メル友は賢者様/錬金術師?〜冷遇される錬金術師は33歳でスキルが発動!会社員のネット知識と錬金術師の努力で国を改革〜

カイナルミ

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1章 

15 損して徳とれ(2)

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流石に高すぎた様で、受付の男性が憤慨した。

 「なっっ!?こんなコップが銅貨50枚!?ふざけるなっっ足元見てるだろっっっ!!!ギルド長!!コイツらのきっと門番にはもっと安く売ってますよっっ!!恐らく銅貨5枚位ですよ!!商業ギルドを騙そう等とは・・・兵を呼んできますっっっっ!!!」

 「えぇっっ!?」
 「横暴すぎる・・・」
 「カイル、お前は黙っとれ!!!」
 「っっっっ!?・・・は、はい申し訳ございません・・・しかし・・・」
 「これ以上煩くしたら、荷受けのチェックに回すぞ?」

ギルド長に凄まれて受付の男性ーーカイルはまだ何か言いたそうだったが黙った。どうやら荷受けのチェックの仕事は嫌な仕事らしい。

 「で、これのどこが魔法のコップなのだ?銅貨50枚もするのだから、余程素晴らしいのだろう?」
 「はい、これには魔法も掛かっていませんが、『熱い飲み物入れたら冷めにくく、冷たい飲み物入れたら温くなりにくい』コップです。冷たい飲み物入れてもコップに水滴が出ないし、熱いのも物入れてもコップの表面は熱くて持てない等という事もないです。」
 「そんな嘘を吐くなっっっ!!!」

ギロリとギルド長に睨まれた受付のカイルは慌てて口を閉じた。感情出し過ぎるカイルは商売に向かないんじゃないのか?と、商売素人のセフィールですら思ってしまう。

 「では、試してみるか。カイル、熱湯を沸かして持ってこい。」
 「はいっっっっ!!!」

セフィール達の化けの皮を剥がせると思ったのか、意気揚々と熱湯を用意しに部屋を出て行った。
 
 「すまんな、アイツはまだ入って3年目で人を見る目がない。私の顔に免じて許してやってくれ。」

 「まぁ、フォルテム王国よりかはマシだから良いけどな。な、セフィール?」
 「そうだな、あの国だったら錬金術師ってだけで門前払いだしな。ギルド登録出来ないんだよな。」

 「その様なことが・・・。それでこの国に逃げて来る錬金術師が多いのですか・・・。」

ーーガチャッッッッ!!!

 「持ってきましたっっっっっ!!!入れましょう入れましょうっっ!!コップ置いてくださいっっっ!!!」

受付のカイルは勢いよく戻ってきて直ぐにコップを催促する。その勢いに3人は若干引いている。

 「えっと、どうぞ。」

セフィールが2つコップを置くと、カイルは熱湯を注いだ。それをギルド長が持ち上げてみる。

 「ギルド長っ!!なんて危ない事をっっっ!!」
 「全く熱くないから問題ない、確かにこれなら銅貨50枚で売れるだろう。貴族への手土産に持って行けるな・・・。
これはどの位保つ?」

「そんな馬鹿なっっ」とどこからか声が聞こえたが無視してギルド長と会話をする。

 「この構造について教えてくれた友人いわく、3年位だと言っていました。ただ、錬金術師の能力によってはもっと寿命は伸びるんじゃないかと教えてくれました。それともし、とある鉱物を見つける事が出来たらステンレスで作るよりももっと丈夫な真空断熱のコップが作れると言ってました。」
 「そのご友人はどちらに?」
 「かなり遠い他国の人間で俺のスキルで手紙のやり取りしているんで、ここにはいませんよ」
 「では、そのご友人は販売しても良いと仰っているのですかな?売り上げはそのご友人に渡すのですか?」

 「販売に関しては、これを作ると良いとか助言をくれ俺を助けてくれている程です。売り上げは今のところ不要らしく、俺が何か物を作って贈りたいと言っても『期待しないで待っている』って言ってくれる友人なので、その内恩返しはしたいと思っています。」

 「不思議なご友人ですなぁ・・・成る程分かりました。では明日もう少しコップを持ってこられる様でしたら、持ってきて下さい。全部買い取ります。コップも入れて銀貨4枚と銅貨50枚だな。これはギルドで無く私個人が買い受けましょう。」

ギルド長が懐から財布を出すと銀貨6枚渡された。

 「え?お釣りですか?・・・6枚???」

 「今日と明日の手間賃だから取っておきなさい。それで美味しいもの買って帰りなさい。エールを飲む時間を削ってしまったからね。お詫びも込めて色を付けさせてくれ。」

ギルド長ににっこり微笑まれて返すことも出来無かったので、有り難く頂戴する事にした。

 「そろそろ出ないとマズイぞセフィール。」
 「そうだな、俺達はこの辺で失礼します。では、また明日来ます。」

 「うむ、待っていますぞ」
 「・・・」

2人が出て行った後、ギルド長は鍋を持ち上げ嬉しそうに眺めていた。

 「ギルド長、・・・なんでそんな物買ったんですか?騙されていますよ」

 「お前はもう少し新しい物も受け入れる度量が無いと、商売では大損するぞ?安定的にステンレスが手に入ればこの国の新たな輸出の主力になるやも知れん。錬金術師がこの国にを変える可能性すらあるんだぞ?安定して商品が手に入るまではこのコップや鍋ですら銀貨1枚以上になるだろうな。」

 「そんな馬鹿なっっ!!!」

 「お前は時代の大きな渦を外から傍観していると良い。私は昔「商売で国を変える」という志を持っていたが自分の不甲斐なさに諦め、いつの間にかただのギルド長に収まってしまった・・・。だが、彼等にあって今度こそ出来ると確信している。カイル、フォルテム王国から逃げてきた錬金術師達を全て集めて商業ギルドに登録させなさい。登録料は私が持つから無料でしてあげなさい。」

 「分かりました、もうどうなっても知りませんからね!!」

ーー商業ギルド前に張り紙を貼る為にカイルは部屋から出て行った。

部屋に1人になったギルド長が呟く。


 「彼等に全財産使い果たしても後悔はせんよ。」








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