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神々に魅入られし淑女《タイムレス ラヴ》
グッバイフォルテ《Dead is equal》18
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「セイナ、よせ……」
焦る気持ちを押し殺し、冷静さを保ったまま俺は呟く。
こんなことしても状況が好転するわけではない。
金糸のような前髪の下に隠れたその表情は動かないが、胸の正面に構えたグングニルの刃先は微かに震えている。
親の言っていることが間違っていると認識していながら、セイナはそれを否定する術を持っていないんだ。
「自分が何をしようとしているのか分かっているのか?」
「…………」
「それは父の意志に応えようとしているんじゃない。テロリストの言うことに加担しようとしているだけだぞ」
「……それでも……アタシにとっては唯一の父親よ……肉親の言葉に子は逆らえないわ」
ようやく吐露した心情は見るに堪えないほど悲観に満ちていた。
今のセイナにとってオスカーの言葉は、どんな思いにも勝る固定概念と同じなのだろう。
そんなこと…………冗談じゃない。
「違う」
怒りで噛み締めていた口角を緩める。
頭ごなしではない、どこか暖かさを伴った響きに、セイナはおろか、神殿で仁王立ちしたままだったオスカーも眉を顰めた。
血の繋がり程度何だってんだ。
無理に緩めようとした口元が震える。
落ち着け……俺は彼女を否定したいんじゃない。
セイナという在り方を元に戻すだけでいい。
そこに怒りや怒号は必要ないんだ。
「お前はそうやって自分自身を誤魔化しているだけだ」
「……っ」
セイナの表情は一言で苦悶を浮かべ、オスカーも渋い面持ちを露わにする。
「子が親に逆らえない?それはお前がそう思っているだけの脅迫観念に過ぎない。確かに子は親から多くのことを学ぶが、その親が必ずしも正しい保証なんてどこにもない。なぜならその親だって子を授かる前はずっと子供だったからだ。道を間違っても何ら不思議じゃない」
「だからって、アタシに逆らう権利なんて……」
「そこが違うんだよ……」
武器を持った少女へと寄り添うように微笑む。
「逆らうんじゃない、正すんだよ。親子は決して上下関係や主従関係とは違う。親が子に教えるように、子供にだって親へ教えることはたくさんあるし、その権利は互いに対等にある。そうやって寄り添い合うのが親子ってものだろ?」
俺が竜とそうであったように、誰にだって間違いはあるんだと、俯いて逃げようとしているそのブルーサファイアの瞳を見つめる。
真っ赤に染まった魔眼は不思議と殺意を押し殺し、ただただ真っ直ぐに少女の内面だけを捉えていた。
「今のお前は父親の言葉を無理矢理飲み込もうとして、自分自身をなんとか納得させようとしているだけだ。自分や、お前のことを思ってくれる大切な人達の思いを押し殺してな」
「どうして……?」
ようやくセイナが俯いていた顔を上げる。
折角の可愛く凛々しい顔つきは、真っ赤に張れた頬で台無しだ。
「どうして……そう言い切れるのよ?」
黄金色の髪を振り乱し、遂には武器を構えることすらままならない状態でセイナは問いかける。
そんなもの……決まっている。
「お前がそんなことで自分を曲げるような軟な奴じゃないことくらい、この俺が世界で一番知っている」
そう、俺は……
「俺は……セイナにとって唯一のパートナーだからな」
「フォルテ……」
ガチャリッと地面を転がる双頭槍。
今までずっと圧し掛かっていた重圧を払いのけるように、俺が差し出した右腕へとセイナは飛び込もうとしている。
この世界で誰でもなく、この俺の手を彼女は選んでくれたのだ。
それがこんなにも嬉しくて、どこか少し照れくさくて、とにかく今まで感じたことのないような幸せな思いが身体中の隅々まで満たされていく。
自分の中にまだこんな感情が残っていることを知らなかった。
数十年と続けていた習慣すら忘れてしまうような、こんな感情のことを。
ザガァァァァァァァァァンンッッ!!!
