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1章
17 エール
しおりを挟む取り引きを終えた2人は、宿屋に戻った。
暇そうに寝転んでいたアオとクロを連れて昼間から酒屋に行った。ルークが待てない様だったので、飲みたがっていたエールとご飯を頼む事にした。アオとクロは別に肉を出して貰った。
「やっと、エールが呑める~っっっっっ!!セフィールに着いてきて良かったぁぁぁぁぁっっっっっ!!!本当に良かったぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!ありがとうっっっっっっっっっ!!!」
大袈裟に喜ぶルークの目尻には光る物が見えたが、セフィールはそれには触れなかった。
「ルークは大袈裟だなー。これから普通に呑める様に頑張れば良いだけだろ?」
「お前と一緒ならこの町みんなでケーキ計画出来ると信じられるぜ!!」
「みんなでやれば必ず出来るさ」
「おい、こんな昼間っから酒呑むとはいい御身分だな?」
突然男性の声が聞こえて2人は声のする方を見た。
「よう!お二人さん」
「「門番さんっっっ!!!」」
「門番さんって・・・。あぁ名乗って無かったな、俺はこの町の衛兵でゼルって名だ。よろしくな!」
「今日は門番していませんでしたよね?休みですか?」
「あぁ、今日は非番だから散歩していたら酒場からお前達の顔が見えたから声掛けただけだ。」
「ゼル、お前も座れよ。セフィールコイツにもエール奢ってくれないか?」
「お誘いはありがたいが、流石に昼間から酒を呑んでは節約している妻に申し訳ないから遠慮するよ」
「それなら、俺達が頼んだ料理を摘んで行けよ。昼御飯浮くだろ?」
「家に戻って食べるんなら断ってくれ、外で食べるって言って出てるならここで食べても一緒だろ?」
「ーーでは、有難く呼ばれる事にしよう。」
3人で食べ始めてからここの領の事を聞いてみた。
「そうか~、領主様は税を上げないように頑張ってくれているけど限界に来ているのかー・・・。やっぱ町の人間にも分かる位逼迫し始めているとは・・・。やっぱみんなでケーキ計画するしかねーな、セフィール!」
「みんなでケーキ計画って何だ?」
「えーっと、俺達錬金術師がこの国の輸出可能な資源や物を錬成して取り敢えずはここの領を豊かにして、行く行くはこの国の人間が普通に美味しいケーキが食べられる様にしようって計画なんだ。」
「何だその御伽噺みたいな話は。・・・でも、昨日のコップ作れる奴らなら出来るかもしれないな。」
「あ、すみませんでした。あのコップの機能について伝え忘れていて。」
「妻が驚いていたぞ?ホットミルク淹れてたら通り雨が降り出して慌てて洗濯物取り込んだ後、ミルク淹れていた事思い出して飲んだらまだ熱かったって。まさかあんな王都にも売ってない様な物を銀貨1枚で売って貰って悪かったな。妻がかなり喜んでくれてな・・・ありがとうな!」
「何言ってるんですか、ゼルさんのお陰でこの町に入る事が出来たんですから。俺達凄く感謝してますよ!」
「はははっっ!それなら安心して使うとするよ。妻が心配するからそろそろ帰るな。」
「あ、ゼルさんこれ持って帰りませんか?魔物の肉を乾燥させた物で携帯食に便利なんですが、煮物なんかにも千切って入れたら美味しいですよ。俺達はこういうのすぐ作れるんで奥さんと食べて貰えたら・・・」
「ありがとう助かる。またな」
「はい、また」
ゼルが帰る頃にはルークは酔ってテーブルに突っ伏していた。お金を払いクロに協力して貰いながら宿の部屋に辿り着いた。昼飯を食べていたのにいつの間にか夕飯の時間になっていた。
「これ、クロ居なかったらルークどうしてただろうな?」
考えるとちょっとおかしくなって笑みが溢れた。
ルークをベットに寝せると、ユーリに話をする為スキルを発動させた。
『 ユーリ
今、村から1番近い町に来ているんだ。昨日ステンレス鋼の件で
ユーリに交信した後、ルークとアオで鍋とコップを売りに行ったんだけど
門番のゼルさんって人が商業ギルドに登録するお金2人分くれて
なんとかなったよ。ゼルさんが居なかったら鍋とコップ持って2時間歩いて
帰らなきゃならなかった所だよ
それから、商業ギルドのギルド長に頼まれて村の錬金術師の皆を俺の今
いる領で働か無いか聞いて欲しいって言われた。
昨日と今日錬成した鍋5個とコップ7個は全部ギルド長が買い取ってくれたんだ。
だから、やっと新品の服を着る事が出来たんだ。今日はルークにエールを
奢る事が出来たんだけど、ルーク凄く感動してたよ。
あーもっとユーリに細かく伝えたいのにこのスキルじゃ書ききれないよ
それからルークが俺と錬金術やってくれるって言うから一緒にやる事にしたんだ
今度少なくなった素材集めに廃ダンジョンに行ってくるよ
ニッケルとクロムが欲しいんだけど、チタンあるといいな
昨日大切な友達って言ったけど、ルークにはユーリの事親友って
言っちゃってるんだ 本当勝手にごめん!!!
フィール 』
ユーリに近状を伝えたメッセージを送り、桶を借り水をお湯に変え自分とアオとクロの汚れを落として寝る準備をした。
セフィールは今晩も宿の窓から見えた翠星にこの町の人が気軽にケーキが食べられる様になる事と、ユーリの幸せを願ってから就寝した。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
ウェリー男爵領
領主イグリール・ウェリー男爵の屋敷
「旦那様、昨日ポドム様より頂いた銀色のコップを奥様は大変喜んでいるご様子でした。鍋を渡した料理長も手軽さに感動しておりました。」
「そうか・・・。私はこれから自領を錬金術師達の力を借りて発展させようと思っている。」
「昨日のポドム様との話し合いの件で御座いますね?私も賛成に御座います。このままではこの領内だけで無く国自体が貧困に陥ってしまうのは明らかで御座いますから・・・。」
「防衛に避ける国庫が無くなれば、隣国が攻めて来て国が奪われる可能性が高いのだからな。何も無い国だが大国セゾを侵略するには、この国を落とした国だと言われる程に我々のいる国は立地条件が悪いからな・・・」
「いつどこの国が攻めてきてもおかしくは御座いませんからな・・・。セゾがミジュア王国に協力してくだされば良いものの、協定を結ぶ事を頑なに断ってきますからな。」
「ミジュア王国は小国の上、資源も無く財政難だからな。この国に協定を結ぶ程の旨みが無いのと、他の国と内通して攻めてこられても痛くも痒くも無いと言う思いの現れなのだろう。我が国の王がお優しいのをいい事に難癖付けてくる国も多い。忌々しい・・・!!錬金術師達が突破口になれば良いが・・・。」
「旦那様、私達領民も旦那様のお味方で御座います。」
「あぁ。頼むぞ。」
愛国精神の高い領主イグリール・ウェリー男爵と忠義心に厚い執事ハリオット。
自領も財政が厳しい中、錬金術師達に身銭を切って囲い込み一世一代の大博打で錬金術師達に賭けることにした。
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