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第1部 模擬大会編

模擬大会3回戦 2 (2)

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俺はユークリッド家に長男として生まれ、幼い頃から家を継ぐために剣術を学ばされていた。そのせいで友達もおらず、ただひたすら剣を極めるために鍛錬をしてきた。そんな俺の日常を変えたのはベテルギウスとの出会いだった。ベテルギウスとの出会いは5歳の時だった。



その日、俺は親に連れられて父の仲の良い貴族の家の子供の誕生パーティーに参加させられていた。
(はぁ…。なんでこんなのに参加しないといけないんだ?こんなのに来るぐらいなら剣術の鍛錬をしたいんだけど…。)
俺がそんなことを考えていると後ろから1人の少年が話しかけてきた。
「ねぇ君。剣術やってるだろ。」
「は?いきなりなんなの?」
俺に話しかけてきた少年はハッとして俺の問いに答えた。
「ああ。ごめんごめん。僕はベテルギウス・アルケー。5歳だ。君の名前と歳は?」
「僕はシリウス・ユークリッド。君と同じ5歳だよ。」
「同い年か!これからよろしくな!それで?剣術はやってるんだろ?」
「うん、やってるけどなんでわかったの?」
俺が問うとベテルギウスは笑いながら答えた。
「ふふふ。簡単だ。だってお前の手、マメだらけじゃないか。それは剣術を本気でやってないとできないようなマメだからな。僕も剣術は習ってるから分かるよ。」
「君も剣術をやっているのか。いずれ試合でもしてみたいね。」
「ああ。きっと遠くない内に。」
俺たちはその日、そう言って別れた。俺はこの時こいつとはもう会わないだろうと思っていた。しかし、俺のそんな予想は呆気なく覆されることとなった。

パーティーから数日後、俺はいつも通り剣術の鍛錬に没頭していた。1人で素振りをしている時、突然後ろから声をかけられた。
「おーやってるな、シリウス。遊びに来たぞー。」
俺は突然のことに驚き、勢いよく振り返った。するとそこに居たのはパーティーであった少年だった。
「お前、あの時の!名前は確か…ベテルギウス・アルケーだったな。どうしてここに居るんだ!?」
「どうしてってお前の親父さんから聞いてないのか?お前の親父と俺の親父が昔から仲が良かったらしくて子供同士も仲良くさせようとしてるらしいぞ。で、ちょうど同い年で剣術を習ってる俺とお前をよく会わせるんだとよ。」
俺が今まで全く聞いたことのないことを説明された。
「は?なんだそれ。じゃあお前があの時声掛けてきたのってそれを知ってたからか?」
「おう。その通りだ!で、そろそろ俺も質問していいか?」
俺はベテルギウスの突然の切り返しに戸惑いながら返事をする。
「お、おう。なんだよ。」
「なんでお前1人で素振りしてたんだ?向こうの方で何人も集まってやってただろ?それに混ざらないのか?」
ベテルギウスは遠くに見える集団を指して言った。
「俺はあの集まりから追放されたんだ。強すぎてな。だから一人で鍛錬してるんだよ。」
「ふーん。そんなに強いの?だったら俺と試合しようぜ。」
「あ、ああ。前に約束したし構わない。」
俺はそう言いながら少し離れた所に置いてあった予備の木剣を手に取り、ベテルギウスに投げ渡す。それをベテルギウスは上手く取ると数回素振りをした。
「うん。悪くないな。じゃあ早速始めようか。」
「ああ。おれはいつでも構わない。」
俺がそう言うとベテルギウスが地面に落ちていた小石を拾った。
「じゃあこの石が地面に落ちたら開始にしよう。」
「それでいい。早く始めよう。」
俺がそう急かすとベテルギウスは手に持っていた小石を上に向かって投げ上げた。お互いに構えを取り小石が落ちてくるのを待った。数秒後、小石が地面に落ちてきた。それと同時にお互いが動き出した。


試合の結果から言うと圧倒的だった。同時に動き出し、先に攻撃を仕掛けたのは俺だったが確実に当たったと思っても気づいたら受け流されてこっちに一発入れてきた。それを数回繰り返して、とうとう俺は立てなくなった。
「はぁはぁはぁ…。お前…なんで…そんなに強いんだよ。」
「まあな。お前もなかなかの実力だったぞ。まあまだまだだけどな。」
「ちっ、バカにしてんのか?このやろー。絶対にお前を超えてやるからな!覚悟しとけよ!」
「少なくともあと10年は無理だな。楽しみにしてるぞ。」
その日から、俺たちはライバルとしてお互いに鍛錬を頑張った。そして俺たちの出会いから5ヶ月後。俺たちは別れることとなった。
「は!?魔術学園に行くだと!?何考えてるんだよ!俺たち一緒に剣術学園に行って一緒に軍に入る約束しただろ!裏切るのかよ!」
「しょうがないだろ!そもそもお前わかってるのか、軍に入るのがどういう意味なのか!お前の夢は〖誰も傷つかない世界を作りたい〗だったよな?軍に入ってそれが為せるのか!軍に入ったら戦争だけじゃなくて罪のない人間を殺したりしないといけないんだぞ!お前はそれでいいのか!」
「この分からず屋!そんな軍を変えるために軍に入るんだよ!」
「剣術だけで軍をのし上がるのは無理だ!だから俺は魔術を学びに行くんだよ!剣術で1人殺す間に魔術はその何十倍も殺せる!軍をのし上がるなら魔術も使える方が圧倒的に簡単だ!」
俺たちはお互いの意見を言い合ったがお互いに信念を曲げることは無かった。
「「この分からず屋!」」
俺たちはそう言ってお互いに木剣で斬りかかった。最初は互角だったが結果は俺の負けだった。俺は剣を飛ばされ尻もちを着いた。その俺に剣を突きつけベテルギウスは言い放った。
「俺の勝ちだ。俺は俺の道を行く。お前とは違う道にはなる。だが、もしまた俺たちが交わる事があってまだ納得いかないならその時はまた戦おう。じゃあな。」
ベテルギウスはそう言って帰って行った。俺たちはそれ以降全く会うことはなくなった。
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