猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【暗黒討伐編】

第171話・楽勝

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「──じゃあ、軽いおさらいから始めよう」

 そう言って、幼女は右腕を前に出す。
 青い光の映像ホログラムを手の平の上に生成すると、続けて球体の図形を描いた。
 更に球体は拡大され、会議室の天井の半分を覆う程のサイズまで肥大化。
 その下部に、恐らく球体の名称と思しき2つの文字が浮かび上がって──

「ん? 『地球』って書いてあるけど⋯⋯?」 
「そう、チキュー。ここが、オーガとの決戦の舞台だ」

 幼女の回答に、俺は首を傾げた。
 どうだろう、俺の質問の意図が解せなかったのだろうか?

「ええっと? ウン? 地球の何処が戦場なんだ?」
「いやいや、そうじゃなくて。地球そのものが戦場なんだよ。
 まぁ、オーガもコッチが待ち構えてる所に戦力を当ててくるだろうから、そういう意味で『地球全体』って感じかな」 
「えっ」
「で、それは地上迎撃組の話で、宇宙出撃組の戦場は文字通りの地球全体だね。
 もっと言えば、地球から月くらいの距離までは大体が戦場になるんじゃないかな?」
「えっ」

 ま、待て待て待て。コイツは一体何をいっているんだ?
 待ち構えてる地点=戦場。それは分かる。
 だが、戦場=地球全体って事は、地球全体にコッチの戦力を配置するって意味じゃないだろうな?
 というか待った。今、幼女から『宇宙出撃組』なんて単語が聞こえた気がするんだけど。
 それに聞き違いじゃなければ、地球から月までの空間が殆ど戦場になるって言ってなかったか?
 あ、あぁ~⋯⋯ハイハイ。俺、きっと疲れてるんだわ。

「──ドラゴン族と冒険者さん達、そして紅志が地上で迎撃。
 魔王軍と私の仲間達が、宇宙へ出撃。⋯⋯で、私とゼルが、開戦と同時にオーガの所に向かう。
 攻撃は出来ないけど、体力や精神を削っておく事なら可能だからね。
 逃げ道も塞いでおくから、後は紅志がやっつけるだけだよ」
「聞き違いじゃなかった⋯⋯」

 ボソッと呟き、陰ながら頭を抱える。
 既に知らされていたのか、セシルガやセイリスは特に動じていない様子だ。
 魔王幹部達も同様に、ハイハイさっき聞いたわ的な表情をしている。
 スケールの大きさに困惑しているのは、どうやら俺だけ──と、言う訳でも無いか。
 丁度、隣に俺と同じ様に困惑している男がいたぜ。
 
「コレは、アレか? 今の話に驚いてる俺がおかしいのか?」
「いや大丈夫だ、安心しろヴィルジール。俺も驚いてるトコ。
 どう考えたって、動じてない他の連中の頭がおかしい」
「そこ2人!! 会議中のコソコソ話はやめてくださ~い!」
「「うぐっ⋯⋯」」

 幼女に指を差され、俺とヴィルジールはギクリとする。
 兎にも角にも、幼女の話を黙って聞いている以外の選択肢は無さそうだ。

「──コホン。それじゃあ、続きから。
 前にも話した通り、私達の目標は『オーガの撃破』と『フィリップの奪還』だ。
 後者に関しては、私の仲間達が計画を立案済み。まぁ、他の人達は気にしなくてもいいかな。
 『オーガの撃破』についても、私とゼルと紅志で対応に当たるから、冒険者さん達やグレンデル達は無視していいや」
「へぇ⋯⋯。っつう事は、逆に俺ら冒険者の役割は雑魚の殲滅ってワケだな?」
「まぁ、そうプクッと膨れないでよ。神将っていう、向こうの主戦力を任せるからさ。
 それに雑魚って言っても、その数は五~六桁じゃ効かない。
 人類最強さんにとっても、楽しい運動になると思うよ♪」

