主人公を犯さないと死ぬ悪役に成り代わりました

キルキ

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無属性の新入生 3

初めての属性魔法で暴走している生徒たちの付き添いは順調に進んでいた。適当に相手をおだてながらサポートをしたら、なんだかんだでみんな上手くやるのだ。さすが、難関試験を突破しただけある。性根は腐りきった貴族のものでも、能力はちゃんと優秀なのだ。みんなコツを掴むのが早かった。

貴族の息子って、ちょっとおだてたら機嫌が良くなるからちょろいなぁ。

(レオンが水属性だって言われたときはどうなるかと思ったけど、今のところ何も支障はないな)

貴族の扱い方は既に心得ている。不機嫌になる前に機嫌を取りさえすれば、面倒なことにはならない。そんな俺の思惑など露も知らないクラスメイトたちは、

「お前、貴族にしては世話好きなんだな。俺の友達にふさわしい!これから仲良くしようじゃん?」
「レオンだっけ?…お前、心配になるくらい良いやつだな。しょうがないから、この俺が守ってやるよ。連絡先をくれ」

といった具合に無事仲良くすることができた。

……うん。みんなのレオンへの印象が原作通りになっているような。

原作通り、人に好かれやすいレオンの性格が出来上がっている気がする。これが俺にとって良いことなのか悪いことなのか分からないが…。まあ、印象は悪いより良いほうが、都合いいし。いっか。

(主人公と学園長とどんな話してるんだろうなぁ)

今頃学長室で話し合いをしている二人に思いを馳せる。魔力調整の練習も、もうすぐ終わりそうだし。この時間中にもどってくることはなさそうだ。

(次はいつ会うんだろう。……次会う時には、いじめが始まっているんだろうな)

原作通りならば、いじめは入学式後すぐにはじまるのだけど。主犯になるはずのレオンが、俺だからな。俺はいじめをする気なんてさらさらないし、どうなるかわからない。

いじめが起きないのが一番いいんだけどな…この様子だと、原作通りの展開になりそうなんだよな。

眼の前でいじめを見なきゃいけないって、今から気が重い。

「しっかし、お前は炎属性だと思ってたんだが……意外だな、水属性って」

生徒のサポートも一通り終わって一息ついているところに、ジャンが話しかけてきた。ジャンの右手にある杖は、赤い紋様が浮かんでいる。ジャンはやっぱり炎属性だったらしい。

「ジャンと同じじゃなくて残念だよ。……水属性でも、仲良くしてくれるかい?」
「ざ、残念?そ、そうか!俺と一緒じゃなくて残念か!しょうがないけど、仲良くしてやるよ。ありがたく思いな。…ところでさ、お前昨日、ニールと仲良く話していただろ」
「…うん、そうだね。それがどうかした?」

とうとうジャンの口からニールの名前が出てきた。とうとう来たか、と身構える俺に気づいていないジャンは、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら続ける。

「俺等でさぁ、あいつを退学させてやらない?」
「…どういうことかな」
「だーかーら、……身の程知らずの庶民のガキに、ちょっとお灸を据えてやろうっていう話だ」

なんて馬鹿らしいことを考えるんだ、こいつは。

要するに、いじめに参加しろということなのだろう。どうやら、俺が何もしない場合はジャンが首謀者になるみたいだ。

「ほうら、みんなやる気みたいだぜ」

ジャンがちらりと周りに視線を向ける。つられて俺も周りを見渡せば、いつの間にか数人の生徒たちが俺たちの様子を監視していた。

「お前がいると、士気が上がるんだよ。フェレオル家の長男で、成績首席の優男が……、あの庶民を懲らしめる!って宣言したら、みんな付いてくるだろうし」

口を閉ざしてまま、再びジャンを見返す。

…品のない笑顔だ、と罵ってやりたいくらいムカつく顔をしている。
ジャンは俺が頷くことを前提としたように、嬉々と言いながら肩を組んできた。

「な?良いだろ?楽しそうだろ?」

なるほど、ジャンはもう既に、他の仲間を集めているらしい。彼の取り巻きの中には前世で見覚えのある生徒もいた。原作でも出てくるいじめグループは、もう出来上がってきているみたいだ。

断れば、彼らの機嫌を損ねてしまうだろう。下手すれば俺もいじめの標的になるかもしれない。

(面倒なことを……)

だからジャンとはあまり関わりたくなかったんだがなぁ。

「……えーと、ごめん、俺は……あまり興味ないかな」

言いにくそうに言えば、その場の温度が下がった。まあ、そういう反応になるよね。

「は?なんでだよ。まさかお前、庶民の味方すんの?」

食って掛かるように詰め寄ってくるジャンの肩を押して、距離を取る。
さわるな近づくな、と怒鳴りたい気分だ。

それはそうと、俺はこの状況を予想していたのだ。だから俺はこの状況に対して少しも焦ってなどいなかった。

ここで、前もって用意していた言い訳の出番。

「だって、庶民の子っていうだけでそんなに興味わかないしぃー。そんなことで、俺の時間を使いたくないよ」

必殺、”貴族の俺が庶民に興味あるわけないし”攻撃だ。勿論これは本心ではなく、相手が納得しそうな理由を選んでいたらこうなっただけである。少々わざとらしいくらいに言うと、ジャンが顔を曇らせた。

『庶民』っていう肩書きに興味がないのは本当のことだ。だって庶民とか貴族とか、関係なしに仲良くできると俺は思っているし。

ジャンにはわざと、誤解を招く言い方をしているけど、俺の本心は結局のところそこなのだ。

「え、なに?もしかして君ら、あの子のことそんなに気になるの?」
「っはぁ?」

追い打ちをかけるようにそう言うと、いよいよジャンの顔が赤くなる。周りの取り巻きの雰囲気も不穏になってきた。

(煽るのはこのくらいにしておくか)

こてんと首を傾げながら、ジャンを見返す。ぴりぴりムードのジャンの様子も関係なしに穏やかに微笑んでやれば、ジャンが目を見開いた。

「それに、俺はこうやって君たちとお喋りしてる方が楽しいけど?」

にこーっと笑いかけると、みるみるうちにジャンの表情が変わる。先程のにやけた表情は消え去り、不意を突かれたような顔になった。

(はっはっは。貴族は自分に人懐っこい人間に弱いっていうことを知ってるんだぞ)

ただ、あまりにも下手に出ると、逆に利用されたりバカにされたりするから、頻繁にできないけど。

「そ、そこまでいうなら良いけどさ……気が向いたら、言えよ。いつでも仲間に入れてやるからな!」

変な捨て台詞を吐くと、ジャンは取り巻きを連れて別の生徒に絡みに行った。集団がぞろぞろと俺からはなれていくのを見ながら、呆れた気持ちになる。

え、まだ仲間増やすつもりなのかよ。

「……もう話しかけないでくださぁい」

彼らに聞こえないように、小さく呟いた。本当はこっぴどく罵ってやりたいくらいなんだけど、自分の立場も考えると彼らと揉め事を起こすのは良くない。

そんなこんなで、水晶の儀を無事に終えることができた。

今まで使っていた灰色の杖を外して新しい杖を腰に下げる。水の紋様が制服に映えて、とてもいい感じだ。

色鮮やかな杖を持つと、一人前の魔法使いになった気がする。かっこいい杖に内心浮かれていた俺は、とある人物から鋭い視線を向けられていることに全く気づかなかった。



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