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FILE 01 女学園バラバラ死体事件
FILE01 女学園バラバラ死体事件-10
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容疑者達には、とある教室に集まってもらった。
すでに放課後になっており、教室の周辺には関係者しかいない。
集まってもらったのは次の三名だ。
・被害者である柳優南のルームメイト、倉井明花里。プログラムの成績はそこそこ。
・プログラムの授業を受け持っている教員、北村加代。
・ミカのデータを見てピックアップした、プログラムの授業で2位の成績だった榊原衣梨奈。
ちなみに、成績一位は被害者だ。
北村教諭は最初に俺が学園を訪れた際、クラスで少しもめた人物。
榊原衣梨奈は、その時、最初に声を上げた生徒だ。
「さて、皆さんに集まってもらったのは他でもない。
柳優南殺しの犯人がこの中にいるからです」
「バカ言わないでください。あんなバラバラ死体、女子にできるわけありません」
そう声をあげたのは榊原だ。
とりあえず発言できる、というのはまあ生きていくのに必要な能力ではあるね。
「おや、君は現場を見たのかい?
ルームメイトの倉井さんが悲鳴を上げた直後、たまたま通りかかった北村先生が、すぐに現場を封鎖したと聞いたけど」
組織は警察とも連携している。
俺たちが聞き込みをしている間、別の角度からの情報も入ってくる。
警察はちゃんと学園関係者にも話を聞いていたのだ。
そして、生徒達が混乱していない理由がこれだ。
おそらく数人には見られたであろうが、本来であれば、一瞬で噂がまわってもおかしくない。
だがそうならならかったのは、この学園の教育のたまものだろう。
いいのか悪いのかは別にしてだが。
「倉井さんが悲鳴を上げたとき、たまたま部屋の前に来ていたのよ」
「なぜ?」
「た、たまたまよ」
「ウソだな」
「なぜそう決めつけるの!?」
「ウソだとわかるから」
「理由になってない。話にならないわ」
「君がそう思っても、俺たちには取り調べをする権限がある。
それで十分だとは思わないか?」
自分が理解できないものは存在しないと思うなんて、傲慢も甚だしい。
「私達の人権はどうなるの!?」
「大丈夫。ちゃんと配慮してる。
犯人は現場に戻ってくることが多い。
君がこのまま何も話さないと、容疑者として拘留しないといけなくなる。
そんなのはお互い、時間の無駄だろ?」
「知らないって言ってるでしょ」
「さっきは『たまたま』と言ったけどね。
俺たちは『殺人事件の』捜査と解決が任務だ。
窃盗やら細かい罪には興味がない。
容疑者を勾留する手段として逮捕することはあっても、基本的には見逃すよ。
さあどうする?」
「…………」
「榊原さんは、随分高級な化粧品を使っているね。
高校生なのにすごい。さすがお嬢様だ。
でも、君は他の生徒達と違ってそんなに裕福じゃないよね」
「な、なんでそんなこと……」
「持っている制服の数が少ないからさ」
「私の部屋を見たの!?」
「いいや、生地の劣化具合からの推測だよ。
この学校の生徒達は、制服を何着も持っている。
さすがお金持ちの集まる学校だ。
でもキミは違う。
ついでに言うとその化粧品。倉井さんのものと同じだね?」
「え……わかるの?」
ちょっとキモいって顔に書いてあるが……無視しよう。
非接触で成分を分析した。
なんて言っても、納得してはもらえないだろう。
「倉井さん、キミは榊原さんに化粧品を貸したりしたことは?」
「一度メイクを教えたことはあるけど……」
「貸したり、あげたりはしてないんだね?」
「ええ……」
「さて。指紋やら何やら、証拠はいくらでも出てくると思うけど、どうする?」
「…………盗んだのよ」
榊原は顔をゆがめて、吐き捨てるように言った。
「なんでそんな!
