166 / 195
1章【暗黒討伐編】
第165話・繋がり
しおりを挟む
「──てなワケでさ、」
話を一区切りし、ヴィルジール達の様子を窺う。
1時間はぶっ通しで思い出話を語った俺だが、まだまだ話したい事が沢山ある。
しかし、既にサンクイラの頭がパンクして放心状態で、シルビアは情報過多による頭痛に悩まされていた。
唯一ヴィルジールは、何度か聞き返したりして話に食らいついている様子だが⋯⋯。
「⋯⋯以前の俺が、お前に強い興味を持っていたのは、アリアって奴の仕業だったと。
それは、クローネでの迎撃戦の時にいたバルドールって男も同様で、俺とアイツが偶然出会した事で お前の“取り合い”になった⋯⋯って訳か?」
「まぁそうなるな。彼女曰く、『君の成長を促す為に、ある程度の実力者が接触してくる様に仕組んでいた』という事らしいが⋯⋯」
「そんな勝手な⋯⋯ってのは言いてぇが、今までの話が真実なら、お前が強くならなければ世界が終わるって訳だしな⋯⋯」
「う~ん⋯⋯」
男二人。首を傾げて腕を組む。
俺としては、ヴィルジールに『ふざけんじゃねぇ!』と殴られる覚悟だったが⋯⋯
当時の状況を冷静に分析されると、幼女の行動も真っ直ぐと否定が出来ない事に気付かされるな。
まぁとはいえ、思考と行動に勝手に干渉されたって事実には変わりないし、逆に殴られた方がスッキリする気がする。
「なぁ、ヴィル──」
「いえ、結果は変わらなかったと思うわ」
不意に、シルビアが口を開いた。
やっぱり殴ってくれと言いたかったんだが、『結果は変わらなかった』とは一体どういう意味だ⋯⋯?
「猛紅竜。彼はね? 魔物に対しては、元から強い興味を持つ事がある性格なの。
その性格が表に出るのはごく稀だけど、それでも私は彼のそんな姿を何度か見た事があるのよ」
「し、シルビア? 俺ってそんなトコあったのか?」
「ええ、そうよ。私は、貴方の本性が現れる度に、周囲の人々が貴方から離れて行かない様にしてたんですもの」
ヴィルジールは、疑問げな表情を浮かべる。
会話の内容から察するに、幼女がどうこうするまでも無く、ヴィルジールは微かな狂気を秘めていたと。
それは、彼本人としては自覚の無い狂気であったが、いつも傍に居るシルビアとしては感じれる程のものだった。
そして彼女は、その狂気が顕なったヴィルジールが周囲から糾弾されない為の努力をしていた。
大まかに話をまとめるなら、こんな感じだろうか?
シルビアの努力にヴィルジールが気付いていない点には⋯⋯まぁツッコまなくてもいいか。
そこら辺は二人の関係性の話だ。俺が兎や角言う筋合いは無い。
「──ねぇ、覚えてる? 猛紅竜がまだ銀灰竜と呼ばれていた頃、個体名が銀槍竜へと変更された時の事を」
「え⋯⋯?」
「あの時、“本当の貴方”を目にしたサンクイラは、酷く困惑していたのよ?
