お江戸のボクっ娘に、若旦那は内心ベタ惚れです!

きぬがやあきら

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古着屋に妖怪現る

1話

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障子の向こうから差し込む陽の明るさで、惣一郎は目を覚ました。
目を開けると、見覚えのある天井の木目が並んでいて、自分の部屋にいるのだとわかる。
昨日は酷い一日だった。思い出しても、ぞっとする。
昨夜、怪我だらけの惣一郎が帰ってきて、三河屋は大騒ぎになった。
ほどなくして悠耶が訪ねて来た。
だが、自分の怪我の責を問われては困るので一先ず追い返すことにした。
身体中ずきずき痛く、喋ることも辛かった。
でも頭が落ち着いていたのは救いだ。
実際は自分がどのように家まで帰って来たのか、とんと記憶にない。
悠耶に聞くのが一番だった。
だが、蕨乃は自分の存在を明かす相手は限られていると言っていた。家人が大勢わんさと集まっている場所でできる話ではない。
悠耶の長屋はすぐ近くだったが、物騒な事件の直後だ。
下男に送らせて、一つ案件を片付けた。
それからすぐに医者の診察を受けた。不本意だったが銀八に「坊ちゃん」と罵られた場面を思い出して、不愉快になった。
医者の見立てでは、怪我の具合は軽くもないが、重傷でもない。頭の傷も含めて安静にしていれば治るだろうとの診断だった。
衣類に血が多く付着している基は、怪我が頭部であるからだそうだ。
惣一郎が思うよりも自身の体は頑丈にできていた。
後に頭に腰巻きが巻かれていた件を知り、惣一郎は苦笑した。だがそれで、結局は悠耶に助けられたのだろうなと想像した。
体を起こし、背伸びをすると、体のあちこちが悲鳴を上げる。頭の傷はやや熱っぽい印象だが、動けるのなら、このままただ安静にしているのも馬鹿らしい。
着替えようと行李の側まで行こうとする。
だが、二、三歩這うのがやっと。
もたもたしているうちに母の菊がやって来た。
「良かった。目が覚めたんだね。長く寝ていたから憂慮していたんだ。調子はどうだい」
「おっ母さん。俺はそんなに長く寝ていたかい?  まだ明五ツ刻(午前六時半)くらいじゃないの?」
「あんた、丸一日ずーっと寝ていたんだよ。今は朝だけど」
「えっ、そんな馬鹿な!」
「心配ないから休ませてあげなって、お医者様が言うから、放っておいたんだ。まさか一晩またいじまうとはね」
 いつも通りの対応の惣一郎を見て安心したのか、菊は器量の良い顔を綻ばせた。惣一郎は母親似だ。
「今、薬湯を持ってくるよ。無理せず、もう少し寝ていなよ」
「丸一日、寝ていたんだろう?  たっぷり休んだよ。そろそろ外へ行かないと体がなまっちまう」
「そんなザマで何を言ってるんだい。ろくに歩けもしないくせに。あんたも聞いていただろう?  安静にするのが一番の薬だって」  
惣一郎は行李に向かって四つん這いになっている。動けない惣一郎を菊は手で制した。
代わりに着物を取り出してくれる。
「あんたがこんなやんちゃをする子だと、おっ母さんは知らなかったよ。……そうそう、あの子とは、どういう付き合いなんだい」
わざわざ途中で言葉を切って、菊は尋ねた。
あの子と言われて一番に頭に浮かんだのは悠耶の顔だ。だが母の言う〝あの子〟が悠耶だとは限らない。
惣一郎は菊がどういう意図で言葉を口にしているのかを慎重に探ろうとした。
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