「─────え?」
眼の端に映った雷光に気づいた時にはもう遅かった。
悲鳴すら上げる間もなく放たれた一撃は、俺の下半身全てを跡形もなく持っていき、見下ろしていたはずの少女の姿を見上げるような位置へと突き落とされる。
痛みなんて感じてる暇もなく、紅い瞳を持つ鬼は絶命した。
動かすこともままならない真っ暗な視界に映ったのは、無残な俺の姿に言葉を失う相棒の姿だけだった。
焦る気持ちを押し殺し、冷静さを保ったまま俺は呟く。
こんなことしても状況が好転するわけではない。
金糸のような前髪の下に隠れたその表情は動かないが、胸の正面に構えたグングニルの刃先は微かに震えている。
親の言っていることが間違っていると認識していながら、セイナはそれを否定する術を持っていないんだ。
「自分が何をしようとしているのか分かっているのか?」
「…………」
「それは父の意志に応えようとしているんじゃない。テロリストの言うことに加担しようとしているだけだぞ」
「……それでも……アタシにとっては唯一の父親よ……肉親の言葉に子は逆らえないわ」
ようやく吐露した心情は見るに堪えないほど悲観に満ちていた。
今のセイナにとってオスカーの言葉は、どんな思いにも勝る固定概念と同じなのだろう。
そんなこと…………冗談じゃない。
「違う」
怒りで噛み締めていた口角を緩める。
頭ごなしではない、どこか暖かさを伴った響きに、セイナはおろか、神殿で仁王立ちしたままだったオスカーも眉を顰めた。
血の繋がり程度何だってんだ。
無理に緩めようとした口元が震える。
落ち着け……俺は彼女を否定したいんじゃない。
セイナという在り方を元に戻すだけでいい。
そこに怒りや怒号は必要ないんだ。
「お前はそうやって自分自身を誤魔化しているだけだ」
「……っ」
セイナの表情は一言で苦悶を浮かべ、オスカーも渋い面持ちを露わにする。
「子が親に逆らえない?それはお前がそう思っているだけの脅迫観念に過ぎない。確かに子は親から多くのことを学ぶが、その親が必ずしも正しい保証なんてどこにもない。なぜならその親だって子を授かる前はずっと子供だったからだ。道を間違っても何ら不思議じゃない」
「だからって、アタシに逆らう権利なんて……」
「そこが違うんだよ……」
武器を持った少女へと寄り添うように微笑む。
「逆らうんじゃない、正すんだよ。親子は決して上下関係や主従関係とは違う。親が子に教えるように、子供にだって親へ教えることはたくさんあるし、その権利は互いに対等にある。そうやって寄り添い合うのが親子ってものだろ?」
俺が竜とそうであったように、誰にだって間違いはあるんだと、俯いて逃げようとしているそのブルーサファイアの瞳を見つめる。
真っ赤に染まった魔眼は不思議と殺意を押し殺し、ただただ真っ直ぐに少女の内面だけを捉えていた。
「今のお前は父親の言葉を無理矢理飲み込もうとして、自分自身をなんとか納得させようとしているだけだ。自分や、お前のことを思ってくれる大切な人達の思いを押し殺してな」
「どうして……?」
ようやくセイナが俯いていた顔を上げる。
折角の可愛く凛々しい顔つきは、真っ赤に張れた頬で台無しだ。
「どうして……そう言い切れるのよ?」
黄金色の髪を振り乱し、遂には武器を構えることすらままならない状態でセイナは問いかける。
そんなもの……決まっている。
「お前がそんなことで自分を曲げるような軟な奴じゃないことくらい、この俺が世界で一番知っている」
そう、俺は……
「俺は……セイナにとって唯一のパートナーだからな」
「フォルテ……」
ガチャリッと地面を転がる双頭槍。
今までずっと圧し掛かっていた重圧を払いのけるように、俺が差し出した右腕へとセイナは飛び込もうとしている。
この世界で誰でもなく、この俺の手を彼女は選んでくれたのだ。
それがこんなにも嬉しくて、どこか少し照れくさくて、とにかく今まで感じたことのないような幸せな思いが身体中の隅々まで満たされていく。
自分の中にまだこんな感情が残っていることを知らなかった。
数十年と続けていた習慣すら忘れてしまうような、こんな感情のことを。
ザガァァァァァァァァァンンッッ!!!
「─────え?」
眼の端に映った雷光に気づいた時にはもう遅かった。
悲鳴すら上げる間もなく放たれた一撃は、俺の下半身全てを跡形もなく持っていき、見下ろしていたはずの少女の姿を見上げるような位置へと突き落とされる。
痛みなんて感じてる暇もなく、紅い瞳を持つ鬼は絶命した。
動かすこともままならない真っ暗な視界に映ったのは、無残な俺の姿に言葉を失う相棒の姿だけだった。
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