 セシルガに向かって、パチリと片目を閉じる幼女。
 少しばかり不服気味だったセシルガだが、幼女の言葉に反論は無い様だ。

「──というか、私がこんな事を言うのはアレだけど⋯⋯
 決戦当日は、掲げてる目標の達成以外は各々の働きに全任せな感じだからね。
 それ程まで楽観視が出来るくらい、コッチとアッチの戦力の質の差は圧倒的なんだよ」
「つまり、人員配置の思案も、罠や迎撃装置の設置も、入念な武具の手入れも必要無いと⋯⋯?」
「うん、全然いらないね。強いて言うなら、エスキラさんにはギルド内部を含めた世間への情報統制をお願いしたい。
 後は⋯⋯まぁ、セシルガさん達への報酬金額の設定かな?
 勿論、付き合わせてるのは私だから、お金は私が出すよ♪」

 胸を軽く叩き、幼女はフンスと笑う。
 彼女がどこから金を出すのか疑問だが⋯⋯。身体の一部でも引きちぎって売りに出すつもりか?
 まぁ長生きな幼女の事だし、何かしらの資金源を持っていても特別おかしな話ではないが⋯⋯
 今更だが、神話や伝説に登場する龍が幼い女の子の姿をしているのって、物凄く違和感あるな。

「⋯⋯まぁ、ホントにさ。目の前の敵に油断しない限り私達は絶対に負けないから、その点だけ留意してくれればいいよ♪」

 手を1回叩き、幼女は話を切り上げる。
 思っていたより、作戦会議らしい事は何もしなかったな。
 幼女の言い様から考えると、本当に途轍も無く大きな戦力差がオーガと此方側にあるらしい。
 冷静に全体図を見てみても、最低でも魔王軍と人類の最強格が同時に出陣する形だ。
 テュラングル以外のドラゴン族は見た事が無いし、幼女側の転生者も白厳しか会った事が無いが⋯⋯
 まぁとんでもなく強い奴らで、決戦でも活躍してくれるのは確実だろう。

「さて。それじゃあ、今日は冒険者さん達は解散でいいかな。
 白厳は少し話があるから待って欲しいのと──ティガ、ヴィルジールさんを任せたよ!」

 会議は締め括りに移り、幼女は各方面へ指示を出す。
 セシルガは分かるが、セイリスまで伸びをしているのを見ると、思ったより長時間の会議だったのだろうか。
 俺は会議に数分しか参加していないので、そこんとこの詳細は不明だが⋯⋯まぁいいか。
 
「あ。そうだ、紅志。残りの鍛錬についてなんだけど、“あのコ”に一任する事にしたんだ」
「“あのコ”⋯⋯? あぁ、テュラングルか。分かった、じゃあ早速──」
「「ちょっと待った」」
 
 不意に、二人の野郎が声を揃える。
 片やヴィルジール、片やセシルガ。互いに顔を見合わせて、二人はジェスチャーをする。
 先に話す順番を決めているらしいが、それを考えると二人は共通の目的で声を上げた訳では無さそうだな。
 おっ、最初の質問はセシルガがヴィルジールに譲った様だ。

「テュラングルって、テュラングルだよな?」
「あぁ。⋯⋯けど、アンタと初めてベルトンで会った時、俺とアイツが知り合いだって事は知ってただろ?」
「まぁ、そりゃあそうなんだけどよ⋯⋯。本人が今この魔王城にいるのだとしたら、話が変わってくるというか⋯⋯」
「成程な。アンタは? セシルガ」
「俺もまぁ、大体同じだ。奴とは前に戦った事があるんだが、そん時は決着が着かなくてよ」
「そうか⋯⋯。──じゃあ、会ってみるか?」
「「⋯⋯!!」」

 再び顔を見合せ、ヴィルジールとセシルガは頷いた。
 彼らとテュラングルとの因縁は知らないが、再会した時には何かが起きそうな気がする。
 背筋が冷える様な感覚があるのが、少し不穏だぜ⋯⋯
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