盗むだなんて!」
当然、倉井はとても怒るよね。
「でも、返そうとした。そうだね?」
俺はとっくみあいになるのを防ぐため、榊原に助け船を出す。
「はい……あの日、やっぱり返さなきゃって思って倉井さんの部屋に……。
そしたら悲鳴が聞こえて……」
「なるほどね。
じゃあ次に先生」
「ちょっと待って!
化粧品泥棒の話は今ので終わり!?」
憤る倉井を俺は手で制した。
「悪いけど、ただの窃盗に興味は無いんだ。
さっきも言ったろ?」
「そんなっ!」
「それとも、ルームメイトの死より、化粧品の方が大事かい?」
「そ、そんなことないわ……」
「じゃあ今はおさえて。
このあと、警察に言うなり、先生に言うなりすればいいから」
彼女達二人のどちらかが犯人であれば、それどころじゃないだろうけど。
「では改めて、北村先生」
「はい……なんでしょう」
「あなた、被害者に嫉妬してましたね?」
「私が生徒に? ありえません」
北村教諭は鼻の横をぴくりとふるわせた。
そこそこの美人が台無しな表情だ。
「どんな嫉妬か、とは聞かないんですね。心当たりがあると?」
「……っ!
そりゃあ、高校生には若さでは敵わないし……。
でも、柳さんほどの美しさなら、嫉妬する気もおきないわ」
「そっちじゃないでしょ?」
俺の言葉に、北村教諭の顔が歪む。
「あなたは、プログラムの腕で柳さんに負けたのがとても悔しかったんだ」
「違う!」
「違わない。
あなたはウソが下手だな。
これは褒めてるんですよ」
「ウソじゃないわ!」
「北村先生、あなたこの学園に勤める前は、天才美人プログラマーとしてメディアに取り上げられてましたね」
ちょっとネットで調べれば、すぐに出てくる情報だ。
「ええ……」
「だが、その天才性も長くは続かなかった。
だからさっさと引退して教員になった。
しかし、柳さんは本当の天才だった。
自分とは明らかにレベルの違う天才。
あなたは打ちひしがれただろう。
自分が教えたわけでもないのに、ぐんぐんのびる。
だから、あなたは勝負を愛弟子にかけることにした。
榊原さんにね」
「榊原さんも大事な生徒よ。
指導するのはあたり前です」
「彼女は特に、でしょ?
ソースコードを見ればわかる。
クセがそっくりだ。他の生徒達とは異なる部分でね。
授業以上のことを彼女にだけは教えていたということだ」
「優秀な子に応用を教えていただけよ!」
「プログラムの高校生世界大会。
榊原さんは史上初の3連覇も狙えると言われていたそうですね。
でも、柳さんが出れば確実に阻まれる。
それを阻止したかったんじゃないか?」
「だから殺したって?
そんなわけないでしょ!」
俺はそこでちらりとミカを見る。
「『奴ら』なら十分動機になるわ。彼女が犯人?」
ミカは小声で俺にささやいた。
それに対し俺は、どちらとも答えない。
「殺す計画は立てていたんだろ?
部屋の前までは行ったようだがね。
化粧品を返すというのを、部屋を訪れる口実にして」
「バカバカしい。
仮に柳さんを殺すにしても、わざわざ部屋の中で殺す意味はないし、部屋に行くのに倉井さんを訪ねる必要もないわ」
単純に考えるなら、北川教諭の言う通りだ。
「トリックを考えていたんだろう?
あなた達は、倉井さんが化粧品をとても大事にしていたと知っていた。
盗んだと言えば激昂するだろうとも予想がついた。
大声をあげるだろうね。
部屋に誰がいるか知らない人にとっては、まるで倉井さんと柳さんが喧嘩をしているように聞こえるかもしれない」
「そうか! 倉井さんに罪を着せようと!」
ミカが「正解でしょ!」と言わばかりに手を打った。
「という、ずさんな計画を立てたんだろう」
「完璧な計画だったわ!
