親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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お茶会編。

91話『密談 6』

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※エドワード視点です。


「それで、その後はどうなったの?」



妹に続きを促されたので僕は続ける。



「フードの女リリアが、ナナリーと僕を牢から連れ出したんだ。

 そして、ナナリーとリリアが向かった場所は、

 僕の母上と父上がいる政務室だった。

 そこには、エレノアさんとジェバース侯爵もいた。



 あまり覚えていないけれど、リリアとエレノアさんと母上が何か話していた。

 声を荒げるリリアが母上に飛び掛って……。

 それを、エレノアさんが切り伏せたんだ」



喉が渇き、ティーカップに残っていた紅茶を飲み干して、一息つく。



「リリアが妖精のリリンを食って、真っ赤な化け物に変わった。

 妖精を食った女の傷はみるみる回復していったよ。

 あとは、母上とエレノアさんになにか叫んでいた。

 何をしゃべっているのか分からなかったけれど、あれは日本語だったと思う。

 僕は記憶を取り戻す前だったから、会話の内容は覚えていないけれど」



深呼吸をする。

知らずに、呼吸と動機が荒くなっていたようだった。

なにせ、ここらへんから話す内容はとても話し辛い。

自分の死ぬ瞬間の話なのだから。

僕は震える手を見つめる。

きっと、顔色も悪くなっているだろう。



妹が気を使って紅茶を新しく入れなおしてくれた。



「ありがとう」 「すまない」



僕とベリアルはお礼を言う。 妹は微笑んで頷いてくれた。

アップルティーの香りを嗅いで落ち着く。

温度もちょうど良かった。


「あとは、狂乱状態のリリアが真っ黒い魔力を濃縮した波動をエレノアさんと

 母上に向かって放った。

 母上をかばったエレノアさんと父上にはそれぞれ星霊がついている。

 2人を素通りして、波動は母上に命中した。

 母上の右半身から下は石化の呪いでほとんど動かない。

 車椅子からも降りれないし、避けられる訳がなかったんだ。



 波動を放った化け物は高笑いしながらその場で崩れて灰になったよ。

 自分の放った魔法に耐えられなかったんだろうと

 エレノアさんが星霊アスカに教えてもらっていた。


 母上に命中したのは呪いの波動だった。


 母上は、呪いの効果を弱めて起動を遅くする魔法具を

 両腕に着けているから、リリアの呪いはすぐには発動しなかったよ。

 けれど、魔法具の効果で耐えられるのはあとほんの僅かの時間だけだった。



 呪いを説く方法は『呪い反射の白魔法のリフレクト』を使うしかなかった。

 でも、その受け皿がこの世にすでにいない。

 そう話したら、アスカとノームが教えてくれた。

 『白魔法のリフレクト』は

 『対象の呪いを別の対象に移し変える魔法』であること。



 魔法の真実を知った僕とナナリーは本当にショックだったよ。



 僕は、こんな状態を起こしてしまった責任を感じて、

 母の呪いを全て受け持つ決心をしたんだ。



 エミリアを死なせてしまった。



 だから、罪滅ぼしの意味もあったのかもしれない……。



 ナナリーも泣きながら、僕に魔法を使った。

 けれど、呪いの波動は強すぎて、僕だけでは受け持つ事ができなかった。

 
 ナナリーも、僕と同じ様に罪滅ぼしをしたいと、呪いをその身に移した。

 こんな事態になるなんてと泣いていた……。

 
 僕達は、何の罪もないエミリアに罪を被せて死なせてしまったから。


 呪いの効果はすぐに発動して、僕とナナリーは灰に変わっていった」



灰に変わる瞬間の感覚は今でも覚えている。

自分という存在が何かに食いつぶされるかのような、

存在そのものが世界から抹消されるような感覚だった。



僕は、恐怖を振り払うように首を振った。

心配そうに僕を見る妹とベリアルに視線を戻して言う。



「そして、気がついたら、タイムリープしていて、

 赤ん坊の姿に戻っていたんだ。 僕の話はここまでだよ。

 何か気になる点とか聞きたいことがあるなら、聞いてくれ」



妹が何か考える仕草をして、僕に問いかける。





「私の気になる点は、

 ゲームではフードの女のリリアなんて居なかったわ。

 お兄ちゃんの1回目で裏で暗躍していたのがリリアで、

 フードの女性がリリーナで間違いない……?」



自分で言っていて疑問を浮かべるエミリア。

それに答えたのはベリアルだ。



「それで合っている」



僕も頷いた。

そしてまだ告げてない内容も話す。





「エミリア。 僕は言ったはずだよ。

 今回と前回はまったく違う展開になっているって」



キョトンとするエミリアに苦笑いをする。



「僕はね、2回目である今回。

 フードの女、リリアを見殺しにしたんだ」



妹は驚いた顔をしている。僕は詳しく話した。

2回目である今回で僕がまったく違った人生を歩んでいることを。


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