あと一歩でも踏み込んでいれば、彼女も確実に貴方に呑まれていたと思うわ。
それ程までに、貴方の内側にある存在は強力なんだから」
「そ、そうか⋯⋯。ごめん、シルビア。ありがとう」
「バカね、私と貴方の仲でしょ?」
「シルビア⋯⋯。お前だけだ、俺なんかの世話が出来んのは」
「⋯⋯ばっ、バカっ/////」
うおっ、途中までシリアスかと思ってた。
唐突にイチャコラしやがってコイツら。
「──まぁ、兎に角、ね? 負い目を感じているのは察せれるけど、猛紅竜は気にしなくてもいいと思うわ」
「ばっ、バカっ/////」
「⋯⋯は? なによ急に?」
「ゴメンって」
照れ隠ししたら、真面目なカオされちゃった。
久し振りに母親に頭が上がらない感覚を思い出したぜ。
いやしかし、『ヴィルジールには元から狂気があった』か。
それも、他人がそれに呑み込まれる程のものであると。
⋯⋯思えば、バルドールは初めから異様な雰囲気だったが、ヴィルジールは少し変わっていたな。
初めて会った頃の彼は、俺に闘争的な興味があったのかすら疑問になる程、普通の冒険者の男だった。
いや。寧ろヴィルジールは、“普通過ぎた”のかもしれない。
本来の彼の狂気に加え、幼女の手による思考への干渉⋯⋯。
それは恐らく、“狂気の増幅”という結果を生み出した。
だからこそ彼は、それを必死に押さえ込み、あたかも普通であるかの様な自分を装った。
しかし、それが偽りの自分である事に変わりは無く、彼の内側で狂気は増幅し続けていた。
そして、クローネでの迎撃戦の時。俺とバルドールの戦いという“刃”が、張り詰めていた彼の“糸”を断ち切った──。
⋯⋯あくまでこれらは、俺の予想でしかない。
だが、先程のシルビアの台詞と、今までのヴィルジールとの遣取りを思い返すと、全てが上手く繋がる気がする。
「──少し疲れたな。珈琲でも飲むか?」
「ん? あぁ、そうだな。貰うぜ」
席を立ったヴィルジールの背を、後ろから眺める。
なんというか、以前と違って安心感のある人物に見えるな。
前は前で、他の冒険者には頼りにされていたのだろうが⋯⋯
俺からすれば、僅かな殺気をずっと放っている様な奴だった訳だしな。
幼女の魔法が解けた今、狂気は鳴りを潜めているだろうし、随分とスッキリした姿に感じられるぜ。
「珈琲、シルビアも飲むか?」
「えっ?! い、いや、私はいいわよ⋯⋯」
「ン? そうか? 美味い珈琲なんだけどなぁ」
⋯⋯あ、今の会話デジャヴだな。
前に、ガバンとも似た遣り取りをしていた気がするぞ。
確か、ガバンが『珈琲自体は美味い』なんて言ってた記憶があるし、やはりヴィルジールの淹れ方とかに問題が──
「⋯⋯ん?」
その時、ふと感じた。
ヴィルジールが用意している珈琲の、その香りを。
同じだ。この香りは、俺が白厳(はくげん)から貰った珈琲と全く同じ香りをしている。
二人が同じ珈琲豆を持っていただけの、単なる偶然とも思えるが⋯⋯。
記憶を辿ると、以前に二人が発した台詞というのがピッタリと噛み合うのだ。
──知り合った人には、お渡ししているんですよ──
──知り合いから貰ったんだが、コイツが美味いんだ──
うーむ⋯⋯。やはり、違和感は無いよなぁ。
まぁ詳細を探るのも面倒だし、直接本人に聞いた方が手っ取り早いか。
「──なぁ、ヴィルジール?」
「なんだ? 砂糖は多めか?」
「いや、そうじゃなくて⋯⋯。アンタって、“黒の中折れ帽とスーツを着た男"が知り合いにいたりするか?」
「⋯⋯!? 白厳を知ってんのか⋯⋯!!」
驚愕した表情で、ヴィルジールは動きを止める。
どうやら、本当に白厳を知っていた様だ。
「なに? そのハクゲンって人?」
「いや、ほらさ。シルビアなら知っているだろ? 俺が違法組織の摘発やら、その被害者の保護やらをやってたの」
「えぇ、まぁ⋯⋯」
「そん時に縁あって知り合った男なんだが、マジで人柄が良くてさぁ。腹を割って話せるのは、お前と白厳くらいだと思ってる程の奴なんだよ。
まさか、コイツまで知ってるとはなぁ。流石、あの白厳だ」
親指で俺を差し、ヴィルジールは何度も頷く。
俺としては、彼らが知り合いだった事より、ヴィルジールの過去の経歴の方が気になってるんだが⋯⋯。
『違法組織の摘発やら、その被害者の保護やらをやってた』って、つまりは警察みたいな仕事をしていた訳か?
なんだっけ⋯⋯前にギフェルタで会った⋯⋯。あぁそうだ、ギルバド・アレクターだ。
彼みたいな感じで、表向きは冒険者だが、裏ではギルドの諜報員だった感じなのか?
