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23-1 愛してる
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ディークは気になった箇所を何度も読み返し考える。
『私はこの塔を出たら処刑される。私が死んだら塔の鍵も、この書も全て封印される』
『呪いを解くことが出来る者は……この塔を開けることが出来る者は……現れるのだろうか?』
『心から誰かを愛し愛され、そして全てを捧げるほどの愛を知ったとき』
ディークは本から目を離し、力なく座り込むセルヴィを見た。
(この塔も、この日記も封印されていた……確かに今まで誰もこの塔に入った気配はなかった……封印されていたからか……しかし、なぜ俺たちには封印を解くことが出来た? なぜ塔に入ることが出来て、この日記も読むことが出来たんだ?)
セルヴィを見詰めたまま考え込む。
(愛……全てを捧げるほどの愛……)
「殿下、今まで呪いを受けていた第一王子の方々は結婚されたりはしていたのですか? それか婚約者……いや、愛人でも良い」
「?」
セルヴィは茫然としていたが、ディークの問いに顔を上げた。しかしディークの質問の意図が分からず首を傾げる。
そんなセルヴィの横に腰を下ろし、膝を付いたディークはセルヴィの手を取り、親指ですりっと撫でる。
「今のこの俺のように呪われた第一王子の傍に、呪いごと受け入れて寄り添う人物はいたのか、と聞いているんです」
そう言葉にし、セルヴィの手の甲に口付ける。チュッと音を立て、口を少し離し、ちらりとセルヴィの顔を上目遣いに見る。セルヴィはみるみるうちに真っ赤な顔となり固まった。
予想通りの反応にディークはクスクスと笑い出し、セルヴィは案の定怒り出す。
「や、やはり馬鹿にしているのだろう!」
「アハハ、馬鹿になんかしてませんってば。可愛いからだって言ってるじゃないですか」
「!!」
セルヴィはますます赤くなり、なにか言おうとしていた言葉は口から出ずにパクパクと動かすだけだった。
「と、まあ殿下が可愛いのは置いといて……」
「だ、だから可愛いって!!」
「プッ、いや、だからそこじゃなく。ブフッ。だから、えっと、そう、過去の第一王子に傍で支える人がいたのか、ですよ」
セルヴィは真っ赤な顔のまま、不機嫌そうにディークを睨むが、少し視線を逸らし考え込む。
「いや、私が知る限りではそういった人がいた記憶はないし、もっと昔の第一王子たちも妃がいた、という話も聞いたことはない。愛妾くらいはもしかしたらいたのかもしれないが……誰だって死ぬと分かっている人間の傍にいようとなんて思わないだろう」
セルヴィは自嘲気味に笑う。しかし、ディークは真面目な顔となり考え込む。
「そうですか……」
(愛妾がいたにしても記録には残さないだろうしな……そこは当てにはならないが……まあ、愛妾のような立場の人間が呪いを受け入れ寄り添ってくれるのか、というのも甚だ疑問だしな……それに、今の殿下のように第一王子自ら他人を拒絶していたのかもしれない……)
ディークはこのミルフェン城へ来た当初のセルヴィを思い出す。明らかに他人との繋がりを避けていた。他人を拒絶し関わらないように、独りきりで孤独と痛み……そして死の恐怖と戦っていた……。今までの第一王子もきっと今のセルヴィと似たようなものだったのだろう。
(塔や日記の封印が解けた理由……今までの第一王子とは違うところ……)
ちらりとセルヴィを見詰めると、その視線に気付いたセルヴィはディークと目が合ったと同時に少し落ち着いていた顔が再び火照り出し、目が泳ぐ。
ディークはクスッと笑い、セルヴィの顔を覗き込んだかと思うと、チュッと軽く唇を合わせた。
「だ、だから! お前は!!」
セルヴィは真っ赤な顔のままディークに文句を言おうと目線を合わせるが、そこには真面目な顔のディークがいた。
「ディ、ディーク?」
「殿下、ちょっと確認したいことがあります。今から殿下の部屋に戻りましょう」
「え?」
なにがなんだか分からないといった顔のセルヴィをよそに、ディークはセルヴィの腕を掴み、仮面を付けさせ地下室から出る。初代王妃の日記は地下室に残し、そして、封印を施していた初代国王の名となっていた本たちを元の場所に戻していく。すると、地下室は完全に消え去り、まるで夢でも見ていたかと思う程、跡形もなく消えた。
「本当に凄い魔法だな」
ディークは感心しつつ、茫然としたままのセルヴィの腕を引っ張りずんずん進む。夕食はセルヴィの部屋で軽く済ませたい、とトルフに告げ、軽食を用意してもらいディーク自身がセルヴィの部屋まで二人分運ぶ。
トルフやイアンたちは驚きの表情を浮かべていたが、ディークは気にするでもなくその場をあとにする。セルヴィへの気持ちを受け入れてしまった今、周りの目が全く気にならなくなっていたことに、自身で笑うのだった。
セルヴィは訳も分からずディークに引かれるがまま、自身の部屋へと戻った。部屋へと戻るとすでに夜も更け暗い室内。窓から月明りだけが漏れている。持って来た軽食を食べるのかと部屋の灯りを点けようとすると、ディークはおもむろにセルヴィの腕を引いた。
『私はこの塔を出たら処刑される。私が死んだら塔の鍵も、この書も全て封印される』
『呪いを解くことが出来る者は……この塔を開けることが出来る者は……現れるのだろうか?』
『心から誰かを愛し愛され、そして全てを捧げるほどの愛を知ったとき』
ディークは本から目を離し、力なく座り込むセルヴィを見た。
(この塔も、この日記も封印されていた……確かに今まで誰もこの塔に入った気配はなかった……封印されていたからか……しかし、なぜ俺たちには封印を解くことが出来た? なぜ塔に入ることが出来て、この日記も読むことが出来たんだ?)
