1 / 1
占い師の私と騎士団副団長
しおりを挟む
「この薄汚い流浪の魔女ユーフェミーア!!今すぐこの街から出ていけ!!」
にぎやかな街の広場で、若い騎士を従えた銀髪碧眼で長身の美しい騎士が、その綺麗な顔を歪めて私を指差した。
もう、キレていいよね?
ずっとガマンしてきたんだから。
物心ついた頃から私は流浪の占い師をしていたおばあちゃんと一緒に旅をしてきた。各地を転々とする中で占いの技術を学び、この街に居を構えてすぐ亡くなったおばあちゃんの後を継いで 占いを生業としていたのだが、2年前に赴任してきた近衛騎士団副団長はどうも私が気に入らないのか、ことあるごとに絡んできては、言いがかりをつけにやってきた。
広場で占いをしていれば、「魔女だ!!」と罵られ、屋台で食事をしていたら、「下品な食べ方を!!」と言われるわ、街唯一の図書館で勉強のため占いの本を読んでいれば、「貴様のような奴が入る場所ではない!!」と追い出されるなど、ことあるごとに私に罵詈雑言を浴びせたり、嫌がらせをしてきた。あと、私の名前は
ユーフェミ-アではなくユフイミナだ。
今日にしても、若い男女を占っていたら、突然、副団長が怒りの形相で走ってやって来て、お決まりの罵詈雑言を浴びせた上、冒頭の台詞を言い放った。
「………わかりました。」
そう言うと、私はポカンとしている騎士様達を横目に仕事道具を片付け、鞄の中へと収納していく。
「おっ…オイ、何をしている……?」
「……そんなに言うのならば、出ていきますよ。サヨウナラ。」
そう言うと、鞄2つを両手に持って 騎士様達に背を向けて立ち去った。
「「「………………えっ!??」」」
「……っ、何でだあぁぁ!!」
私が立ち去ったあと、広場に副団長の叫び声が響き渡った。
「何で……何でなのだ?何でユーフェミーアは去ってしまったんだ?」
「何でって……副団長が行ったんですよ。『街から出てけ』って。」
「っ……それは言葉のアヤで、本気で言ったつもりではなかったんだ。」
「……ってか、副団長。いつもあの子にそんな態度で接してきたんですか?」
「は?それが何だ?」
「いや……あんな態度とられたら、嫌われると思われてもおかしくないですか。」
「はっ、嫌われているだと、ふざけるな!俺はユーフェミーアが将来、貴族の生活に困らないように教えているだけだ!!」
「『男に色目を使う何て!!』ってキレるのの何処が教えてるんですか。しかも、あの時恋人らしい女性がすぐそばにいたじゃないですか。」
「うっ………」
「副団長、さっき貴族の生活とか、騎士団の詰所でも彼女は自分が好きなんだって言ってますけど、どう見ても副団長の一方的な片思いですよね。」
部下のその一言がグサリと胸に刺さり、副団長は項垂れてしまった。
「………副団長?」
「………………せ。」
「へっ?」
「今、何ていいまし…「ユーフェミーアを探せえ~!!」…って、探してどうするんですか。」
「見つけ次第、俺の元に連れて来て………結婚する。」
「「はあぁぁ~!!??」」
「うるさい、さっさと探すんだ!!」
驚く部下2人を叱責すると、副団長は何処かへと立ち去ろうとしていた。
「どこに行くんですか?」
「彼女の家に向かう。おそらくまだいるはずだ。」
と、格好つけたのだけれどこの時、副団長は忘れていた。 数日前に大家さんを脅し私を家から追い出して、家具やおばあちゃんの形見の品をすべて処分したことを空き家となった元我が家を見て、大家さんに指摘されるまですっかり頭の中から消えていた。
「何でそんな事したんですか?」と部下が問いただすと、「家さえ追い出されれば、俺の元に来ると思ったし、何より囲いこめると思った。」とのことだ。
そんなことは知らない私は行商人の馬車に乗せてもらい3日後、行商人と別れ、隣国行きの船に乗るため港町に到着した。
その同じ頃、副団長が私が行商人と一緒にいるとの目撃情報から港町に向かって馬を走らせていた。
このあと私は無事、副団長から逃れ隣国に辿り着いたのか、それとも副団長に捕まったのか。
その結末は神のみぞ知る。
ーーー-------------------------------登場人物
ユフィミナ
16歳 祖母の後を継いだばかりの占い師 作中では語らなかったが、褐色の肌に黒髪黒目の容姿の持ち主。 実は家を追い出された時、副団長の策略で宿にも泊まることができず広場で寝泊まりしていた。
近衛騎士団副団長
28歳 2年前に赴任したばかり
ユフィミナに一目惚れし、ちょっかいという名の嫌がらせと言いがかりをつけてきた。
銀髪碧眼のイケメン。 貴族の三男坊で王都にいた頃は女性にモテモテだった。 自己中心的な性格
若い騎士2人
最近配属されたばかり。副団長に憧れていたが、今回の件で失望する。
にぎやかな街の広場で、若い騎士を従えた銀髪碧眼で長身の美しい騎士が、その綺麗な顔を歪めて私を指差した。
もう、キレていいよね?
