を警察に申請さえすれば誰でも銃を持てる時代だ。その結果、自分の店を守るために居酒屋やキャバクラ、ホストクラブなどで銃を持つというのは最近では普通になっている。そんな店が大量にあるこの通りがどのような光景になっているかは想像に難くない。お店の中には抑止力の為に銃を飾る店もあれば、高級店のようなところは店前に銃を持った用心棒バウンサーを構えるところもあるくらいだ。
 用心棒バウンサーの需要も増えたおかげで正規の仕事としてヤクザや暴力団を雇うという店もあり、表通りからゴミを隠すように裏通りに散在していたヤクザ達も最近は少しだけ世間的地位を獲得しているらしく、羽振りの方もいいらしい。
 だが、別に街の雰囲気が嫌いだからため息をついたのではない。
「いいか、スタングレネード投擲後、三のタイミングで中に突入する」
「分かった……」
 歌舞伎町の裏通りにある静かな10階建ての高層ビル。その7階にあるヤクザの事務所の扉の前ですでに二人の見張りを片付けた俺がそう言うと、なぜか不機嫌そうなセイナは短くそう返してきた。
 ため息の原因はこれである。なぜかは知らないが、港町の駅で待ち合わせた時は別に機嫌は悪くなく、むしろ今朝に比べて良いくらいだったのにも関わらず、この街に来て気づいたらこんな調子なのである。
 不機嫌になった理由は分からないのだが、心当たりがあるとすれば多分この街だ。
 俺と違い、軍隊育ちとはいえ中身が箱入りお嬢様なセイナは、たぶん俺以上にこういった街が好きではないのだろう。まだ17歳のセイナは酒を飲んだことがないと言っていたし、そんな少女からしたらこの街にあまりよろしくない印象を抱くというのは仕方のないことだ。直接的に嫌いとは言ってはいなかったが、歌舞伎町に入った時から、セイナはずっと不快そうな顔をしていた。時折、客引きやキャッチに声を掛けられたりもしたが、セイナはそれをさげすんだ顔で全て無視をしていた。だが二、三回モデルなどのスカウトとして声を掛けられた時は一瞬だけ身体をピクッと反応させたり、何かの看板を見ながら、何故か顔を真っ赤にさせながら顔を伏せて「ケ、ケダモノ……」と口をわなわなさせながら小さくつぶやいたりもしていた。それだけならよかったのだが、ラブホテル前を通った時にカップルと間違えられたのか、近くにいた酔っ払いに「ヒューヒューお熱いね」とはやし立てられた時は、キレたセイナがプリッツスカート下に隠した、Desertデザート Eagleイーグルを右足のレッグホルスターから抜いて「ぶっ殺す」と酔っ払いに飛び掛かろうとしたのを抑えるのには、かなりの時間と労力を要して大変だった。
 そんなこんなで目的のこのビルまで来たのだが、電車では寝ていて、移動中も仕事の内容を人の多い場所で話す気になれなかったので、目的のビルについてから七階まで上がる最中に今回の仕事の内容を掻い摘んで、「今後の資金集めのために今からヤクザ狩りをする」とだけ簡単に説明したのだが、セイナは今朝の時よりも機嫌を悪くしながら返事をすることはなかった。
 俺はベルトに付けたポーチからM84スタングレネードを右手で取り出した。セイナも右足のレッグホルスターからハンドガンDesertデザート Eagleイーグルを引き抜いた。
 セイナは機嫌が悪いとはいえ仕事をやってくれる様子なので、とりあえず俺はそのことについて考えるのを止めて、意識を集中……気を取り直してM84スタングレネードのピンを引き抜いた。
「じゃあ、行くぞ……3、2、1、ゴー!!」
 扉を開け、スタングレネードを二個薄暗かった部屋に投擲した。俺の1の合図で薄暗かった部屋は激しく光り、部屋の中から男たちの突然の襲撃に対する驚き声や悲鳴を合図に俺達は中に突入した。
「…ッ!!」
 扉を押し開け先行したセイナが宙を舞いながら左側の敵数名に向けて発砲する。会社のオフィスほどの広さの部屋に、鈍く重い.50AE弾の銃声を響き渡る。
「ぐぁッ!?」
