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1章
24 献上品
しおりを挟む領主達と別れてアオとクロがいる一室に迎えに行くと、子供達はもう寝る時間で帰っていた。
そこには、兵士長がボロボロで床に転がり、アオが兵士長の腕をガジガジ噛んでいる許容し難い光景があった。
もう1人は何をしているのかとセフィールが一緒にいたはずのもう1人を捜すと、そのもう1人に当たる人物ゼルは椅子に座って本を読んでいて、その足元でクロが休んでいた。
セフィールとルークはアオと息があった兵士長をなんとか引き離し、ゼルに連れて帰って貰った。
大満足の様子のアオとやっと戻るのかという雰囲気のクロを連れてセフィールとルークも部屋に帰った。
「ゼルっていい奴なのにこういう時の冷たさなんなの?ギャップ萌とかってレベルじゃなく無い?」
「あははは・・・でもあの態度他の兵士が居ない場所で兵士長限定だから逆に仲がいいんじゃ無いのか?」
「そっかなぁ~そう言うもんか~・・・?まぁ良いけど」
「(兵士長、今日のお詫びはチタンのコップで許して下さい・・・)」
ルークはワインをコップ2杯呑んでいた上、廃ダンジョンでかなり疲れていた為ベットに入った瞬間に眠っていた。
セフィールは今日の事をユーリに伝えるべくスキルを発動させる。
『 ユーリ
今日は朝から廃ダンジョンに潜って来たんだけど最下層のボス部屋を
回収したらチタンだったんだ。
最下層のチタンの壁を回収した後、魔法陣が出現して悪魔が現れたんだ
アオと一緒に行ったルークと倒したんだけど死ぬかと思ったよ。
あ、アオとクロ魔獣だったんだ。今朝ドラゴンと大きい犬が部屋で
寝てて驚いたよ
悪魔倒したから領主様に会って、悪魔の死骸見せたら驚いてたよ。
今日は領主様のお城に泊めて貰う事になったんだ。凄く綺麗な部屋だよ。
王様に領主様が悪魔の報告に行くついでに献上するからって
チタンの真空断熱コップ頼まれて作ったんだ。流石にこれだけも
どうかと思うんだけどユーリは何かチタンで王様に贈るのって何が
良いと思う?
後、領主様とルークと一緒に報告に来たギルド長と兵士長とゼルさんにも
チタンの真空断熱コップ作ったんだ。ゼルさん達2人には明日渡すんだ。
翠星は移動しないからどこにいても見つけられるから好きなんだ。
ユーリの好きな星あったら教えて欲しいな
フィール 』
セフィールは書きたい事は書いたなと満足気に送信した。最近は色んな出来事が起こり過ぎて、ユーリに伝えたい事が沢山ある。しかし、セフィールは散々ぼっちを極めて来た身であった為伝える事が多いと、途端に相手には支離滅裂で意味不明な文面になる。
窓から見えた翠星にユーリの幸せと来年大旱魃が起こらない事を願った後、ふかふかのベットであっという間に眠りについた。
その夜、再び黄緑色の光がアオとクロを包んでいた。今晩はみんな疲れており、その光に誰も目が覚める事はなかった。
翌朝、部屋の中で1番に目が覚めたセフィールは若干の違和感を感じた。
どうもアオとクロの雰囲気が昨日までと異なる様なそんな漠然とした違和感であった。
気にはなったがよく分からなかったので、ユーリから返事が無いかチェックした。
「(俺の手紙に気がついてくれてるって事は、気に掛けてくれてるって事だよな。)」
返って来ていた返事を読み始める。
『 フィール
もう!あの内容はなんなのさっっ!!分かりにくいっ!
朝にアオとクロが魔獣なのが発覚して、そのまま廃ダンジョンに入って
最下層のボス部屋がチタン製で回収したら悪魔と戦う事になったんだよね?
で、アオとルークと一緒に倒したら領主の所に悪魔見せに行く事になって
宿泊させて貰った、と。んで、色んな人にコップ作った報告と王様にコップ
以外で贈り物に向いているチタン製品は何か無いか?って話だよね?
チタンの特性が軽い丈夫錆びにくく熱が伝わりにくいってのなんだけど、
コップと同じ様に真空で水筒も良いとは思うけど、王様使わないよね?