ずっとガマンしてきたんだから。
物心ついた頃から私は流浪の占い師をしていたおばあちゃんと一緒に旅をしてきた。各地を転々とする中で占いの技術を学び、この街に居を構えてすぐ亡くなったおばあちゃんの後を継いで 占いを生業としていたのだが、2年前に赴任してきた近衛騎士団副団長はどうも私が気に入らないのか、ことあるごとに絡んできては、言いがかりをつけにやってきた。
広場で占いをしていれば、「魔女だ!!」と罵られ、屋台で食事をしていたら、「下品な食べ方を!!」と言われるわ、街唯一の図書館で勉強のため占いの本を読んでいれば、「貴様のような奴が入る場所ではない!!」と追い出されるなど、ことあるごとに私に罵詈雑言を浴びせたり、嫌がらせをしてきた。あと、私の名前は
ユーフェミ-アではなくユフイミナだ。
今日にしても、若い男女を占っていたら、突然、副団長が怒りの形相で走ってやって来て、お決まりの罵詈雑言を浴びせた上、冒頭の台詞を言い放った。
「………わかりました。」
そう言うと、私はポカンとしている騎士様達を横目に仕事道具を片付け、鞄の中へと収納していく。
「おっ…オイ、何をしている……?」
「……そんなに言うのならば、出ていきますよ。サヨウナラ。」
そう言うと、鞄2つを両手に持って 騎士様達に背を向けて立ち去った。
「「「………………えっ!??」」」
「……っ、何でだあぁぁ!!」
私が立ち去ったあと、広場に副団長の叫び声が響き渡った。
「何で……何でなのだ?何でユーフェミーアは去ってしまったんだ?」
「何でって……副団長が行ったんですよ。『街から出てけ』って。」
「っ……それは言葉のアヤで、本気で言ったつもりではなかったんだ。」
「……ってか、副団長。いつもあの子にそんな態度で接してきたんですか?」
「は?それが何だ?」
「いや……あんな態度とられたら、嫌われると思われてもおかしくないですか。」
「はっ、嫌われているだと、ふざけるな!俺はユーフェミーアが将来、貴族の生活に困らないように教えているだけだ!!」
「『男に色目を使う何て!!』ってキレるのの何処が教えてるんですか。しかも、あの時恋人らしい女性がすぐそばにいたじゃないですか。」
「うっ………」
「副団長、さっき貴族の生活とか、騎士団の詰所でも彼女は自分が好きなんだって言ってますけど、どう見ても副団長の一方的な片思いですよね。」
部下のその一言がグサリと胸に刺さり、副団長は項垂れてしまった。
「………副団長?」
「………………せ。」
「へっ?」
「今、何ていいまし…「ユーフェミーアを探せえ~!!」…って、探してどうするんですか。」
「見つけ次第、俺の元に連れて来て………結婚する。」
「「はあぁぁ~!!??」」
「うるさい、さっさと探すんだ!!」
驚く部下2人を叱責すると、副団長は何処かへと立ち去ろうとしていた。
「どこに行くんですか?」
「彼女の家に向かう。おそらくまだいるはずだ。」
と、格好つけたのだけれどこの時、副団長は忘れていた。 数日前に大家さんを脅し私を家から追い出して、家具やおばあちゃんの形見の品をすべて処分したことを空き家となった元我が家を見て、大家さんに指摘されるまですっかり頭の中から消えていた。
「何でそんな事したんですか?」と部下が問いただすと、「家さえ追い出されれば、俺の元に来ると思ったし、何より囲いこめると思った。」とのことだ。
そんなことは知らない私は行商人の馬車に乗せてもらい3日後、行商人と別れ、隣国行きの船に乗るため港町に到着した。
その同じ頃、副団長が私が行商人と一緒にいるとの目撃情報から港町に向かって馬を走らせていた。
このあと私は無事、副団長から逃れ隣国に辿り着いたのか、それとも副団長に捕まったのか。
その結末は神のみぞ知る。
ーーー-------------------------------登場人物
ユフィミナ
16歳 祖母の後を継いだばかりの占い師 作中では語らなかったが、褐色の肌に黒髪黒目の容姿の持ち主。 実は家を追い出された時、副団長の策略で宿にも泊まることができず広場で寝泊まりしていた。
近衛騎士団副団長
28歳 2年前に赴任したばかり
ユフィミナに一目惚れし、ちょっかいという名の嫌がらせと言いがかりをつけてきた。
銀髪碧眼のイケメン。 貴族の三男坊で王都にいた頃は女性にモテモテだった。 自己中心的な性格
若い騎士2人
最近配属されたばかり。副団長に憧れていたが、今回の件で失望する。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したので、元の自分に戻ります
しあ
恋愛
この国の王子の誕生日パーティで、私の婚約者であるショーン=ブリガルドは見知らぬ女の子をパートナーにしていた。
そして、ショーンはこう言った。
「可愛げのないお前が悪いんだから!お前みたいな地味で不細工なやつと結婚なんて悪夢だ!今すぐ婚約を破棄してくれ!」
王子の誕生日パーティで何してるんだ…。と呆れるけど、こんな大勢の前で婚約破棄を要求してくれてありがとうございます。
今すぐ婚約破棄して本来の自分の姿に戻ります!
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
夫は運命の相手ではありませんでした…もう関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
coco
恋愛
夫は、私の運命の相手ではなかった。
彼の本当の相手は…別に居るのだ。
もう夫に関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
婚約者の番
ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。
大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。
「彼を譲ってくれない?」
とうとう彼の番が現れてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる