聖女ではありません 

keima

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本編

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「俺はお前を認めるわけにはいかん!!」



洗濯したばかりのシーツやタオルを干しに行く途中、「オイッ!!」と言う声に振り替えると、見たことがない男の人が不機嫌そうに近づいてきて、私を指さすなり、冒頭のセリフを吐き出した。



「・・・」


「なんだお前のその反応は!?この高貴な俺様をバカにしているのか!!」

私の反応のなさが気に入らなかったらしく、向こうは地団駄を踏むながら叫ぶ。

「いえ、ただ驚いているだけです。あの・・・」


「あっ、何だ?」


「認めないって何をですか?」

「ハッ、しらばっくれる気か!?」


「しらばっくれるって「言い訳無用!!」

 いいわけも何も私まだ何も喋っていない。この人、私の話を聞く気がまったくないなぁ。 

「この王子たる私の名のもとにお前のような聖女はいらない。とっとと王宮ココから立ち去れ!!」


「聖女・・・?あの、何か勘違いしていますが、私はではなく、ですよ。」



「はっ、戯言を・・・」



「戯れ言って・・・あと…」

「何を騒いでいるのですか?」

声がする方を見ると、灰色のワンピースに白いエプロンの壮年の女性が駆けよってきた。

「あっ、け…「おぉ、侍女長、ちょうどいいところに来てくれた。急ぎ兵を呼んでこい。このニセモノの聖女をさっさと追い出してくれ。」

自分を「王子」と名乗った男はフンッと鼻息を荒くさせながら私を指差し、その女性--賢女長に向かって叫んだ。 
賢女長は不思議そうな顔をしたあと、何かを察したらしく、その男の人をジッと見たあと、フゥとため息をつくと、私の元に近づくと労るように肩を優しく叩いた。


「ここはいいですから、貴女は自分の仕事をやって下さい。」


「えっ!?あっ、はい。」

後ろで何かを言っている声がするが、気にせず私はシーツの入った籠を抱えて裏庭にむかった。 

「あっ、遅かったけど、どうしたの?。」

裏庭に着くと、私より先にシーツを干していた友人が声をかけてきてくれた。 


「何か、知らない男の人にお前を認めないって言われたんだけど・・・」


「えっ、何それ?何があったの。」

「実は………」

友人にさっき起こったことを話すと「はあっ?何そいつ怖っ!!」と叫んだ。

「そもそも聖女って何よ。あたしたちは賢女けんじょであって、聖女じゃないわよ。」

「そうよね。教会ならわかるけど、ココ病院だし、それに聖女って女性教皇様の別名べつめいだよね?」

賢女けんじょ。主に医師の診療の補佐や傷病者への看護、妊婦の助産の介助や母子の健康管理などを行う職業で、大昔はかしこ婦人ふじんと呼ばれていた。 
対する聖女とは国家中央聖教会機関バスティアンが数年前から女性神職者を教皇に即位することが認められて以来、女性の教皇様の事をそう呼ぶようになった。 

「あんまり気にしないほうがいいわよ。こういう患者もいるんだって勉強になったと思えばいいんだよ。」

「………そうだね。」

「よしっ、さっさと洗濯物干しちゃおう。」

「うん。」

友人のその言葉で、私は気持ちを切り替えて、籠の中に入っていた洗濯物に手を伸ばした。 






数時間後、待合室のほうが騒がしかったので覗きこむと、さっき「王子」と名乗っていた男の人が、両脇を警備兵に抱えられ連行されるところだった。 

「クソッ、離せ!!俺は王子だぞ!!お前らこんな事してただですむと思うなよ!!」

ジタバタと暴れる自称「王子様」に警備兵2人はひるむことなく、連れていった。

あとで賢女長から聞いたら、自称「王子様」は元は貴族だったが、戦争で家が没落し、それを未だに受け入れられず酒浸りの日々を送っていたが、最近になって自分は王子だと言いだし周囲とトラブルを起こしていた。
その後、自称「王子様」は医療刑務所に収容された。



あれから3年。自称「王子様」が今度は「勇者様」を名乗り、今年うちの病院に赴任したばかりの医師せんせいに絡んできて、関口一番に

「俺様はお前を認めない!!下っ端の治療師ヒーラーのくせに勇者たるこの俺様より目立ってるんじゃない!!」

そう言って先生に襲い掛かったのだけど、一緒にいた先輩医師の2人に取り押さえられ、警備兵に確保され現行犯で逮捕された。 

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作中の主人公の職業である賢女は今でいう看護師兼助産師です。

参考文献:『ヴィジュアル版 看護師の歴史』(クリスティン・ハレット著
国書刊行会 2014/05/21 )




2023.  4 

聖女の設定と台詞を少し変えました。 
    
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