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ルシアン様を訪ねる理由
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「お勉強を邪魔してはいけないと思い直し、待っておりましたの」
「え? じゃあ……。いや、こんな廊下で待たずとも、明後日には課業後の茶会があるのだから、その時にいくらでも……」
「どうにも気が急いてしまって。申し訳ありませんでした」
迷惑そうな顔色を見てとって、わたくしはしおらしく頭を下げた。
ルシアン様はバツが悪そうに視線を逸らして、それからわたくしを教室へ招き入れる。
「すまない。一つ片付けたい用事があるんだ。椅子に掛けて、待っていてくれるか」
「お約束もなしにお伺いしてごめんなさい。そのご用事、わたくしにできることでしたらお手伝いして差し上げたいのですが」
「いや、すぐに済むから待っていてくれ。すぐに、な」
ルシアン様は手早く机の上を片付けると、足早に部屋を出て行った。
わたくしはありがたく、椅子を拝借し、ルシアン様の帰りを待つことにする。
窓の外を眺めれば、噴水の周辺をうろうろしていたマリアナ嬢は誰かに微笑みかけ、バルコニーの影に入り見えなくなった。
1階に降りたルシアン様に呼ばれたのだろう。
ルシアン様が教室に戻って来るまで、時計を見ればかかった時間は10分足らずだった。
しかし、マリアナ嬢と2人で何を話しているのだろうと考えると、ほんの少しだけ気分が落ち込んだ。
いや、面白くない、と表現すればいいだろうか。
「待たせて悪かった。オデット……」
戻って来たルシアン様は、小脇に厚みのある書籍を抱えている。
行く時には携えていなかったものだ。
ルシアン様は何か言いたげに目を上げ、しかし、口ごもった。
わたくしは小首を傾げて微笑み、お話を聞く姿勢を見せる。
ルシアン様が何を仰りたいのかが、何となく察せられたからだ。
「ルシアン様、わたくしに何か確かめたいことがおありではありませんか?」
「何故、それを……いや、うん、そうだな、君は……。話が早いのは助かる」
「差し支えなければ伺います」
ルシアン様はそれでも、一度は躊躇った。しかし、キリ、と目元を引き締めると、やや固い口調で切り出した。
「君はマリアナ・グランド嬢を知っているか」
「ええ、隣のクラスですもの。存じておりますよ。それに、近頃は良く噂を耳にします。ルシアン様と懇意になさっていると」
知らずのうちに、言葉に棘が混ざって、わたくしの表情も固くなる。
「別に、懇意にはしていない。多少、共通の話題があるだけだ。それでだな、今……階下で彼女と会ったのはもう分かっているようだから、単刀直入に聞く。君は、 ”マリアナ嬢に嫌がらせをするよう指図した” のか?」
「お答えする前に、お聞かせください。ルシアン様はわたくしが、仰ったような行為をしたと、お思いですか?」
マリアナ嬢は、真偽も不確かな情報を、ましてやわたくしの否定した行為をルシアン様に告げ口した。
ルシアン様がマリアナ嬢の元へ向かった時点で、その話をする可能性には気づいていた。
だから、動揺はしない。
「え? じゃあ……。いや、こんな廊下で待たずとも、明後日には課業後の茶会があるのだから、その時にいくらでも……」
「どうにも気が急いてしまって。申し訳ありませんでした」
迷惑そうな顔色を見てとって、わたくしはしおらしく頭を下げた。
ルシアン様はバツが悪そうに視線を逸らして、それからわたくしを教室へ招き入れる。
「すまない。一つ片付けたい用事があるんだ。椅子に掛けて、待っていてくれるか」
「お約束もなしにお伺いしてごめんなさい。そのご用事、わたくしにできることでしたらお手伝いして差し上げたいのですが」
「いや、すぐに済むから待っていてくれ。すぐに、な」
ルシアン様は手早く机の上を片付けると、足早に部屋を出て行った。
わたくしはありがたく、椅子を拝借し、ルシアン様の帰りを待つことにする。
窓の外を眺めれば、噴水の周辺をうろうろしていたマリアナ嬢は誰かに微笑みかけ、バルコニーの影に入り見えなくなった。
1階に降りたルシアン様に呼ばれたのだろう。
ルシアン様が教室に戻って来るまで、時計を見ればかかった時間は10分足らずだった。
しかし、マリアナ嬢と2人で何を話しているのだろうと考えると、ほんの少しだけ気分が落ち込んだ。
いや、面白くない、と表現すればいいだろうか。
「待たせて悪かった。オデット……」
戻って来たルシアン様は、小脇に厚みのある書籍を抱えている。
行く時には携えていなかったものだ。
ルシアン様は何か言いたげに目を上げ、しかし、口ごもった。
わたくしは小首を傾げて微笑み、お話を聞く姿勢を見せる。
ルシアン様が何を仰りたいのかが、何となく察せられたからだ。
「ルシアン様、わたくしに何か確かめたいことがおありではありませんか?」
「何故、それを……いや、うん、そうだな、君は……。話が早いのは助かる」
「差し支えなければ伺います」
ルシアン様はそれでも、一度は躊躇った。しかし、キリ、と目元を引き締めると、やや固い口調で切り出した。
「君はマリアナ・グランド嬢を知っているか」
「ええ、隣のクラスですもの。存じておりますよ。それに、近頃は良く噂を耳にします。ルシアン様と懇意になさっていると」
知らずのうちに、言葉に棘が混ざって、わたくしの表情も固くなる。
「別に、懇意にはしていない。多少、共通の話題があるだけだ。それでだな、今……階下で彼女と会ったのはもう分かっているようだから、単刀直入に聞く。君は、 ”マリアナ嬢に嫌がらせをするよう指図した” のか?」
「お答えする前に、お聞かせください。ルシアン様はわたくしが、仰ったような行為をしたと、お思いですか?」
マリアナ嬢は、真偽も不確かな情報を、ましてやわたくしの否定した行為をルシアン様に告げ口した。
ルシアン様がマリアナ嬢の元へ向かった時点で、その話をする可能性には気づいていた。
だから、動揺はしない。
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