スプーンの魔術師 

keima

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前編 

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港町エストワールは観光業と漁業で成り立っている町である。この日、アレクサンダー・ガレムは食材の仕入れのために朝の市場を訪れていた。ふと周りを見ると、いつもならば1~2名で巡回している兵士の数がいつもより多いうえに何かを探しているのか、周りをキョロキョロと見回している。

(‥‥…何だアレ?何やってんだ?)

そんなガレムの疑問を解決してくれたのは、青物店の女将と魚屋の主人との会話だった。

「ねえ、聞いた?王都の孤児狩り。」

「ああ、確か王族が率先して王都にいる孤児の子供を捕まえて牢獄に閉じこめてるんだろう。しかも教会や孤児院だけじゃなく、寄宿学校の生徒まで対象にされているみたいだぞ。」

「可哀そうにね…何も悪い事していないのに、王族のやる事は分からないわねぇ。」

「しかも、孤児の1人が逃げだしたみたいで第3王子とその側近が今、血眼になって探しているって。」

Г兵士がやけに多いのはそういうことかい。にしても、たった1人のためにそこまでするとはな……本当に何考えてンだろうなぁ。」

国民のあいだでは王族の評判はあまりよくない。というのも20年前、国王の長男である第1王子が妃がいるにも関わらず、平民の娘に傾倒しその娘を妻にするため、父王や教会の許可なく勝手に離婚した。これを知った国王は長男の勝手な行動に激怒し、第1王子を廃嫡し幽閉した。さらにその10年後、第2王子が友好国の貴族令嬢を手篭めにしようとして彼女を庇った侍女と揉み合いになり怪我を負わせた。幸い軽傷で済んだが、令嬢や他の貴族からの怒りを買い、王維継承権を剥奪された上、辺境の地に飛ばされてしまった。 
このような不祥事から国民の王族に対する評判はすこぶる悪かった。

「…孤児狩りね・・・ん・・・?」

ガレムは建物と建物の隙間に目をやる。 そこは薄暗く、大人おとな1人分は通れる道となっていた。その影に潜むように建物の壁に凭れて10歳くらいの少女が蹲っていた。


「きみ。」

声をかけると、ビクリと小さな肩がはねた。おそるおそる顔を上げると、ブラウンの前髪の間からのぞくダークブルーの瞳がガレムを不安そうにみつめている。少女の目線に合わせて、ガレムは膝を曲げた。 

「あっ、おどかしてごめんね。そこで蹲っているからどうしたのかなと思って声かけたんだけど、どこか痛いのかい?」

フルフルと、頭を横に振った。

「……おじさん、誰?」

「おっ、おじさん………!?」
その一言にガンッと頭に岩が当たったのではないかというほどの衝撃に思わず項垂れ「俺、まだ24なんだけど……」と嘆いた。

(………変なおじさん……)

自分の一言に落ち込むガレムを少女は警戒心を抱きながらも不思議そうに見つめていた。 そのとき………… 


くきゅるるるるぅ~~ 

お腹が鳴る音が響きわたり、少女は顔をまっ赤にし、俯いてしまった。


「……お腹すいてるの?」

ガレムの問いかけに少女はコクリと頷く。

「あのさ、よかったらウチの店に来るかい?」

「お店……?」

「うん。あっ、別に怪しい店じゃないよ。友人とその妹とはじめたばかりの小さな飲食店なんだけど……」

ジィッと訝しげな少女の瞳にガルムはしどろもどろになりながら必死に説明する。 

「おじさんって一体……?」

少女の問いにガレムはニカッと笑ってこう答えた。

「俺の名前はアレクサンダー・ガレム。一応、料理人シェフだよ。」
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