神崎霊能探偵事務所

望月 まーゆ

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祓い屋からの招待状①

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「カケル君、大変です!家にこんな物が届いてました」

手足をバタバタさせ慌ててカケルに近寄ってくる心優。手には、手紙を持っている。

「ーーっんだよ!」

乱暴に心優が手に持っていた手紙を奪い取ると早速読み始める。そんなカケルの顔をじーっと見つめる心優。

カケルの表情が明らかに曇ったのが心優には分かった。

「どーでしょうか?」

不安そうに心優が尋ねると、

「ーーいいんじゃね、行って来いよ」

「ええーー!!」

カケルなら止めてくれると思っていたのだろう。まさかの回答に顎が外れそうになる心優。

ーーならばと、今度は心優が反撃に出る、

「ーーなら、カケル君一緒について来てよ」

「は?」と意表を突かれるカケルを無視し、

「だって、了承してくれたのはカケル君何だから最後まで面倒もみてよね」

「言ってる意味が分かんねーよ。心優ちゃん一人で行けよ」

「私は、最初から行く気は無かったのに行けって言ったのはカケル君だよ」

「なっ・・・」カケルが言いかけたところに間髪入れずに、

「自分の言った言葉の責任取ってよね!!」

カケルにグッと顔を近づける心優。その顔を真近に見て目線を逸らすカケル。



*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *





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姫木 心優 様


拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃は、神職家業の活動にご支援とご協力を賜りまして厚くお礼申し上げます。
 
さて、この度陰陽道連盟は、今回初めて本家・分家全て集めてあるイベントを開催したいと思っております。

このイベントを通じ、本家・分家の身分関係なく陰陽道として合流を深める良い機会だと思います。

皆様、是非ご参加下さいますようお願い致します。


陰陽道連盟会長

神宮寺 一成


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*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

こんにちは、姫木心優です。


みなさん夜の闇は、怖いですよね。

昼間は、全然平気な場所なのに、夜になると怖くなって行けなくなってしまう事ってありますよね。

それには、夜の闇が視界を奪ってしまうからです。

目に目えないモノを人は、恐れるモノなのです。


人は、昔から目に見えない恐怖と戦って来ました。

悪霊・妖怪など目に見えないモノに憑依され体内の内側から人間を死に落とし入れられいました。

そんな人間を救っていたのは、【祓い屋】と呼ばれる人間たちです。陰陽師とも呼ばれています。

祓い屋とは、生まれ持った才能の一種であり第六感が優れている為、他の人では、見えない者が見える能力が備わった人物です。

そのため、祓い屋は、家系で営むことが多く代々その血筋を絶やす事なく次の代へと受け継いでいました。

昔は、多くの祓い屋家系がありましたが、ある時を境に減少し今では、ほとんど祓い屋を見る機会はなくなりました。

現在、祓い屋として活動している家系は、
『姫木家』『天王寺家』そして最大権力を持っている『神宮寺』のみとなっています。

今回、私が招待された集まりには、上記の本家と呼ばれる家系以外の分家の祓い屋も集められた様です。

一体、沢山の祓い屋を集めて何を企んでいるのでしょうか?

みなさんも霊に取り憑かれたらすぐに、ご連絡下さいね。



*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


○県の山奥にある、神社にてーー


「こんな人数集めて何を始めようってんだ?」

「手紙では、確か【イベント】と書いてありました」

たくさんの神職の正装をした人々が集められていた。中には、心優と同じような巫女のような女性もいる。その中、カジュアルな黒のスーツ姿のカケルは浮いた存在に見える。

「イベントねえー、こんな山奥に来させられ茶の一杯も出せねー主催者の顔が見たいわ!」

心優が慌てて人差し指を口に当て「しっ!」と、
「カケル君声が大きいですよ。みんなこっち見てるじゃないですか」

「ふんっ、僕は別にこんな集まり関係ないからね」

「もーー、カケル君は関係なくても私は一応、呼ばれてますし・・・余り目立ちたくないので」

最後の方は声のトーンを下げ視線を斜め下に落としカケルの影に隠れる心優。



ーー数分後、

突然、大きな和太鼓の音が二回響き渡る。
その音は、どんどんと激しさを増し最後の一発は山が地響きを立てているのではないかと思うほどの大きさだった。

「みなさんお待たせ致しました。今回、陰陽道連盟の総会にお集まり頂き誠にありがとうございます。申し遅れました私は、今回の企画のサポートをさせていただきます、影山と申します。それでは、早速会長よりご挨拶をお願いします」

神社の宮の中より人影が現れたーー、

「コイツが祓い屋の長、神宮寺一成か・・・」

強面の顔に金色の神職の正装をしている。背中には神宮寺の家紋が大きく刺繍されている。

「皆の衆、よく集まってくれた。ここまでの同業者が集まったのは今まで無いことだと思う。今回の企画では、三大家元が入れ替わる可能性もある。心してかかるように」

その言葉に騒つく人々ーー。

「えっ、えっ? どーゆー事でしょうか?カケル君」

困惑する心優、明らかに姫木家の事を言っているようにカケルは聞こえた。

「神宮寺、天王寺、姫木・・・その中で今、一番力が落ちているのは当たり前だが姫木家。皆の前で恥でもかかせようってのか?」

カケルは、神宮寺一成を睨み付ける。その視線に気づいたのか、鼻で笑ってみせる。

「ーーでは、まずは小手調べと行こうか。この妖魔を放つので捕まえて私の前まで持ってくること。但し、十匹しかないので捕まえる事が出来なかった者はこの場で去っていただく」

神宮寺一成は、床に置いてあった鳥籠のような物を取り上げ、その場にいる人々に見せ付ける。鳥籠の中には、紫色の人魂のような物が何匹も動き回っている。

「この人数を集めておいて、たったの十匹・・・」

誰か一人が言い放つと、それに釣られざわざわと騒ぎ立てる会場ーー。

「文句のある奴は、前に出て来い!!」

神宮寺の強烈な一言は体の芯にまで響いた。それほどの覇気がこもった一言だ。

「・・・この親父、やはり只者じゃねーな」

カケルは動揺せずピクリとも動かず静止していたのを神宮寺一成は見逃さなかった。それを見て口元をニヤリと緩めた。

「なかなかの馬の骨も居るようだ。では、始める!」

鳥籠のような中から妖魔が一斉に飛び出して行ったーー。それを合図に一斉に妖魔を追いかけそれぞれ走り去って行った。

「か、カケル君何で追わないのよ。みんな行っちゃったわよ」

「別に良いのさ。代わりに働いてくれれば」

「えっ、どういう事?」

「何人か、僕と同じような考えの人もいるみたいだね」

「よく分からないです。早く捕まえた方が良いと思うのですが・・・」

「心優ちゃんは真面目だからね。僕みたいに上手くグレーな部分をいかに利用する事しか考えてない人間は楽する事しか考えてないのさ」

「グ、グレーの部分ですか・・・?」

「神宮寺一成の演説のグレーの部分は、『捕まえて俺の前で見せろ』特にルール説明はなかった。要は、相手から奪っても構わないってことさ」

「なるほどです。・・・けど、そんなに簡単に他の人から妖魔を奪えるんですか?」

「簡単ではないけど、やるしかないっしょ」

カケルは、先ほど皆が走り去って行った方向へとゆっくりと歩み出したーー。

「あっ、待ってよカケル君」

その後を心優が離れないように追いかけて行った。




ーー 祓い屋の名を賭けたゲームが始まるーー
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