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◆章灯の回想3
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「章灯、大変なんだよ!」
ある日、俺が登校すると、真っ赤な顔をした小番が駆け寄って来た。
そのあまりの必死さに、ランドセルを置くことも忘れてしまう。
「おはよ、小番。どうしたの? ちょっと落ち着きなよ」
その肩をトントンと叩くと、近くにいた女子がざわつき出した。ちょっと、ほら、なんて声も聞こえる。もう最近はこうやって冷やかされることも増えて来ていたのだ。
良いじゃんか、友達の肩を叩くくらい、フツーだろ。
たぶんそう言えば良いんだと思う。でも、ちょっと恥ずかしい。
「デロリスがっ! デロリスがいなくなっちゃったの!」
「デロリスが?」
あの日。
もふもふの中型犬を連れた小番と会ってから、俺はいままで以上に彼女と仲良くなった。
小番が飼っているデロリスは『シェットランドシープドッグ』っていう長い名前の犬種で、いまは『シェルティ』なんて呼ばれている。まだ2歳の雌犬で元気いっぱいらしく、朝、小番のお母さんが散歩に行き、夕方には小番が散歩に行くのだという。1日に2回も行くなんて、ウチじゃ考えられないことだ。
けれども毎日砂浜を歩いているわけではなく、ウチと同じで散歩コースは数種類あり、あの日は本当にたまたまだったのだとか。
それから、たまにだけど待ち合わせて一緒に散歩をするようになった。
小番の話では、デロリスがウチのゲンさんと会いたがっているんだって。犬にもそんなことってあるんだろうか。それに、ウチのゲンさんはデロリスとは犬種も違うし身体も小さい。それに雄だし、おじいちゃんだ。
もしかしたら、小番が俺に会いたいんじゃないかなんて勘ぐってみたり。
でも実際に会ってみれば、確かにデロリスはゲンさんを気に入っているような素振りを見せるのだった。まぁ、犬同士、話が合うのかもしれない。俺だってもしかしたら、この先、うんと年の離れた外国人の友達が出来ないとも限らない。きっとそういうことなんだろう。そう思うことにした。
「朝起きたらいなかったの。首輪が外れてて……」
「いままでこういうことは? 家出っていうか」
「えっと……一回だけ。家出ってよりは……脱走、かな。散歩中に首輪が抜けちゃって。それで、だーって走っていっちゃったの」
「その時はどうしたの?」
「家族皆で探して、でも結局その日は見つからなくて。でも、次の日の朝、戻って来た」
「自分で?」
「うん」
「それなら……また戻って来るような気もするけど。……でも、心配だなぁ。学校終わったら俺も一緒に探すよ」
だってまさか2人で早退するわけにはいかない。
まぁ、小番だけなら良いかもしれないけど、俺は確実に部外者だから。
「ありがとう、章灯」
「心配だと思うけどさ、とりあえず学校終わるまで我慢だ。な?」
「うん」
勇気づける意味と、それから、着席を促すつもりで背中をぽんと叩くと、やはり先ほどの女子達が、きゃあ、と小さく叫んだ。
だから、これくらいフツーだって!
ある日、俺が登校すると、真っ赤な顔をした小番が駆け寄って来た。
そのあまりの必死さに、ランドセルを置くことも忘れてしまう。
「おはよ、小番。どうしたの? ちょっと落ち着きなよ」
その肩をトントンと叩くと、近くにいた女子がざわつき出した。ちょっと、ほら、なんて声も聞こえる。もう最近はこうやって冷やかされることも増えて来ていたのだ。
良いじゃんか、友達の肩を叩くくらい、フツーだろ。
たぶんそう言えば良いんだと思う。でも、ちょっと恥ずかしい。
「デロリスがっ! デロリスがいなくなっちゃったの!」
「デロリスが?」
あの日。
もふもふの中型犬を連れた小番と会ってから、俺はいままで以上に彼女と仲良くなった。
小番が飼っているデロリスは『シェットランドシープドッグ』っていう長い名前の犬種で、いまは『シェルティ』なんて呼ばれている。まだ2歳の雌犬で元気いっぱいらしく、朝、小番のお母さんが散歩に行き、夕方には小番が散歩に行くのだという。1日に2回も行くなんて、ウチじゃ考えられないことだ。
けれども毎日砂浜を歩いているわけではなく、ウチと同じで散歩コースは数種類あり、あの日は本当にたまたまだったのだとか。
それから、たまにだけど待ち合わせて一緒に散歩をするようになった。
小番の話では、デロリスがウチのゲンさんと会いたがっているんだって。犬にもそんなことってあるんだろうか。それに、ウチのゲンさんはデロリスとは犬種も違うし身体も小さい。それに雄だし、おじいちゃんだ。
もしかしたら、小番が俺に会いたいんじゃないかなんて勘ぐってみたり。
でも実際に会ってみれば、確かにデロリスはゲンさんを気に入っているような素振りを見せるのだった。まぁ、犬同士、話が合うのかもしれない。俺だってもしかしたら、この先、うんと年の離れた外国人の友達が出来ないとも限らない。きっとそういうことなんだろう。そう思うことにした。
「朝起きたらいなかったの。首輪が外れてて……」
「いままでこういうことは? 家出っていうか」
「えっと……一回だけ。家出ってよりは……脱走、かな。散歩中に首輪が抜けちゃって。それで、だーって走っていっちゃったの」
「その時はどうしたの?」
「家族皆で探して、でも結局その日は見つからなくて。でも、次の日の朝、戻って来た」
「自分で?」
「うん」
「それなら……また戻って来るような気もするけど。……でも、心配だなぁ。学校終わったら俺も一緒に探すよ」
だってまさか2人で早退するわけにはいかない。
まぁ、小番だけなら良いかもしれないけど、俺は確実に部外者だから。
「ありがとう、章灯」
「心配だと思うけどさ、とりあえず学校終わるまで我慢だ。な?」
「うん」
勇気づける意味と、それから、着席を促すつもりで背中をぽんと叩くと、やはり先ほどの女子達が、きゃあ、と小さく叫んだ。
だから、これくらいフツーだって!
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