セルヴィを見詰めたまま考え込む。
(愛……全てを捧げるほどの愛……)
「殿下、今まで呪いを受けていた第一王子の方々は結婚されたりはしていたのですか? それか婚約者……いや、愛人でも良い」
「?」
セルヴィは茫然としていたが、ディークの問いに顔を上げた。しかしディークの質問の意図が分からず首を傾げる。
そんなセルヴィの横に腰を下ろし、膝を付いたディークはセルヴィの手を取り、親指ですりっと撫でる。
「今のこの俺のように呪われた第一王子の傍に、呪いごと受け入れて寄り添う人物はいたのか、と聞いているんです」
そう言葉にし、セルヴィの手の甲に口付ける。チュッと音を立て、口を少し離し、ちらりとセルヴィの顔を上目遣いに見る。セルヴィはみるみるうちに真っ赤な顔となり固まった。
予想通りの反応にディークはクスクスと笑い出し、セルヴィは案の定怒り出す。
「や、やはり馬鹿にしているのだろう!」
「アハハ、馬鹿になんかしてませんってば。可愛いからだって言ってるじゃないですか」
「!!」
セルヴィはますます赤くなり、なにか言おうとしていた言葉は口から出ずにパクパクと動かすだけだった。
「と、まあ殿下が可愛いのは置いといて……」
「だ、だから可愛いって!!」
「プッ、いや、だからそこじゃなく。ブフッ。だから、えっと、そう、過去の第一王子に傍で支える人がいたのか、ですよ」
セルヴィは真っ赤な顔のまま、不機嫌そうにディークを睨むが、少し視線を逸らし考え込む。
「いや、私が知る限りではそういった人がいた記憶はないし、もっと昔の第一王子たちも妃がいた、という話も聞いたことはない。愛妾くらいはもしかしたらいたのかもしれないが……誰だって死ぬと分かっている人間の傍にいようとなんて思わないだろう」
セルヴィは自嘲気味に笑う。しかし、ディークは真面目な顔となり考え込む。
「そうですか……」
(愛妾がいたにしても記録には残さないだろうしな……そこは当てにはならないが……まあ、愛妾のような立場の人間が呪いを受け入れ寄り添ってくれるのか、というのも甚だ疑問だしな……それに、今の殿下のように第一王子自ら他人を拒絶していたのかもしれない……)
ディークはこのミルフェン城へ来た当初のセルヴィを思い出す。明らかに他人との繋がりを避けていた。他人を拒絶し関わらないように、独りきりで孤独と痛み……そして死の恐怖と戦っていた……。今までの第一王子もきっと今のセルヴィと似たようなものだったのだろう。
(塔や日記の封印が解けた理由……今までの第一王子とは違うところ……)
ちらりとセルヴィを見詰めると、その視線に気付いたセルヴィはディークと目が合ったと同時に少し落ち着いていた顔が再び火照り出し、目が泳ぐ。
ディークはクスッと笑い、セルヴィの顔を覗き込んだかと思うと、チュッと軽く唇を合わせた。
「だ、だから! お前は!!」
セルヴィは真っ赤な顔のままディークに文句を言おうと目線を合わせるが、そこには真面目な顔のディークがいた。
「ディ、ディーク?」
「殿下、ちょっと確認したいことがあります。今から殿下の部屋に戻りましょう」
「え?」
なにがなんだか分からないといった顔のセルヴィをよそに、ディークはセルヴィの腕を掴み、仮面を付けさせ地下室から出る。初代王妃の日記は地下室に残し、そして、封印を施していた初代国王の名となっていた本たちを元の場所に戻していく。すると、地下室は完全に消え去り、まるで夢でも見ていたかと思う程、跡形もなく消えた。
「本当に凄い魔法だな」
ディークは感心しつつ、茫然としたままのセルヴィの腕を引っ張りずんずん進む。夕食はセルヴィの部屋で軽く済ませたい、とトルフに告げ、軽食を用意してもらいディーク自身がセルヴィの部屋まで二人分運ぶ。
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