でもそんな雰囲気がある男には──。⋯⋯いや、全く違和感が無かった訳でも無かったか。
あの時⋯⋯。そう、俺が初めてベルトンに来て、所持金を作ろうとテュラングルの鱗を質屋で売ろうした時だ。
手間が省ける様、ヴィルジールに質屋との交渉を任せたが、その時に彼は言っていた。『裏市場とかでなら言い値で売れる代物だぜ』と。
まるで、世間の闇の面を知っているかの様な台詞だったが、今の会話が答え合わせになったな。
「──成程。白厳が関わってるのなら、お前が置かれている状況も多少は理解出来たぜ」
淹れかけの珈琲を台所に置き、ヴィルジールが部屋を出る。
その徐な行動に、俺は勿論 シルビアも首を傾げた。
ヴィルジールが部屋を出ていってから数十秒後。再び姿を現した彼は、緋黒の両剣を携えた姿であった。
「俺がやるべき事が、たった今、決まった。
だが⋯⋯紅志。まずは残っている俺達の問題を片付けよう」
「え? ン?? ⋯⋯えッ!? 今、俺の事を──」
「いいから、着いてこいよ」
言われるがまま、俺は彼の後を追った。
続けてシルビアも追って来ようとしたが、『男二人で話したい』と、ヴィルジールが彼女の同行を拒んだ。
何が何だか分からぬまま、ヴィルジールの後ろを歩く俺。
そして、疑問が残ったまま辿り着いたのは──
「思い出すか? シルビアとの試合を」
「⋯⋯ハッ。忘れた事なんかねぇよ」
ベルトン・特別訓練場。
静寂が支配するその場所で、ヴィルジールが両剣を構えた。
⋯⋯成程。そういえば、あの時は幼女の横槍が入って決着がついていなかったな。
「──殺す気で来いよ、ヴィルジール」
半身に構え、正面を見据える。
10メートル先、一人の冒険者、緋黒の両剣──。
拳に魔力を込めた俺は、ゆっくりと深呼吸をする。
刹那の起爆。男の戦いが始まった。
話を一区切りし、ヴィルジール達の様子を窺う。
1時間はぶっ通しで思い出話を語った俺だが、まだまだ話したい事が沢山ある。
しかし、既にサンクイラの頭がパンクして放心状態で、シルビアは情報過多による頭痛に悩まされていた。
唯一ヴィルジールは、何度か聞き返したりして話に食らいついている様子だが⋯⋯。
「⋯⋯以前の俺が、お前に強い興味を持っていたのは、アリアって奴の仕業だったと。
それは、クローネでの迎撃戦の時にいたバルドールって男も同様で、俺とアイツが偶然出会した事で お前の“取り合い”になった⋯⋯って訳か?」
「まぁそうなるな。彼女曰く、『君の成長を促す為に、ある程度の実力者が接触してくる様に仕組んでいた』という事らしいが⋯⋯」
「そんな勝手な⋯⋯ってのは言いてぇが、今までの話が真実なら、お前が強くならなければ世界が終わるって訳だしな⋯⋯」
「う~ん⋯⋯」
男二人。首を傾げて腕を組む。
俺としては、ヴィルジールに『ふざけんじゃねぇ!』と殴られる覚悟だったが⋯⋯
当時の状況を冷静に分析されると、幼女の行動も真っ直ぐと否定が出来ない事に気付かされるな。
まぁとはいえ、思考と行動に勝手に干渉されたって事実には変わりないし、逆に殴られた方がスッキリする気がする。
「なぁ、ヴィル──」
「いえ、結果は変わらなかったと思うわ」
不意に、シルビアが口を開いた。
やっぱり殴ってくれと言いたかったんだが、『結果は変わらなかった』とは一体どういう意味だ⋯⋯?