 突然の襲撃で銃すらもっていないヤクザたちは、空中の黄金色の一閃いっせんを前に三人がバタバタと倒れていった。ヤクザたちはそれぞれ、スタングレネードに目をやられて手で抑えるものや、武器を取りに行こうとするもの、遮蔽物に隠れようとするもの、とバラバラの行動をしていたが、武器を持っていない彼らの行動はセイナの前では脅威にすらならない。
「おらッッ!!」
 だが、運よくスタングレネードをくらわなかった奴がいたのか、扉の右側にいたヤクザの一人がセイナに向かって鉄パイプを振り落としていた。セイナはそれに全く反応しない。反応できなかったのではない、そいつにことをセイナは直感で分かっていたのだ。
「はぁッ!!」
 ヤクザが振り落とした鉄パイプを、俺がセイナの背中側に飛び込みながら、右手で逆手に持った小太刀「村正改」で攻撃を右側に受け流す。
「なにッ!?」
 攻撃を受け流されたヤクザは驚きの声を上げた。鉄パイプは背中合わせの俺たちの右側の床を叩きつけられ、俺はその隙を見逃さずに左側に振り抜いた村正改を逆手から正面に持ち直し、ヤクザの胴を狙った一閃を繰り出す。
「がはッ!!」
 峰打ちで胴腹に叩き込んだ一撃にヤクザは鉄パイプを落としながらその場に崩れ落ちた。
 月影つきかげ一刀流一ノ型いちのかた睦月むつき
 相手の攻撃を受け流してのカウンター技が綺麗に入ったことにより、俺は右手に肋骨ろっこつを何本か折る感触を右手に感じながら、すかさず左手で抜いたハンドガンHK45で部屋の右側にいた敵に向けて連射する。セイナの撃った左側と違い、右側には遮蔽物が無かったため、逃げ遅れた二人の足や肩に俺の撃った.45ACP弾が命中し悲鳴を上げながらその場に倒れていった。
 部屋に突入してからここまで数秒、一気に六人を俺たちが片付けたところでスタングレネードの影響をあまり受けていないヤクザたちが、部屋の奥の机やソファーを遮蔽物代わりに銃を乱射してくる。
「危ないッ!!」
「ッ!?」
 俺は咄嗟に刀を腰の鞘に納めながらセイナに飛びつき、部屋の左側にあった机裏に飛び込んだ。もつれた状態から素早く身を起こそうと、辺りを警戒しながら地面に右手をつこうとした瞬間。
「ひゃ……!!」
 さっきの肋骨ろっこつを折った時の感触と違って触り慣れないていない、柔らかくも張りのある物体の感触に違和感を感じた俺は、何度か手を動かしながら視線を辺りから右手に戻して。
「……?ッツ!?」
 俺は自分が握っているものを見て驚愕した。俺の右手にはセイナの左胸を掴んでおり、白いブラウスの上から二、三度揉みしだいていた。両腕を上げて仰向けに倒れたセイナは、薄暗い部屋でも分かるくらい顔を真っ赤にさせながら、今朝と同じように口をわなわなとさせていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

「ただの経費削減ですが?」 銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです

空木 架
SF
日本の企業で総務として働く星野明日虎(32歳)は、ある日突然、見知らぬ宇宙の帝国へと転移してしまう。彼が配属されたのは、整理整頓もままならない「銀河最弱」の補給艦隊だった! ひょんなことから戦艦の艦長に任命されてしまった明日虎だが、宇宙の戦い方など全く分からない。そこで彼が武器にしたのは、長年の社畜生活で培った「経費削減」と「在庫管理」のスキルだった。 「弾薬の無駄遣い禁止!」「エンジンはこまめに切れ!」――ただ徹底的なコストカットと業務効率化を推し進めただけなのに、それがなぜか「天才的な軍事戦略」として周囲に大勘違いされていく。 個性豊かな仲間たちと共に、最弱だった倉庫部門を最強の組織へと育て上げる、痛快・お仕事&成り上がりSFファンタジー! ※この作品は、「小説家になろう」「カクヨム」でも連載しています

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ 主人公はあまり戦ったりはしません。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

処理中です...