転生ウサギは前世とはかかわりません!!

keima

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私は前世、貴族のお嬢様だった。 
国王を従兄弟に持つ厳しいが優しい父と母。真面目すぎる年の離れた兄や使用人達から可愛がられ、愛されていた。 
けれど、又従兄弟にあたる第1王子はいつの頃からか「私」を「悪女」「罪人」だと罵るようになった。
何を言っても何をしても、彼にとって「私」のやる事全てを悪い方にとらえてしまうため更に拗れていった。
その影響をうけた弟である第2王子や側近候補の貴族子息からも疎まれ嫌われるようになり、貴族学院でも第1王子のお気に入りの男爵令嬢からも敵意を抱かれ、嫌がらせを受けるようになった。
ある日、階段の踊り場で第1王子のお気に入りの令嬢数名が1人の女子生徒を取り囲んでいた。 黒髪茶色い瞳のおとなしい少女で、その目には怯えの色が浮かんでいた。令嬢の1人が女子生徒の肩を強く押し、女子生徒の身体がグラリと後ろに倒れそうになる。
「危ない!!」
とっさに私はその女子生徒のもとに駆け寄り、彼女を抱えたまま落ちていき、打ちどころが悪くあっけなく死んだ。

 それが今世、魔獣である黒ウサギとして生まれ変わった私の「前世」だ。
 魔獣は強い魔力を持ったまま死んだ人間の生まれ変わりとされ、私も魔力が他の人よりも強かったため、魔獣として生まれ変わったのだ。
 私の生まれた魔の森は人間だった頃、理不尽な言いがかりや濡れ衣を着せられて処刑された元令嬢だっ前世かこをもつ魔獣が多い。
前世の人間関係やドロドロの貴族社会から解放された私は魔の森で草や木の実を食べたり、日向ぼっこしながら、のんびりとした生活を送っていた。


『人間がこの森に入ってきたぞ。』
それを教えてくれたのは、この森の生まれで、時々王都や人間の住む村を見回っている魔鳥だった。
『王都から来た貴族のおぼっちゃん達なんだけど・・・なんか探しているらしく切羽詰まった感じだったぞ。』
『探しもの?』
『そうそう・・・ってあっ、アイツらだ!!』
ガサガサと草の揺れる音と人間の足音が聞こえてきて、私はとっさに木の下に穴を掘りそこに隠れた。
「本当に、ここであっているんですか?」
「間違いない。この森の中で彼女の魔力を感じた」
「兄上、私も感じました。この近くにいるはずです。」
「本当に・・・いるのか・・・アイツが・・・」
穴の中からこっそり様子を伺うとその声と集団の姿に目を見開き驚愕した。 
それは前世、私を「悪」と決めつけ疎み嫌っていたはずの第1王子達だった。
何故彼らがここにいるのか、それに探しているものとは、彼女とは一体誰なのか・・・と疑問に思うことはいっぱいあるが、今は彼らがこの場を去っていくのをジッと待っていた。 
いくら生まれ変わって姿が変わったとはいえ、なるべく彼らとは関わりあいたくなかった。
―――――早くこの場から去って。早く出て行って。
穴の中から私は必死に祈った。しばらくすると彼らの気配は消え、ゆっくり穴から出て周りを見渡すと彼らの姿は消えていた。
―――――よかった。もう行ったみたい。
ホッと一安心した私は両耳のお手入れをし始めたとき
「……フレイア」
前世の名前を呼ばれた瞬間、後ろから両耳を掴まれてしまった。 
「まさかウサギの姿になっていたとは…」
必死に抵抗しているのだが、第1王子の握力が強く抜け出せない。 

ーーイヤだイヤだコワイ。何で生まれ変わったのに私にかかわるの?誰か助けて。

「フレイア、僕は………」

『…………コイツを放せ。』
グルル……という唸り声をあげ、ユラリと鋭い目つきと牙を持ち、灰色の体毛に覆われた普通の犬よりも大きい狼が姿を現す。 
「なっ、魔狼………!?」
「グォォッ!!」
魔狼は勢いよく飛びかかると、第1王子に体当たりした。その拍子に私の両耳を掴んでいた手が離れると、魔狼は私の首元を軽く咥えた。 
『大丈夫か?』
私を気遣うように優しい声で魔狼は訪ねた。
『とにかくここを離れるぞ。』
『うん!!』
「待てっ!!フレイア~~~!!!!」
第1王子の叫び声を無視してそのまま私達はその場を走り去った。

「「殿下!!!!」」
「兄上!!」
私達が去ったあと、第1王子を探していた弟王子と側近候補達が戻って来た。
「フレイア、かならず君を・・・・・・」
第1王子は私達が去って行った場所をみつめながらそう呟いた。 


『………さっきのヤツら、お前の知り合いか?』
第1王子から逃げたあと、魔狼ーー仔兎の頃から面倒を見てくれたお兄ちゃんのような存在ーーが私にそうたずねた。
『………前世むかしの知り合い。』
私は魔狼に前世の自分のこと。そして自分の最期についてを話した。 
『ふぅ~ん。でもあの様子だとアイツら、またお前を探しに来るつもりじゃないか?』
『えっ!?ヤダヤダ~もう前世の縁は切れたんだからもうかかわりたくないの~!!今度こそかっくじつに殺される~!!』
ダンダンダンと地面を鳴らしながら叫んだ。 
『まあまあ、落ちつけ。』
そう言うと魔狼は私を毛づくろいして宥めてくれる。
『……よし、決めた。もしあの人達が近づいてきても、私はぜぇ~~~ったい近づかないしかかわらない!!徹底的に無視して逃げてやるんだから!!』
ダンッと足を鳴らして意気込む私に魔狼はふぅ……と溜息を吐きながら
『………まぁ、ほどほどにって言うか……まあ、頑張れよ~。まぁ、オレも何かあったら力を貸すから。』


このときはまだ知らなかった。  
彼らが私の死を受け入れられず、呪いで魔獣に姿を変えられていると思いこんでいることを
私を人間の姿に戻し王都に連れて帰ろうと躍起になる彼らに追いかけ回され、彼らに関わる面倒くさい事情に巻き込まれることになるのはもう少し先の話である。 
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