SEVEN TRIGGER

匿名BB

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月下の鬼人(ワールドエネミー)下

at gunpoint (セブントリガー)2

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 何事も無かったかのように武器を構える。
 俺はハンドガン。アキラは巨大なクレイモア。
 標的は十一時の方角から接近してきた白いキャリー二台。
 そこに乗り合わせているのは、対照的な黒の野戦服姿の男達。
 一目でそこらのチンピラとは訳が違うことが分かる。
 おまけに持っている装備も最新鋭の物ばかり。
 一体どこからあんな高価な装備を揃えたのか……
 思えば最近の任務はギャングやテロリストではなく、こうした特殊部隊のような精鋭集団を相手にすることが多い気がする……って。
 頭を軽く振って雑念を払いつつ、俺は敵へと正対した。
 連中は速度を落としながら列車に並走しようとしていた。
 直接乗り込んできて荷物を奪う腹積もりのようだ。
 そうはさせるか。

アキラトリガー2、あれやってくれ」

「えぇー……俺が行きたかったのに、来た意味ねーじゃん」

 ボヤキながらも指示通りにアキラは両手で持ったクレイモア『オートクレール』を下段の位置。コンテナすれすれの場所で固定する。

「じゃあ、いつも通り頼むぜッ!!」

 陽射に輝く白銀の刀身。
 紋様やラテン文字が刻印された剣の腹に飛び乗ると、身体に似合わぬ剛腕でアキラは『オートクレール』振り上げる。
 特設式のカタパルト。
 列車の外へと大きく跳躍する。
 空中に躍り出た俺の羽織る濃緑のポンチョが、猛禽類の翼のように羽ばたいた。
 目標キャリーの荷台にいた四人の敵がこっちを見て眼を丸くしている。
 陽の光を背に、一匹の鬼がわらう。
 同時に、荷台にいた敵が銃を撃つ。
 だが、荒れた道で不安定な車上からでは、幾ら武器が高性能なアサルトライフルだったとしても狙いが定まるわけがない。
 俺は空中で身体を捻り、銃弾の雨を蝶のように躱していく。
 それでも躱しきれなかった銃弾は────

 ガキンッ!!ガガキキンッ!!

 振るった腕の先で火花が弾ける。
 右腕に握られていたのは、折れた刀身を切り詰め、新たに鍛え直した小太刀『村正改』
 その切っ先が太陽の光を頂点へとため込んで輝く。
 敵の表情が対照的に、覆面越しに分かるほど青ざめる。

 ダンッ!

 キャリーの運転席上部。
 ちょうど荷台に乗った四人の敵を見下ろせる位置へと華麗に着地を決めた俺は、有無を言わさずに両手の武器を構えた。

 バァァァン!!バァァァン!!

 火を噴くコルトカスタム。
 放たれた銃弾が、弾切れしていなかった二丁のアサルトライフルの銃口へと吸い込まれて弾けた。
 上がる硝煙の臭いと暴発音に敵が怯んだ隙に、狭い荷台へと飛び移って格闘戦を展開する。
 味方の中央で暴れる俺を、近くにいたもう一台のキャリーの敵は呆然と見守ることしかできない。
 その数瞬あれば十分だった。
 掌底、鋭い蹴りを瞬時に叩き込み、四人全員を悲鳴さえ上げる暇さえ与えずに無力化させる。

 ダダダダダダッ!!!!

 運転席で爆竹のような火薬音。
 運転手がキャリーのリアガラスからこちらに向けてアサルトライフルを発砲してきたのだ。

「ッ……!」

 咄嗟に荷台の右外へと飛び出す。
 時速八十キロメートルは出ている車から飛び降りるなど、自殺行為にも等しい。
 運転手が眼がみはるのも無理はない。
 気でも狂ったのか?きっと、半信半疑になっているに違いない。
 ……さらさらそんなことする気はねーんだけどんなッ!
 飛び降りた際、左手を荷台の側あおりに引っ掛けていた俺は、指の力だけで再びキャリーの真上を大きく舞い────運転席のある左側へと。

「はぁっ!!」

 サイドウィンドウに銃弾を叩き込みながらドロップキックをかます。
 被弾した運転手の顔面を容赦なく突き飛ばし、キャリーの制御を奪う。

(まず一台……)

 ハンドルを切りつつもう一台へと向き直ろうとする俺の眼前。
 砂埃で掠れたフロントガラスの先で、もう一台のキャリーは列車へと向けて発砲していた。
 狙うはコンテナ上で待ち構えていたアキラだ。

 ダダダダダダッ!!!!

 四人の銃口に晒されたアキラは特に慌てた様子もなく、背中の大剣を列車へと突き刺し盾にする。
 集中砲火を浴びるオートクレール。
 だが、その高貴なる白銀の刀身を、たかが5.56mmの鉛弾程度で傷を付けるのは不可能に等しい。
 ────シュン────シュン!
 火花が飛び散る刀身の左右から、空気を切り裂く二つの刃が、燕のような弧を描いて飛翔する。

 バァン!!

 銃弾とは違う、まるで風船を割った時のような乾いた破裂音が響き、その刹那……キャリーが突然態勢を崩す。
 キャリーの左右前輪後輪に一つずつ、五つの刃を持つ無音兵器が突き刺さっていた。
 シャドートリガー7から教わった五方手裏剣。
 扱うだけでも困難な武器を、敵を見ずに当てるとは……
 思わずキャリーから見ていた俺も舌を巻く。
 コントロールを失った敵車両は、列車から離れるように斜めに進路を切り始めた。
 だがそれをアキラは許さない。
 腰から抜いた一丁のサブマシンガン。MP7a1を片手で構えた。

 ダラァァァァァァァ!!!!

