恋人の運命の人(笑)は、私の恩人

天歌

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7.アルベルト視点①

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僕はアルベルト。

貧乏な家に生まれた負け組の男だ。
ギャンブル依存症な父に、父の愚痴ばかり言っているクセに離れる事もできない母。


ある日、また2人が喧嘩している時にウンザリした僕は、何か良い事が起きないかなぁと家の窓から外を眺めていた。
急に雨が降ってきたと思えば、我が家の軒下に1人の女性が雨宿りの為か駆け込んできた。


「やぁ、急な雨で大変だったね。これ、タオルを使って」

僕が声をかけると、その女性は驚いたように顔をあげた。

「あっ!ありがとうございます。勝手にすみません!雨が上がったらすぐに出て行くので雨が止むまでここで雨宿りさせて貰っても良いですか?」

濡れた髪に潤んだ瞳でそんな事言われると、断る事なんてできない。
中々可愛らしい人だな…
そんな事を考えながらその潤んだ瞳を見つめる。

その女性はエリスと名乗った。
まだあどけさが残っている。16.17歳あたりだろうか。

「勿論、雨が止むまでと言わず、ずっといて欲しいくらいさ」

そう言って微笑むと、エリスは少し驚いた顔をした後に小さな声で「ありがとうございます…」と呟き、顔を真っ赤にして俯いた。

あぁ、なんて単純な女なんだろうか…。
そんなだったら、悪い男に騙されてしまうだろうな。

「ところで君が大事そうに持っている箱は何?」

自分はビショビショに濡れているクセに、その胸に抱えた箱だけは濡れないように必死に守っていたのだ。

「あ!これですか!?実は趣味でレースを作っていて…。いつもここの近くの孤児院に寄付しているのです。今日も行く予定だったんですけど、雨に打たれちゃって…」

先程まで真っ赤になって俯いていたのに、レースの話になると目を輝かして饒舌になる彼女。

へぇ。孤児院に寄付かぁ。
何とも奇特な人だなぁ。
この人は満たされているのだろうな。

人に何か与える事ができる人は、満たされていた何不自由無い人間だという事を僕は知っている。

エリスの夢や希望を秘めた瞳を見ると、捻くれた醜い自分が溢れ出てくる。

暇だしちょっと遊んでやろうと彼女に優しい言葉をかけるとすぐにコロッと落ちた。
若くて可愛い彼女を連れていると、周りは僕を羨んで何とも気持ちが良かった。

彼女と一緒に孤児院へ行った日には、材料費と謳って後から金を徴収しに行った。まぁはした金だけど無いよりはマシだった。

病気の母親がいて、働きに行く事ができないと言えばエリスは「少しでもお母さんに美味しいもの食べさせてあげて!」と言ってせっせと金を運んできた。

それでも大した金額では無かった。
レースを編んでいるような遊ぶ時間があれば身売りの1つでもしてもっと持ってきてくれれば良いのに…。

僕はいつまでも貧乏なんかでは居たくない。
いつまでも負け組なんて許せない。


そんな悶々としている時、僕に転機が訪れた。

エリスが、とてつもない美人と歩いている所を見かけたのだ。
気になって後をつけると、その美人は超有名店ブティックフリージアのオーナーである事が分かった。


これだ……!!
あの美人を手に入れれば、金も名誉も手に入る…!

そうすればこんな負け組人生とオサラバだ…!



だからもうエリス、君はいらないんだよ!!


だから僕は言った。


「僕は運命の人と出会ったんだ。だからエリス。僕と別れて欲しい」


と。














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