おまえも僕の姫騎士にしてやろうか

遊野 優矢

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1章:初体験からの初体験

1章:初体験からの初体験(1)

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 ■ 1章 初体験からの初体験 ■


 僕を毎日のように虐めていたギャルが、裸で隣に寝ている。
 これまでの自分には縁がなかった、高級ホテルのような一室だ。

 昨夜のことを思い出すと、満たされた復讐心と快楽で、暗い悦びが湧いてくる。

「ジュン……さま……」

 体を起こしたギャルの大きな胸の先端を隠すように、茶色い髪がさらりと肩から流れる。

「ん……なに……これ……あっ……」

 ギャルが頬を染めて喘ぎ、その体がぼんやり光る。
 光はやがて、赤く輝く露出度の高い甲冑へと姿を変えた。
 まるでファンタジーものに出てくる、女騎士のような姿だ。

 その時、まるで見ていたかのようなタイミングで、部屋のドアが開いた。

 ノックくらいしてくれても!?

 中に飛び込んできたのは、黒髪をショートボブに切りそろえたツリ目美人だ。
 肌から察するに二十代も後半といったところだろうが、それを言うと怒られそうである。
 彼女は穴井真白(あないましろ)。僕をここに無理やり連れてきた張本人だ。

「こんな魔法みたいな……あの娘の言っていたことは本当だったのね! 出るわよ! 支度して! もしもし本部長? いけるかもしれません! はい、これで日本は……いえ、世界は――」

 真白さんは脱ぎ捨ててあった高校の制服を僕に投げつけると、スマホで電話をしながら、足早に部屋を出ていった。
 
 彼女が出ていったドアの外には、見慣れない白く無機質な廊下が続いていた。



 着替えを済ませ、新幹線に飛び乗って向かう先は東北地方だ。

「景色を楽しめないのは残念ね」

 真白さんが鉛で埋められた窓をコンコンと叩いた。

「どうせ代わり映えのしない光景が続くだけですよ」

 田舎出身者にとって、ひたすら続く田園や山の風景など、今更見てもしかたがない。

「高校生のクセに冷めてるわねえ」
「ジュン様に文句があるの?」

 呆れ顔の真白さんを、ギャルが噛みつかんばかりの勢いでにらみつける。
 夏服の上から透けて見える豊かな胸を、ぐいぐい押し付けてくるものだがら、昨晩を思い出して理性が崩壊しそうだ。

 ちなみに席順は窓側からオレ、ギャル。通路を挟んで真白さんだ。

「これがほんとにあの赤石(あかいし)さんとは……」

 真白さんはギャルを気味の悪いもののように見ている。

「これまでのこと……後悔してる。いくらでもご奉仕するから許して。ね? ジュン様……」

 真白さんではないが、かなり不気味だ。
 あれだけ僕をいじめていた女が、今では他人の前で耳を甘噛みしてくるのだ。
 僕に備わった能力について聞いていなければ、何かの罠だと思うところだ。
 いや、今でも盛大なドッキリか詐欺なのではと疑っているけれど。

 普段なら人前で女子とイチャつくなんてできないが、僕らの他に乗客はいない。
 関東より北に向かう交通機関はこの半年、全て運休しているからだ。

 車内に後付けされたテレビには、既に見慣れた光景なりつつあるニュース映像が流れている。
 ドローンにより高空から撮影されたカメラには、爆撃跡が映し出された。
 スタジオではアナウンサーがバネル上で、青森をスタート地点として、岩手南部まで進んだ矢印について解説中だ。
 爆撃跡はその矢印をなぞるように続いている。

 カメラが矢印の現在地にいる『対象』をアップでとらえた。

 そこに映ったのは、二足歩行をする巨大な象だ。
 ボディビルダーの体に象の頭を乗せたような異形である。
 発表によると全長23メートル、推定重量63トン。
 昔の某劇場ロボットアニメに出てくる主人公機みたいなサイズである。

 目を開いた象が、ゆっくり一歩を踏み出した。

 かつてはポツポツと民家のあった典型的過疎地だったが、今では荒野と化している。
 そこにまた、巨大な足跡が刻まれた。

 アップから遠景に戻った映像の奥でミサイルが着弾、そして、強い光。続いて衝撃波が映し出された。

「ダムレイに本日の燃料気化爆弾が投下されました。ダムレイ、再び進行を停止しました。さて、次のニュースです」

 アナウンサーが慣れた様子で原稿を読み上げると、画面は切り替わり、芸能人の不倫へと話題が変わった。

「というわけで、君たちにはあの害異(ガイイ)――個体名ダムレイと戦ってもらいます」

 真白さんが仕事用のキリリとした顔を向けてくる。
 僅かにすまなそうにしている印象を受けるのは、気のせいではないかもしれない。

 一ノ関駅からは自衛隊のタンクに乗りこんだ。
 これから起こることを考えると、非日常な乗り物に心躍ることもない。

 タンクが停まったのは、ダムレイから100メートルほど離れた場所だった。
 ダムレイはぐったりと首を下げ、立ったまま眠っているようだ。
 爆弾のダメージからの自己修復を優先しているらしい。
 爆弾が効くならそのまま連発すればよいと思うのだが、実践してみたところ派手に暴れ回られたという。
 おかげで青森県のいくつかの町と村がクレーター化したというニュースは記憶に新しい。

 3張りのテントにいる自衛隊員が緊張の面持ちでこちらを見ている。
 20人ほどの隊員に混じって、スーツ姿の男性が2人。
 彼らは真白さんと同じ所属だろう。

「彼らが?」

 この場の指揮官らしき中年男性が、うさんくさげな目で僕と赤石を見た。

「そうです。さ、始めて」

 真白さんは頷くと、僕たちに目を向けた。

「え……ここでスるんですか?」

 露出趣味はないんだけど。

「バカね。1度『通じた』後はキスでいいはずよ。濃厚で大人なやつをね」

 ついこないだまで未経験だった僕になんて注文をするんだ。

 隣の赤石は頬を染めながら目を閉じ、僕を見上げている。
 準備万端である。

 ああもうわかったよ!
 これで『アイツ』を護れるなら安いものだ。

 僕は赤石の肩に手をかけ、唇を重ねた。

「ん……っ」

 赤石の喉から熱のこもった声が漏れる。

「んん……ん……っ」

 ゆっくり舌を絡めていくと、赤石の体がビクビクと跳ねた。
 赤石の舌がオレの唾液を求めるように、口内を這いずりまわる。

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