 四十発の弾丸全てを吸い込んだキャリーのボンネットは、穴だらけの鉄板の隙間から火を噴き上げさせ────近くの岩へと突っ込んだ。
 後輪が跳ね上がり、積んでいた人間荷物が空中を舞う。
 そのうちの一人が苦し紛れにアキラへと銃を向けるも────

 ダァァァン!!
 短くも聞き慣れた銃声。
 アキラの持つM1911コルトガバメントがそれを阻んでいた。
 かつては数撃ちゃなんとやらだった副隊長が、サブマシンガン一丁の代わり。精密射撃用に持っている俺のお下がり。
 勿論腕前もお墨付きだ。
 .45ACP弾を食らった者も含め、キャリーに載っていた荷が地面に激突して沈黙する。
 数人を前にしてもその攻守ともに優れた戦いぶりは、この隊のNo.2副隊長に相応しき姿だった。

『あらかた片付いたか?』

 辺りが静まり返ったところでレクスが呟く。
 こっちに集中して気づいていなかったが、後方車両の銃声も止んでいた。
 鬼教官の下、後続の始末も済んだようだ。
 終わったな。
 奪ったキャリーを走らせながら、レクスが減速させた列車へと近づいていた。

「……この……っ」

 背後で小さく呻く声。
 荷台で寝ていた襲撃者の一人が俺へとに銃口を構え────

 ドゥンッ!!!

 比重のある火薬の炸裂音。
 襲撃者の持っていた銃が弾き飛ぶ。
 銃柄に手を掛けていた俺は、そこで初めて気づいた。

「……シャドー」

 ヴォン……と大気を揺らし、何も無い荷台の淵で姿を露わにしたのは、右手に愛銃のS&W M29を構えたこの部隊最後のナンバーを持つ人物。漆黒ブラッキーが特徴のシャドートリガー7だった。
 その、普段は黒一式の彼が身に着けているのは、皆と同じ濃緑色のポンチョ。
 新たに支給された装備、ステルス効果のあるICコートでずっと潜んでいたらしい。

『油断は禁物』

 人差し指を立て、くるくる器用に銃をホルスターに収める。

「へいへい、そっちは片付いたのか?」

 ステルス兵器を手に入れてから、更に神出鬼没とかした部下のお小言に嘆息交じりに聞き返す。

 こくこく。

 リズと共に別動隊を潰しに行っていたシャドーは頷く。
 改めて、襲撃者の始末は済んだようだ。
 長時間の戦闘で張り詰めていた緊張の糸を切ろうとした時だった。

『大変フォルテッ!!』

 欠伸交じりに指示を飛ばしていた俺の眠気を覚ますような、悲鳴にも似た金切り声。
 負傷した敵を拘束保護していたロナからの声だった。

「んだよ……また下らないこと言ったらタダじゃ────」

「違うわフォルテ!!本当にマズいことが起きているの!!口で説明しても理解できないだろうし……とにかく今は急いでこっちに来てッ!!」

 今度はリズが無線に割り込んできた。
 それも、彼女らしからぬひどく取り乱した様子で。
 嫌な予感が脳裏を掠めた。
 たくっ……これ以上の厄介事はごめんだぜ……
 二人が普段見せたことないほど動揺していることに、一抹の不安を覚えた俺は後方へと急いだ。





 停車した列車の後方。
 線路から緩やかな勾配となって広がる茶色土の大地には、今だパチパチと炎を上げるピックアップトラックと、外に投げ出された敵が数名転がっていた。
 ────ほんとに死んでねえよな?
 派手にやられていることに若干不安になるが、幸いまだ俺の首は繋がっている。
 倒れた敵は全て全身複雑骨折だと思うが、生きているなら問題は無い。
 そう言い聞かせながらゆっくりと歩いていくと、一人の敵兵を見下ろすロナトリガー3リズトリガー4の姿が目に映る。

「……フォルテ……」

 ふざけた様子無しの深刻そうな顔つきで振り返るロナ。
 同様にリズも、動かなくなった敵兵を見つめたまま息を呑んでいる。

「ま、まさか……殺しちまったのか?」

 これまで守り通してきたこの隊の規則。『相手が誰であろうと殺すな』それをついに破ってしまったのか……?

「いや……生きている……車から投げ出された時に、ロナが隕石の糸ミーティアスレッドで受け止めてたから、彼自身に致命傷はない……」

 隕石の糸ミーティアスレッド、ロナが粗雑なピアノ線の代わりに作成した、本人の意志で変幻自在に操ることのできる強靭な鋼線武器のことだ。
 糸の束ね具合によっては人体を受け止めることも、銃弾を切り裂くこともできる攻防一体の武器なのだが、それで受け止めたというなら命どころか怪我すら無いはずだが……

「これを見て……」

 俺の疑問を感じ取ったのか、ロナが示した先────黒い野戦服とガスマスクをした白人男性。落下の衝撃で服が破けたのか、少し開(はだ)けた胸元にはシャツが風で見え隠れしていた。
 白く華奢な細指が指していたのは、そのシャツに付いていたワッペンだ。
 中央に忠誠や勇気、誠実を表す金糸で縫われたリボン、蒼い背景には法の番人であることを示す銅金の天秤が掲げられている。

「嘘……だろ……?」

 二人と同様に言葉を失う。
 あまりにも見慣れたそのマークに、俺も彼女達と同じように呆然と立ち尽すほかなかった。
 何故ならこのマークは他でもない────

「FBIの紋章……ッ!?」
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