――あっ」
うっかり口を滑らせたのは北川だ。
「まさかそこで口を滑らせるとは思わなかったんだが」
どれだけ自尊心が強いんだ。
「これは……ちが……やってない! 私達はやってないわ!」
「あなた達……っ!」
倉井は今にも飛びかからんばかりに、怒りの表情を浮かべた。
すでに放課後になっており、教室の周辺には関係者しかいない。
集まってもらったのは次の三名だ。
・被害者である柳優南のルームメイト、倉井明花里。プログラムの成績はそこそこ。
・プログラムの授業を受け持っている教員、北村加代。
・ミカのデータを見てピックアップした、プログラムの授業で2位の成績だった榊原衣梨奈。
ちなみに、成績一位は被害者だ。
北村教諭は最初に俺が学園を訪れた際、クラスで少しもめた人物。
榊原衣梨奈は、その時、最初に声を上げた生徒だ。
「さて、皆さんに集まってもらったのは他でもない。
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「バカ言わないでください。あんなバラバラ死体、女子にできるわけありません」
そう声をあげたのは榊原だ。
とりあえず発言できる、というのはまあ生きていくのに必要な能力ではあるね。
「おや、君は現場を見たのかい?
ルームメイトの倉井さんが悲鳴を上げた直後、たまたま通りかかった北村先生が、すぐに現場を封鎖したと聞いたけど」
組織は警察とも連携している。
俺たちが聞き込みをしている間、別の角度からの情報も入ってくる。
警察はちゃんと学園関係者にも話を聞いていたのだ。
そして、生徒達が混乱していない理由がこれだ。
おそらく数人には見られたであろうが、本来であれば、一瞬で噂がまわってもおかしくない。
だがそうならならかったのは、この学園の教育のたまものだろう。
いいのか悪いのかは別にしてだが。
「倉井さんが悲鳴を上げたとき、たまたま部屋の前に来ていたのよ」
「なぜ?」
「た、たまたまよ」
「ウソだな」
「なぜそう決めつけるの!?」
「ウソだとわかるから」
「理由になってない。話にならないわ」
「君がそう思っても、俺たちには取り調べをする権限がある。
それで十分だとは思わないか?」
自分が理解できないものは存在しないと思うなんて、傲慢も甚だしい。
「私達の人権はどうなるの!?」
「大丈夫。ちゃんと配慮してる。
犯人は現場に戻ってくることが多い。
君がこのまま何も話さないと、容疑者として拘留しないといけなくなる。
そんなのはお互い、時間の無駄だろ?」
「知らないって言ってるでしょ」
「さっきは『たまたま』と言ったけどね。
俺たちは『殺人事件の』捜査と解決が任務だ。
窃盗やら細かい罪には興味がない。
容疑者を勾留する手段として逮捕することはあっても、基本的には見逃すよ。
さあどうする?」
「…………」
「榊原さんは、随分高級な化粧品を使っているね。
高校生なのにすごい。さすがお嬢様だ。
でも、君は他の生徒達と違ってそんなに裕福じゃないよね」
「な、なんでそんなこと……」
「持っている制服の数が少ないからさ」
「私の部屋を見たの!?」
「いいや、生地の劣化具合からの推測だよ。
この学校の生徒達は、制服を何着も持っている。
さすがお金持ちの集まる学校だ。
でもキミは違う。
ついでに言うとその化粧品。倉井さんのものと同じだね?」
「え……わかるの?」
ちょっとキモいって顔に書いてあるが……無視しよう。
非接触で成分を分析した。
なんて言っても、納得してはもらえないだろう。
「倉井さん、キミは榊原さんに化粧品を貸したりしたことは?」
「一度メイクを教えたことはあるけど……」
「貸したり、あげたりはしてないんだね?」
「ええ……」
「さて。指紋やら何やら、証拠はいくらでも出てくると思うけど、どうする?」
「…………盗んだのよ」
榊原は顔をゆがめて、吐き捨てるように言った。
「なんでそんな!