「猛紅竜。彼はね? 魔物に対しては、元から強い興味を持つ事がある性格なの。
その性格が表に出るのはごく稀だけど、それでも私は彼のそんな姿を何度か見た事があるのよ」
「し、シルビア? 俺ってそんなトコあったのか?」
「ええ、そうよ。私は、貴方の本性が現れる度に、周囲の人々が貴方から離れて行かない様にしてたんですもの」
ヴィルジールは、疑問げな表情を浮かべる。
会話の内容から察するに、幼女がどうこうするまでも無く、ヴィルジールは微かな狂気を秘めていたと。
それは、彼本人としては自覚の無い狂気であったが、いつも傍に居るシルビアとしては感じれる程のものだった。
そして彼女は、その狂気が顕なったヴィルジールが周囲から糾弾されない為の努力をしていた。
大まかに話をまとめるなら、こんな感じだろうか?
シルビアの努力にヴィルジールが気付いていない点には⋯⋯まぁツッコまなくてもいいか。
そこら辺は二人の関係性の話だ。俺が兎や角言う筋合いは無い。
「──ねぇ、覚えてる? 猛紅竜がまだ銀灰竜と呼ばれていた頃、個体名が銀槍竜へと変更された時の事を」
「え⋯⋯?」
「あの時、“本当の貴方”を目にしたサンクイラは、酷く困惑していたのよ?
あと一歩でも踏み込んでいれば、彼女も確実に貴方に呑まれていたと思うわ。
それ程までに、貴方の内側にある存在は強力なんだから」
「そ、そうか⋯⋯。ごめん、シルビア。ありがとう」
「バカね、私と貴方の仲でしょ?」
「シルビア⋯⋯。お前だけだ、俺なんかの世話が出来んのは」
「⋯⋯ばっ、バカっ/////」
うおっ、途中までシリアスかと思ってた。
唐突にイチャコラしやがってコイツら。
「──まぁ、兎に角、ね? 負い目を感じているのは察せれるけど、猛紅竜は気にしなくてもいいと思うわ」
「ばっ、バカっ/////」
「⋯⋯は? なによ急に?」
「ゴメンって」
照れ隠ししたら、真面目なカオされちゃった。
久し振りに母親に頭が上がらない感覚を思い出したぜ。
いやしかし、『ヴィルジールには元から狂気があった』か。
それも、他人がそれに呑み込まれる程のものであると。
⋯⋯思えば、バルドールは初めから異様な雰囲気だったが、ヴィルジールは少し変わっていたな。
初めて会った頃の彼は、俺に闘争的な興味があったのかすら疑問になる程、普通の冒険者の男だった。
いや。寧ろヴィルジールは、“普通過ぎた”のかもしれない。
本来の彼の狂気に加え、幼女の手による思考への干渉⋯⋯。
それは恐らく、“狂気の増幅”という結果を生み出した。
だからこそ彼は、それを必死に押さえ込み、あたかも普通であるかの様な自分を装った。
しかし、それが偽りの自分である事に変わりは無く、彼の内側で狂気は増幅し続けていた。
そして、クローネでの迎撃戦の時。俺とバルドールの戦いという“刃”が、張り詰めていた彼の“糸”を断ち切った──。
⋯⋯あくまでこれらは、俺の予想でしかない。
だが、先程のシルビアの台詞と、今までのヴィルジールとの遣取りを思い返すと、全てが上手く繋がる気がする。
「──少し疲れたな。珈琲でも飲むか?」
「ん? あぁ、そうだな。貰うぜ」
席を立ったヴィルジールの背を、後ろから眺める。
なんというか、以前と違って安心感のある人物に見えるな。
前は前で、他の冒険者には頼りにされていたのだろうが⋯⋯
俺からすれば、僅かな殺気をずっと放っている様な奴だった訳だしな。
幼女の魔法が解けた今、狂気は鳴りを潜めているだろうし、随分とスッキリした姿に感じられるぜ。
「珈琲、シルビアも飲むか?」
「えっ?! い、いや、私はいいわよ⋯⋯」
「ン? そうか? 美味い珈琲なんだけどなぁ」
⋯⋯あ、今の会話デジャヴだな。
前に、ガバンとも似た遣り取りをしていた気がするぞ。
確か、ガバンが『珈琲自体は美味い』なんて言ってた記憶があるし、やはりヴィルジールの淹れ方とかに問題が──
