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「ルイサ、お前は従姉のルーナを病弱だからと言って部屋に監禁し虐めていたらしいな?そんな女との婚約なんてまっぴらごめんだ。俺はお前との婚約を破棄しルーナと婚約する!」
「うふふ・・・ごめんなさいル・イ・サ。」
「・・・・・・」
昼休み、友人たちと食堂で昼食を取っていたら元婚約者のジョナサン・マーベリックがここにいるはずのない従姉のルーナをお姫様抱っこして現れ叫んだ。
「・・・ねえルイサ、マーベリック様がお姫様抱っこしているあの女性って前言っていた例の従姉?」
唖然とする私に隣にいた友人がこそっと耳元でたずねた。 ドヤ顔している元婚約者の腕の中でニコニコと笑っているふわふわとしたロングヘアに庇護欲そそる愛らしい美少女は四歳年上の母方の従姉であるルーナだ。
「あの~、マーベリック様。なんで貴方は私の従姉を抱いているのですか?あと、2人はどういう関係なのですか?」
「フンッ、決まっているだろう・・・・私とルーナは運命の恋人だからだ!!」
「きゃぁぁ~ジョナサン様かっこいぃ~!!」
ドヤっとかっこつける元婚約者おバカをきゃあきゃあとルーナはおだてているが、彼らを見る周囲の目は冷ややかだ。というのも
ジョナサンの女癖の悪さはこの学校でも有名で、1か月前に1学年下の女生徒に手をだそうとしてその生徒の婚約者にフルボッコにされ停学処分になった上、この事件を知った父とジョナサンの父親との話し合いの結果、私とジョナサンの婚約も解消となったのだ。本人はそれを忘れているのだろうか。

「・・・・・・マーベリック様、私たちの婚約はすでに解消されています。破棄も何もありません。それと、私が従姉を虐めているだの、部屋に監禁しているという事実はありません。」

「ルイサ酷い!いくら私が嫌いだからってそんな冷たい事いうなんて!!」

「ルイサ貴様・・・・優しいルーナに向かってなんだその態度、お前は彼女の父親を使って3年間学校に通学させない様部屋に監禁させ、鞭で打つなどの虐待をしていたのだろう。彼女の身体には無数の痣があるんだぞ!!」

ジョナサンがそう叫んだ瞬間、周囲がザワザワと騒ぎだした。その反応にジョナサン達は計画通りと思っているのかニヤリと笑った。
それよりも今、聞き捨てならないことを言ったよね。


「・・・・・・・ルーナの身体を見た・・・ということは・・・・マーベリック様、もしやルーナと身体の関係を持ったのですか・・・?」

ひくひくと顔が引きつらせながらジョナサンに訪ねた。すると、ジョナサンは何を思ったのかふんっと鼻息を荒くさせながらこうほざいたのだ。

「ふんっ、それがどうした。俺に抱かれなかったのが悔しいか。残念だな。俺とルーナはすでに身も心も運命によって結ばれているんだよ!!」

はいアウトーーーーーー!! と心の中で叫びながら、バンッとテーブルをたたくと、

「・・・・伯父様から聞いたけど、ルーナあんたお医者様にも行っていないうえに薬も飲んでいないんですって?」

「そ・・・そうだけど・・・・?」

それの何が悪いの?という顔のルーナから視線を外すと、今度はジョナサンに目を向ける。

「マーベリック様、差し出がましいとは思いますがすぐにでも病院にいったほうがよろしいですよなぜならば・・・・・・・・・ルーナはクピドの病をお持ちだからです。」

「ク、クピドの病・・・だと・・・?」

クピドの病とは、性交渉によって感染する性病のことだ。 感染初期は特に症状は出ないのだが、3ヶ月が過ぎると体に発心のような赤い痣が現れたり、倦怠感に襲われたりと症状が現れ始め、末期になると歩行障害が起きたり、心臓や脳の病気を発症する可能性だってある。

「ルーナは3年前、不特定多数の男子生徒と関係を持ち、クピドの病に感染し学校を退学し自宅で療養していました。」

父子家庭で育てられたルーナはその愛らしさで昔から男の子達にチヤホヤされていたため、13歳のときにはすでに複数のボーイフレンドをつくっていたが、調子にのったせいで学校に入学してすぐ複数の男子生徒と身体の関係を持ち、そこから感染してしまい、学校を退学されてしまったのだ。退学後は自宅で家庭教師に勉強を見て貰いながら治療をしていたのだが、数か月前から通院先の病院に来ていない上、処方された薬も飲んでいないという事が判明した。

「う、うそだろ・・・・ルーナが・・・クピドの病・・・・」

顔を真っ青にしながらブツブツと呟くジョナサンの姿に私は真顔でこう言った。

「悪い事は言いません。即刻病院に行ってください。」

その後、私の言葉を聞いたジョナサンは病院で見て貰ったところ、ルーナからクピドの病をもらってしまい、治療をしてもらったが、この一件から学校も退学になり、両親からも勘当されてしまいその後の消息はつかめず、今回の件を知った伯父はルーナを問答無用で病院に入院させた。 

「うわあぁ~~ん。ごめんなさ~~い!!」

入院当日、ルーナは泣き叫びながら病院へと引き摺られていった。。

伯母様を亡くし、男でひとつでルーナを育ててきた伯父様のショックは酷く、「自分の育て方が間違ったせいで」と自分を責め続けていたが数年後、ルーナの入院先の担当看護師さんと親しくなり、数年後その人と再婚した。 

私はその後医学校に進学し、医師免許取得後、病院で働きながら貴族の令息や令嬢達に性教育の指導に力を注いだ。  

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