盗むだなんて!」
当然、倉井はとても怒るよね。
「でも、返そうとした。そうだね?」
俺はとっくみあいになるのを防ぐため、榊原に助け船を出す。
「はい……あの日、やっぱり返さなきゃって思って倉井さんの部屋に……。
そしたら悲鳴が聞こえて……」
「なるほどね。
じゃあ次に先生」
「ちょっと待って!
化粧品泥棒の話は今ので終わり!?」
憤る倉井を俺は手で制した。
「悪いけど、ただの窃盗に興味は無いんだ。
さっきも言ったろ?」
「そんなっ!」
「それとも、ルームメイトの死より、化粧品の方が大事かい?」
「そ、そんなことないわ……」
「じゃあ今はおさえて。
このあと、警察に言うなり、先生に言うなりすればいいから」
彼女達二人のどちらかが犯人であれば、それどころじゃないだろうけど。
「では改めて、北村先生」
「はい……なんでしょう」
「あなた、被害者に嫉妬してましたね?」
「私が生徒に? ありえません」
北村教諭は鼻の横をぴくりとふるわせた。
そこそこの美人が台無しな表情だ。
「どんな嫉妬か、とは聞かないんですね。心当たりがあると?」
「……っ!
そりゃあ、高校生には若さでは敵わないし……。
でも、柳さんほどの美しさなら、嫉妬する気もおきないわ」
「そっちじゃないでしょ?」
俺の言葉に、北村教諭の顔が歪む。
「あなたは、プログラムの腕で柳さんに負けたのがとても悔しかったんだ」
「違う!」
「違わない。
あなたはウソが下手だな。
これは褒めてるんですよ」
「ウソじゃないわ!」
「北村先生、あなたこの学園に勤める前は、天才美人プログラマーとしてメディアに取り上げられてましたね」
ちょっとネットで調べれば、すぐに出てくる情報だ。
「ええ……」
「だが、その天才性も長くは続かなかった。
だからさっさと引退して教員になった。
しかし、柳さんは本当の天才だった。
自分とは明らかにレベルの違う天才。
あなたは打ちひしがれただろう。
自分が教えたわけでもないのに、ぐんぐんのびる。
だから、あなたは勝負を愛弟子にかけることにした。
榊原さんにね」
「榊原さんも大事な生徒よ。
指導するのはあたり前です」
「彼女は特に、でしょ?
ソースコードを見ればわかる。
クセがそっくりだ。他の生徒達とは異なる部分でね。
授業以上のことを彼女にだけは教えていたということだ」
「優秀な子に応用を教えていただけよ!」
「プログラムの高校生世界大会。
榊原さんは史上初の3連覇も狙えると言われていたそうですね。
でも、柳さんが出れば確実に阻まれる。
それを阻止したかったんじゃないか?」
「だから殺したって?
そんなわけないでしょ!」
俺はそこでちらりとミカを見る。
「『奴ら』なら十分動機になるわ。彼女が犯人?」
ミカは小声で俺にささやいた。
それに対し俺は、どちらとも答えない。
「殺す計画は立てていたんだろ?
部屋の前までは行ったようだがね。
化粧品を返すというのを、部屋を訪れる口実にして」
「バカバカしい。
仮に柳さんを殺すにしても、わざわざ部屋の中で殺す意味はないし、部屋に行くのに倉井さんを訪ねる必要もないわ」
単純に考えるなら、北川教諭の言う通りだ。
「トリックを考えていたんだろう?
あなた達は、倉井さんが化粧品をとても大事にしていたと知っていた。
盗んだと言えば激昂するだろうとも予想がついた。
大声をあげるだろうね。
部屋に誰がいるか知らない人にとっては、まるで倉井さんと柳さんが喧嘩をしているように聞こえるかもしれない」
「そうか! 倉井さんに罪を着せようと!」
ミカが「正解でしょ!」と言わばかりに手を打った。
「という、ずさんな計画を立てたんだろう」
「完璧な計画だったわ!
――あっ」
うっかり口を滑らせたのは北川だ。
「まさかそこで口を滑らせるとは思わなかったんだが」
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