霊感頼みの貴族家末男、追放先で出会った大悪霊と領地運営で成り上がる

とんでもニャー太

文字の大きさ
27 / 47

目覚めし力、迫る影

しおりを挟む
強烈な光に包まれたその瞬間、僕の意識は奇妙な場所へと引き込まれていった。そこは霧で満たされた無限の空間。足元には何もないはずなのに、僕はしっかりと立っていた。

「ここが...霧の世界?」

僕の声が、どこまでも響いていく。

「よく来たな、アリストン」

振り返ると、あの未知の存在がいた。近くで見ると、その姿は僕と瓜二つだった。ただし、その目は古代の叡智を湛えているかのように深く、髪は銀色に輝いている。

「お前は...僕?」

未知の存在...いや、もう一人の僕は微笑んだ。

「そう、私はお前の前世。かつてのヴェイルミストの守護者だ」

その言葉に、僕の中で何かが共鳴した。まるで長い間忘れていた記憶が、一気に蘇ってくるかのように。

「なぜ...僕の前に現れたんだ?」

「時が来たからだ」前世の僕は真剣な表情になった。「ヴェイルミストが、そして世界が危機に瀕している。お前の中に眠る力を目覚めさせる時が来たのだ」

その瞬間、周囲の霧が渦を巻き始めた。そして、様々な映像が浮かび上がる。

古代のヴェイルミスト。霧の力を操り、平和を守る守護者たち。そして...世界を滅ぼそうとする、漆黒の影。

「これは...」

「かつての戦いだ」前世の僕が説明を始めた。「我々守護者たちは、世界を滅ぼそうとする"闇の霧"と戦った。そして、辛くもそれを封印することに成功した。だが...」

映像が変わり、現在のヴェイルミストが映し出された。

「封印が弱まっている。闇の霧が再び目覚めようとしているのだ」

僕は息を呑んだ。これが、最近の霧の異変の真の原因だったのか。

「どうすれば...」

「お前の中に眠る力を解放するのだ」前世の僕が僕の胸に手を当てた。「さあ、目覚めよ。古の守護者の血よ」

強烈な光が僕の体内から溢れ出す。そして、知識と力が一気に流れ込んでくる。霧を操る真の方法、古の魔法、そして...闇の霧との戦い方。

「これが...僕の力」

光が収まると、僕は再び現実世界に立っていた。境界の印の前で、膝をつく形で。

「アリストン様!」

エリザベスが駆け寄ってくる。その表情には、驚きと安堵が混じっていた。

「大丈夫です」僕はゆっくりと立ち上がった。「むしろ...今の僕は、かつてないほど良い状態だ」

確かに、体の中に力が満ちているのを感じる。そして、周囲の霧が僕の意思に従うかのように、ゆらゆらと動いていた。

「これは...驚くべきことです」エリザベスが目を見開いた。「霧の濃度が...正常値に戻っています」

僕は静かに頷いた。「急いで城に戻ろう。みんなに説明しなければならないことがある」

城に戻ると、大広間には既に多くの人々が集まっていた。村の長老たち、研究者たち、そして...レイモンド・ブラックソーン。

「アリストン」レイモンドが一歩前に出た。「何が起きたんだ?急に霧の状態が...」

「説明します」僕は深呼吸をして、話し始めた。これまでの経緯、霧の真の性質、そして...迫り来る危機について。

話し終えると、部屋は重苦しい沈黙に包まれた。

「闇の霧...」村の長老の一人が震える声で言った。「そんな...伝説の存在が本当に...」

「信じられん」レイモンドが眉をひそめた。「だが、もしそれが本当なら...我々は協力して立ち向かわねばならない」

僕は静かに頷いた。「その通りです。これはもはやヴェイルミストだけの問題ではありません。世界全体の危機なのです」

「で、ですが」研究者の一人が口を開いた。「どうやって闇の霧と戦えばいいのでしょうか?」

「その方法は...」

僕が言葉を続けようとした瞬間、突然の地鳴りが響き渡った。

「な...何だ!?」

窓の外を見ると、北の空が不気味な紫色に染まっていた。

「まさか...」

僕の背筋が凍りついた。闇の霧の気配。それが、想像以上に近くまで迫っているのを感じた。

「みんな、落ち着いてください」僕は力強く言った。「これから私が...」

その時、ドアが勢いよく開かれた。

「大変です!」兵士が息を切らして叫ぶ。「北の村が...霧に飲み込まれました!」

一瞬の静寂の後、部屋は騒然となった。

「すぐに救助隊を!」
「逃げなければ...!」
「どうすれば...」

混乱の中、僕は決意を固めた。

「私が行きます」

その言葉に、全員の視線が僕に集まった。

「アリストン、危険すぎる」レイモンドが制止しようとする。

「いいえ、私にしかできないんです」僕は静かに、しかし力強く言った。「私には、霧を操る力がある。きっと...村人たちを救えるはずです」

レイモンドはしばらく僕を見つめ、そして深くため息をついた。

「分かった。だが、援軍を送る。絶対に無理はするな」

僕は頷き、急いで準備を始めた。

窓の外では、紫色の霧がますます濃くなっていく。時間との戦いだ。

「オリヴィア...見守っていてくれ」

心の中で祈りながら、僕は北へと飛び立った。

未知の力を身につけ、新たな試練に立ち向かう僕。しかし、その先に待っているものが、想像を遥かに超える脅威だとは、まだ知る由もなかった。

闇の霧との初めての直接対決。それは、僕の、そしてヴェイルミストの運命を大きく変える戦いの始まりとなるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...