燭台とかどうかな?錆びないし、熱も伝わりにくいし、丈夫だし。
軽いから豪華な装飾付けてもシンプルな鉄のと同程度の重さだと思うし。
後は王妃様がいらっしゃるなら、王妃様向けの物も良いかも?
錆びにくいからネックレスとか腕輪とかも良いかもね。
鉄と違ってアレルギーになりにくいって言われてるし。アレルギー・・・
通じるかな?身体に出る拒否反応で付けた場所が赤くなったりするヤツ。
フィールなら他の金属成分完全に取り除けるんじゃ無い?
そしたら金属アレルギー起こる確率かなり低いんじゃ無いかな?
普段鉄で作ってる物で使用頻度が高く、錆びやすくて皆んなが困ってる
そんな物をチタンで作ったら良いと思うよー?
普通なら加工が大変なんだけど、錬金術師なら出来ると思うよ!!
こっちの世界だったら錬金術師、世界中で引く手数多だね☆
好きな星か~大都市は星が全然見えなかったんだよね。田舎に引っ越して
よく見える様になったけど、フィールに言われるまでわざわざ見ようと
外に出る事も無かったんだ~
だから、そっちの翠星に当たる北極星が好きになったよー!
ユーリ 』
自分とのやり取りでユーリが好きになってくれた物が出来た事に、嬉しくて口元の締まりが緩くなってしまうのを抑えられない。セフィールはユーリが口調が荒い事とこちらの世界ではユーリが男性名であった事から、ずっと同性だと思っている。
セフィールには敬愛している賢者の事は性別とは別次元の存在なので、例え賢者が神様だろうと悪魔だろうと犬や猫であろうとなんの問題も無い程には親愛の情を寄せている。
浮かれた気持ちを深呼吸を繰り返して沈め、今日領主が会うのであろう王様の為の献上品を作る事にした。ネックレスの様に紐等他の素材が必要ないシンプルな細い腕輪を数点と、幅の広い腕輪に紐の様に細くしたチタンで複雑な模様を作り合わせた物、チタンで薔薇や葉っぱを錬成して豪華だけれども邪魔にならない使いやすい燭台を作った。それらを一旦素材ボードに収納した。
悪魔の時とは違い、【錬成不純物】とは出ず代わりに【チタン製:燭台】等と出ていた。
横を見るとクロがいつの間にか起きていて、セフィールの側で錬成を見ていた様だ。
ルークも目が覚めたらしくシーツの中で蠢いているが、アオはお腹を晒しまだ爆睡中であった。
着替え等をしている間に侍女が迎えに来たので、起きないアオを背負い食堂に向かった。
食堂には領主やその家族とポドム、ゼル達が既に座っていた。
「おはようございます!お待たせしてしまいすみませんっっ!!」
「いや、構わないよ。それよりアオ殿を早く降ろしたまえ、重いであろう?」
お礼を言いクロが既に受け皿の前にいるその隣にアオを降ろした。アオは見かけは蜥蜴だが尻尾が長く大きさがそこそこあり40キロ位はあるので、実はかなり重い。
朝食はスープやパンといった軽い物だったので、気を遣わずに食べる事が出来たので味わえた。
「もう少ししたらポドムの呼んだ運び屋が来るらしいからね、それからすぐ王都に向かうよ。君たちはどうするんだ?もし、この街を観光するならここに泊まると良い。」
「んー・・・どうすっかなぁ・・・セフィール?」
「まぁ、この街にはまた来ると思いますし、村の人にお土産でも買ったらアイヲン町に戻ろうかなと思います。アイヲン町に一泊してから村に戻ろうかと・・・。ルークはそれでいいか?」
「イイぜ。そろそろお前から錬金術学ばなきゃなんねーからな。」
「では私と同じ馬車にお乗り下さい。帰りも同じ顔ぶれですな♪」
「アイヲン町までまた一緒だ、よろしくな!2人共。」
「買ったらさっさと帰るからな。」
「ポドムさんありがとうございます!お二人には帰りもお世話になります!」
「お食事中失礼致します、旦那様。運び屋が参りました。」
「そうか、では王都に参ろう。」
「あ、あのっっっ!!!」
口を拭き立ち上がる領主に慌ててセフィールが声を掛けた。
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