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出逢い
しおりを挟む「朱乃くん、好」
「無理」
漫画なら、私の頭上に「ガーン!」って文字が載っているんだろうな。
私、華夜 妃舞梨。
中学2年生です。私が告白を遮って断わってきた彼の名前は、朱乃 奏くん。
今、通ってる中学校の受験の時に助けてもらってから、ずっと片想い。
何度、告白しても「無理」って断わられる。
その、好きになったきっかけがベターなんだけど……
中学受験の時に、緊張しちゃってペンケースを持って行くの忘れちゃって、シャープペンシルも消しゴムもなくて、受験票しか出せなくて……
試験官の人に言おうにも「ペンケースを持って来るのは常識。忘れるなんて有り得ない」って、みんなの前で言われるのが恥ずかしくて怖くて、受験資格を取り消されたらどうしよう!?ってなって、ずっと下向いて黙ってた。
私だけがペンケースを忘れて、みんなはちゃんと持ってきている。
とても自分が恥ずかしくて、でもどうすることも出来なくて。
さり気なく、机の中に手を入れて漁ってみても誰かのシャープペンシルは、当然ながら入っていない……
冷や汗ばかりが落ちてきて、試験会場には暖房が入っているけど、私だけが常夏並みに暑くて。
すると、カラカラ……って向こうからシャープペンシルと消しゴムが転がってきたの。
「えっ」と思って顔を上げたら、隣の男の子が「それ使え。忘れたんだろ」って気付いてくれた。
何とか無事に受験することが出来たのは良かったんだけど、その子は最後の科目の試験が終わり退出時間になると、鞄を持ってさっさと出て行った。
私がそれに気付いたのは、試験が終わる10分ぐらい前で、試験が終わると同時に鞄を持ってその子を探した。
名前も知らないので試験官にも聞けないし、しばらく試験会場の中を捜したけど結局、見つからなかった。
シャープペンシル、借りっぱなしだからちゃんとお礼を言って返したいのに。
シャープペンシル、いらないってことはないと思うんだけど。
貸したこと、忘れてるのかな?……いやいや、そんなことないはず。
今頃「あれ?あのシャーペン、どこいった?」って、なってるはずだよ!きっと……
試験から2週間ぐらいで合否通知が送られてきて見事、志望校へ合格することが出来た。
あの子も合格してるといいなぁ。
入学式当日。
校舎に貼り出された自分のクラスへ移動し、自分の席を見つけて座った時、見覚えのある顔を見つけた。
あの子だ!シャーペンの君!!
私は嬉しくて、その子の机に行き話し掛けた。
「あのっ」
「んあ?」
「あの……受験の時、ありがとうっ」
そう言いながら、借りていたシャーペンを渡した。
「えっ……?」
「あの……受験の時に私がペンケース忘れて、どうしようってなってた時、貸してくれたよね……?本当に助かったというか……本当にありがとう!」
「そうだっけ?」
「えっ」
「覚えてねーな。んー、でも確かにこれ俺のだ」
「受験終わって、捜したんだけど見つからなくて……合格してて、会えたら返そうと思ってずっと持ってたの」
「そっか。それは悪かったな」
「ううん!でも、また再会出来て……借りてたシャーペンも返せて良かった……!」
「おう。受験の時に使おうと思ってたシャーペンだったから、戻ってきて本当に良かったわ」
「えっ!?そんな大事なシャーペンだったの!?鉛筆とか、他のでも良かったのに……!」
「いやいや。何か、めっちゃ気まずそうにしてたし、冷や汗やばかったしで……こりゃ助けねーとって思っただけだよ」
「でも、本当にありがとう!お陰様で無事、合格しました」
「おう、同じクラスだったんだな」
「うん」
「これから、よろしくな」
「うんっ!」
入学式が終わり、自分のクラスに戻って自己紹介。
受験の時に、シャーペンを貸してくれた人と再会するなんて……これって運命!?
朱乃くん、イケメン過ぎない感じでちょっとクラスの人気者っぽい感じ。
友達になりたいけど、なれるかな……?
てか、友達というより……す、好きになっちゃった……かも。
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