「⋯⋯ん?」
その時、ふと感じた。
ヴィルジールが用意している珈琲の、その香りを。
同じだ。この香りは、俺が白厳(はくげん)から貰った珈琲と全く同じ香りをしている。
二人が同じ珈琲豆を持っていただけの、単なる偶然とも思えるが⋯⋯。
記憶を辿ると、以前に二人が発した台詞というのがピッタリと噛み合うのだ。
──知り合った人には、お渡ししているんですよ──
──知り合いから貰ったんだが、コイツが美味いんだ──
うーむ⋯⋯。やはり、違和感は無いよなぁ。
まぁ詳細を探るのも面倒だし、直接本人に聞いた方が手っ取り早いか。
「──なぁ、ヴィルジール?」
「なんだ? 砂糖は多めか?」
「いや、そうじゃなくて⋯⋯。アンタって、“黒の中折れ帽とスーツを着た男"が知り合いにいたりするか?」
「⋯⋯!? 白厳を知ってんのか⋯⋯!!」
驚愕した表情で、ヴィルジールは動きを止める。
どうやら、本当に白厳を知っていた様だ。
「なに? そのハクゲンって人?」
「いや、ほらさ。シルビアなら知っているだろ? 俺が違法組織の摘発やら、その被害者の保護やらをやってたの」
「えぇ、まぁ⋯⋯」
「そん時に縁あって知り合った男なんだが、マジで人柄が良くてさぁ。腹を割って話せるのは、お前と白厳くらいだと思ってる程の奴なんだよ。
まさか、コイツまで知ってるとはなぁ。流石、あの白厳だ」
親指で俺を差し、ヴィルジールは何度も頷く。
俺としては、彼らが知り合いだった事より、ヴィルジールの過去の経歴の方が気になってるんだが⋯⋯。
『違法組織の摘発やら、その被害者の保護やらをやってた』って、つまりは警察みたいな仕事をしていた訳か?
なんだっけ⋯⋯前にギフェルタで会った⋯⋯。あぁそうだ、ギルバド・アレクターだ。
彼みたいな感じで、表向きは冒険者だが、裏ではギルドの諜報員だった感じなのか?
でもそんな雰囲気がある男には──。⋯⋯いや、全く違和感が無かった訳でも無かったか。
あの時⋯⋯。そう、俺が初めてベルトンに来て、所持金を作ろうとテュラングルの鱗を質屋で売ろうした時だ。
手間が省ける様、ヴィルジールに質屋との交渉を任せたが、その時に彼は言っていた。『裏市場とかでなら言い値で売れる代物だぜ』と。
まるで、世間の闇の面を知っているかの様な台詞だったが、今の会話が答え合わせになったな。
「──成程。白厳が関わってるのなら、お前が置かれている状況も多少は理解出来たぜ」
淹れかけの珈琲を台所に置き、ヴィルジールが部屋を出る。
その徐な行動に、俺は勿論 シルビアも首を傾げた。
ヴィルジールが部屋を出ていってから数十秒後。再び姿を現した彼は、緋黒の両剣を携えた姿であった。
「俺がやるべき事が、たった今、決まった。
だが⋯⋯紅志。まずは残っている俺達の問題を片付けよう」
「え? ン?? ⋯⋯えッ!? 今、俺の事を──」
「いいから、着いてこいよ」
言われるがまま、俺は彼の後を追った。
続けてシルビアも追って来ようとしたが、『男二人で話したい』と、ヴィルジールが彼女の同行を拒んだ。
何が何だか分からぬまま、ヴィルジールの後ろを歩く俺。
そして、疑問が残ったまま辿り着いたのは──
「思い出すか? シルビアとの試合を」
「⋯⋯ハッ。忘れた事なんかねぇよ」
ベルトン・特別訓練場。
静寂が支配するその場所で、ヴィルジールが両剣を構えた。
⋯⋯成程。そういえば、あの時は幼女の横槍が入って決着がついていなかったな。
「──殺す気で来いよ、ヴィルジール」
半身に構え、正面を見据える。
10メートル先、一人の冒険者、緋黒の両剣──。
拳に魔力を込めた俺は、ゆっくりと深呼吸をする。
刹那の起爆。男の戦いが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる