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「病院のご飯、おいしかった?」
「うん。やっぱちょっと味は薄いかな?って気もしたけど美味しかったよ」
何気ない話をしながらも、戸棚の中に生活用品を詰め込んでいく。
思っていたよりも広かった、真っ白な個室にはまだ慣れない。
そんな入院生活二日目。
昨日は病院について、病室に一度案内された後、理央はすぐ諸々の検査だった。
その間におれは事務所に戻り、洋子さんに報告して隼人にも報告して、数か月の休みを取ってきた。
というか、どれだけになるか分からないので休職扱いにしてもらったのだが。
隼人はやはりひどく心配して、今すぐに見舞いに行くと言ってきかなかった。
落ち着いてから来てくれとなんとか丸め込んだが、寂しい病室になる心配はなさそうだ。
「あ、正彦さんと雪子さんは?」
「ん~明日来るって」
「ふんふん、りょうかい」
正彦さん達には理央から直接電話させた。そっちの方がいいだろうから。
だから彼らの反応は理央しか知らない。どうせ詳しいことは知らせてないのだろうが少し心配している。
おれはおれでプライベートで関わりのある、必要最低限の人たちに連絡を入れて回った。正直お互い友達と呼べるような知り合いは多くないのでほとんどの人に連絡したことにはなるのだが。
仕事関係はありがたいことに、洋子さんが一手に引き受けてくれた。
「あ~~洋子さんに頭あがんない…」
「や、もう…ほんとに、ね」
深くうなずいて同意を示してくる当人、理央は薄青の病院着を纏ってベッドに腰掛けている。
未だに病人の自覚はないらしく、こうしてずっとおれとの会話をねだるばかりだ。本人が元気であるならそれに越したことはないとは思うのだが。
コンコンとノックが聞こえ、理央が返事をすると看護師さんが顔を出した。
「塩沢さん、検査のお時間です~」
「あ、は~い。次ってなんの検査でしたっけ?」
「超音波検査ですね~」
「お~いってらっさい」
「うん、待っててね」
ドアの前にいる看護師さんの方からこちらへと顔を戻した理央はベッドから立ち上がる。
そして、ごく自然におれの唇に自分のそれを重ねた。
「……んっ、ちょっと」
じとっとした目で睨むと何とも楽しそうに部屋を出ていった。
去り際扉を閉めるときの看護師さんの生暖かい視線が非常にいたたまれない。
「…さて、なにしようかなあ」
すぐそこにあった丸椅子にトサリと腰をおろして、一気に静かになってしまった部屋の天井を眺めた。
すると、そう時間も経たぬうちにまた扉がノックされる。
もう検査が終わったのかと思ったが、そうだったらノックなんてせずに入ってくるだろう。
はーい、と声をあげて、扉の方へ歩み寄る。
「…あ、稲葉先生」
「急にすみません」
扉を開けてそろっと入ってきたのは担当医である稲葉先生。一番最初の再検査の時からお世話になっているのだが入院の説明の時に名前を含めて自己紹介してくれた。理央はもちろん、おれにも寄り添ってくれるステキな先生。
「理央さんが検査を受けられている間に、ご家族の方に今の段階での説明をさせていただきたいのですが…よろしいですか?」
「ああ、はい。おれで、いいんですよね?」
「もちろんです!では相談室に移動しましょうか」
頷きを返し、ぱちりと部屋の電気を消した後白衣の背中を追いかけた。
「では、よろしくお願いしますね」
「はい。ありがとうございました」
一礼をして、相談室というプレートのかかった部屋を後にした。
壁に貼られた、『塩沢理央』の名前を確認して病室の扉に手をかける。
カラカラと開けば室内からは電気がもれて、おや、と思う。
「あーーーー!!!!」
「うるさい!!」
部屋に踏み込んだ瞬間容赦なく浴びせられた絶叫に慌てて扉を閉める。
「ゆき!!どこ行ってたの!待っててねって言ったのに」
手にもっていたテレビリモコンを放り投げて駆け寄ってくる長身を受け止める。
「あ~…ごめんて。先生のとこ行ってた」
「…だと思った。匂いするもん」
「うそつけ!!そこまで近くにはいってない!」
「まあ嘘だけど。でも悲しかったんですぅ~」
そんなこと言う恋人は、首筋に埋めてすんすん匂いを嗅いでいた顔をあげて、ひょい、とおれを抱えあげる。病人にそんなことさせるわけにはいかないと慌てた。
「ちょ、おろして!」
「はいはい、すぐそこまでだから」
聞く耳持たずとはまさにこのこと。
結局ベッドまで運ばれて、その置き方に優しさを感じる。
横に腰をおろした理央は胡坐をかいて、その上におれを抱きあげて乗せる。
「はい、先生のところで何してきたのかな?」
「普通にお話聞いてきただけ…」
「んん~~~」
「なにがご不満なのさ」
本気で怒ってないのは分かりきってるけど、本気で拗ねてそうではある。
「ゆきさ、先生に懐きすぎじゃない!?」
「そんなことないよ…であって3日?だよ?」
「いや、そんなことあるね。そもそも顔このみでしょ」
うっ
「否定できない…」
「だと思った~!!雰囲気隼人くん寄りだもん!」
確かに稲葉先生は顔というか雰囲気がドタイプである。
爽やか医学生って感じが、こう…
「じゃなくて!」
「おおう、なに」
「そんなことより、おれが聞いてきた話だよ」
「全然そんなことじゃないんですけど」
ぶーたれてる理央の頬を両掌で押しつぶしてその目を見つめる。
「理央はさ、病気のこととか今の状況とか聞きたい?」
「…自分のってことだよね?」
「そう」
「…そんなに悪い?」
その問いにぶんぶんと首を振る。
「確かに良くはないけど、希望が全くないわけでもない」
「そう…」
先ほどとは打って変わって、
不安げに揺れる瞳にこちらまで揺さぶられる。
そっと頭を胸に引き寄せてぎゅうっと強く抱きしめた。
「詳しく聞きたくないならそれでもいい。おれがいっぱいサポートするから。知りたいって思うなら先生のとこに一緒に行こう。いや、おれが話してもいい」
あまり怖がる様子や不安がる様子をおれには見せない人だから、抱き寄せた胸に擦り寄ってくるような様を見れば守らなければと本能が駆り立てられる。
(こわいよね…そりゃあそうだよね…)
彼はおれが幸せならば、というけれどそんなはずはないのだ。
いや、それも紛れもなくホントの気持ちなんだろうけど、生きている以上死に恐怖を感じるのもまた当然のことなんだ。
(でも先生に言われたことは一応聞かなきゃ…)
「ね、りお。詳しいを聞くかどうかは置いておくというか、後々でもいいとして、ひとつだけ考えてくれない?」
「ん?」
「この入院は1週間続くけど、その後のこと。そのまま入院して治療を受けるか、通院しながら治療を受けるか」
先生からの話の最後に本人に尋ねるよう頼まれたことだった。
「え…どっちでもいいの?」
「うん。先生がどちらでも構いませんので話し合って決めてください、って。…ただ、通院ってことは自宅療養だから万が一のとき対応の遅れは考えられるって言われた」
「そっか…」
顎に手を当ててうつむき、考え込む理央。
「…ちなみにおれはね、どっちでもいいよ。どっちになっても常に隣にいる」
だから、おまえがより安心できるほうを_
「ん……ゆきには苦労かけちゃうかもしれないけど…俺は家に帰りたい、かな」
顔をあげて微笑む彼に、ニカッて笑い返した。
「そっか!」
「うん」
理央に抱きしめられた体勢のままゴロン、と横に転がされる。
病院のベッドは少し硬いけど、狭くてふたりがくっつけるからいいね、なんていいながらしばらくゴロゴロと二人で転がっていた。
「あ、先生に通院にしますって言ってくる」
「お、俺もいくから」
「いや、寝とけよ」
「いーーーや」
「うん。やっぱちょっと味は薄いかな?って気もしたけど美味しかったよ」
何気ない話をしながらも、戸棚の中に生活用品を詰め込んでいく。
思っていたよりも広かった、真っ白な個室にはまだ慣れない。
そんな入院生活二日目。
昨日は病院について、病室に一度案内された後、理央はすぐ諸々の検査だった。
その間におれは事務所に戻り、洋子さんに報告して隼人にも報告して、数か月の休みを取ってきた。
というか、どれだけになるか分からないので休職扱いにしてもらったのだが。
隼人はやはりひどく心配して、今すぐに見舞いに行くと言ってきかなかった。
落ち着いてから来てくれとなんとか丸め込んだが、寂しい病室になる心配はなさそうだ。
「あ、正彦さんと雪子さんは?」
「ん~明日来るって」
「ふんふん、りょうかい」
正彦さん達には理央から直接電話させた。そっちの方がいいだろうから。
だから彼らの反応は理央しか知らない。どうせ詳しいことは知らせてないのだろうが少し心配している。
おれはおれでプライベートで関わりのある、必要最低限の人たちに連絡を入れて回った。正直お互い友達と呼べるような知り合いは多くないのでほとんどの人に連絡したことにはなるのだが。
仕事関係はありがたいことに、洋子さんが一手に引き受けてくれた。
「あ~~洋子さんに頭あがんない…」
「や、もう…ほんとに、ね」
深くうなずいて同意を示してくる当人、理央は薄青の病院着を纏ってベッドに腰掛けている。
未だに病人の自覚はないらしく、こうしてずっとおれとの会話をねだるばかりだ。本人が元気であるならそれに越したことはないとは思うのだが。
コンコンとノックが聞こえ、理央が返事をすると看護師さんが顔を出した。
「塩沢さん、検査のお時間です~」
「あ、は~い。次ってなんの検査でしたっけ?」
「超音波検査ですね~」
「お~いってらっさい」
「うん、待っててね」
ドアの前にいる看護師さんの方からこちらへと顔を戻した理央はベッドから立ち上がる。
そして、ごく自然におれの唇に自分のそれを重ねた。
「……んっ、ちょっと」
じとっとした目で睨むと何とも楽しそうに部屋を出ていった。
去り際扉を閉めるときの看護師さんの生暖かい視線が非常にいたたまれない。
「…さて、なにしようかなあ」
すぐそこにあった丸椅子にトサリと腰をおろして、一気に静かになってしまった部屋の天井を眺めた。
すると、そう時間も経たぬうちにまた扉がノックされる。
もう検査が終わったのかと思ったが、そうだったらノックなんてせずに入ってくるだろう。
はーい、と声をあげて、扉の方へ歩み寄る。
「…あ、稲葉先生」
「急にすみません」
扉を開けてそろっと入ってきたのは担当医である稲葉先生。一番最初の再検査の時からお世話になっているのだが入院の説明の時に名前を含めて自己紹介してくれた。理央はもちろん、おれにも寄り添ってくれるステキな先生。
「理央さんが検査を受けられている間に、ご家族の方に今の段階での説明をさせていただきたいのですが…よろしいですか?」
「ああ、はい。おれで、いいんですよね?」
「もちろんです!では相談室に移動しましょうか」
頷きを返し、ぱちりと部屋の電気を消した後白衣の背中を追いかけた。
「では、よろしくお願いしますね」
「はい。ありがとうございました」
一礼をして、相談室というプレートのかかった部屋を後にした。
壁に貼られた、『塩沢理央』の名前を確認して病室の扉に手をかける。
カラカラと開けば室内からは電気がもれて、おや、と思う。
「あーーーー!!!!」
「うるさい!!」
部屋に踏み込んだ瞬間容赦なく浴びせられた絶叫に慌てて扉を閉める。
「ゆき!!どこ行ってたの!待っててねって言ったのに」
手にもっていたテレビリモコンを放り投げて駆け寄ってくる長身を受け止める。
「あ~…ごめんて。先生のとこ行ってた」
「…だと思った。匂いするもん」
「うそつけ!!そこまで近くにはいってない!」
「まあ嘘だけど。でも悲しかったんですぅ~」
そんなこと言う恋人は、首筋に埋めてすんすん匂いを嗅いでいた顔をあげて、ひょい、とおれを抱えあげる。病人にそんなことさせるわけにはいかないと慌てた。
「ちょ、おろして!」
「はいはい、すぐそこまでだから」
聞く耳持たずとはまさにこのこと。
結局ベッドまで運ばれて、その置き方に優しさを感じる。
横に腰をおろした理央は胡坐をかいて、その上におれを抱きあげて乗せる。
「はい、先生のところで何してきたのかな?」
「普通にお話聞いてきただけ…」
「んん~~~」
「なにがご不満なのさ」
本気で怒ってないのは分かりきってるけど、本気で拗ねてそうではある。
「ゆきさ、先生に懐きすぎじゃない!?」
「そんなことないよ…であって3日?だよ?」
「いや、そんなことあるね。そもそも顔このみでしょ」
うっ
「否定できない…」
「だと思った~!!雰囲気隼人くん寄りだもん!」
確かに稲葉先生は顔というか雰囲気がドタイプである。
爽やか医学生って感じが、こう…
「じゃなくて!」
「おおう、なに」
「そんなことより、おれが聞いてきた話だよ」
「全然そんなことじゃないんですけど」
ぶーたれてる理央の頬を両掌で押しつぶしてその目を見つめる。
「理央はさ、病気のこととか今の状況とか聞きたい?」
「…自分のってことだよね?」
「そう」
「…そんなに悪い?」
その問いにぶんぶんと首を振る。
「確かに良くはないけど、希望が全くないわけでもない」
「そう…」
先ほどとは打って変わって、
不安げに揺れる瞳にこちらまで揺さぶられる。
そっと頭を胸に引き寄せてぎゅうっと強く抱きしめた。
「詳しく聞きたくないならそれでもいい。おれがいっぱいサポートするから。知りたいって思うなら先生のとこに一緒に行こう。いや、おれが話してもいい」
あまり怖がる様子や不安がる様子をおれには見せない人だから、抱き寄せた胸に擦り寄ってくるような様を見れば守らなければと本能が駆り立てられる。
(こわいよね…そりゃあそうだよね…)
彼はおれが幸せならば、というけれどそんなはずはないのだ。
いや、それも紛れもなくホントの気持ちなんだろうけど、生きている以上死に恐怖を感じるのもまた当然のことなんだ。
(でも先生に言われたことは一応聞かなきゃ…)
「ね、りお。詳しいを聞くかどうかは置いておくというか、後々でもいいとして、ひとつだけ考えてくれない?」
「ん?」
「この入院は1週間続くけど、その後のこと。そのまま入院して治療を受けるか、通院しながら治療を受けるか」
先生からの話の最後に本人に尋ねるよう頼まれたことだった。
「え…どっちでもいいの?」
「うん。先生がどちらでも構いませんので話し合って決めてください、って。…ただ、通院ってことは自宅療養だから万が一のとき対応の遅れは考えられるって言われた」
「そっか…」
顎に手を当ててうつむき、考え込む理央。
「…ちなみにおれはね、どっちでもいいよ。どっちになっても常に隣にいる」
だから、おまえがより安心できるほうを_
「ん……ゆきには苦労かけちゃうかもしれないけど…俺は家に帰りたい、かな」
顔をあげて微笑む彼に、ニカッて笑い返した。
「そっか!」
「うん」
理央に抱きしめられた体勢のままゴロン、と横に転がされる。
病院のベッドは少し硬いけど、狭くてふたりがくっつけるからいいね、なんていいながらしばらくゴロゴロと二人で転がっていた。
「あ、先生に通院にしますって言ってくる」
「お、俺もいくから」
「いや、寝とけよ」
「いーーーや」
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