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29-2 ジウシードの母
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ジウシードのその言葉にキュンとしてしまった。先程までのしょんぼりワンコとは思えぬ男らしい発言! かっこいい!
「それにアキラは世界で一番可愛い」
「は!?」
俺に振り返り微笑んだジウシード。う、うん、その発言はちょっと……いや、かなり恥ずかしい……。
おばさん以外の全員が「ブッ」と噴き出した。おい。
しかしおばさんは顔を真っ赤にさせながら怒り心頭のようだった。頭から湯気が出そうだな。
「こんな男が可愛いはずがないでしょう!! 頭がおかしくなったの!?」
「貴女のほうがおかしくなったのではないですか?」
「なんですって!?」
おばさんはキッと俺を睨み付けると、こちらに歩み寄ろうとした。咄嗟にリョウが俺の前へと立ち、ジウシードがおばさんの腕を掴んだ。
「離しなさい!! こんな奴放り出してやるわ!! 目を覚ましなさい!!」
「いい加減にしないと、母上とて容赦はしません」
ギリッとおばさんの手首を絞め上げたジウシードは、凍り付くような冷たい視線を落とした。おばさんは蒼褪めながら後退る。
「母親にこんな態度を取っていいと思っているの? 領主になれるよう、私がどれだけ苦労したと思っているの!? この親不孝者!!」
「俺は……領主になりたいと言った覚えはありません」
カッと怒りを露わにしたおばさんはジウシードに掴みかかろうとしたところでラウルに腕を掴まれた。
「ラウル!! 離しなさい!! 無礼者!!」
「はぁ……」
あからさまにラウルは溜め息を吐き、そしてジウシードに視線をやると聞いた。
「強制退出させても良いでしょうか?」
「あぁ、頼む」
「かしこまりました」
ラウルはそう返事をすると、おばさんの両手首を掴む。そして後ろ手に拘束したかと思うと、キーキーと金切り声を上げていたおばさんは急にぐったりと前のめりに倒れた。
「えっ!?」
一体何事!? と思うとラウルはおばさんを抱き上げ、そのままスタスタと退出していった。
「な、なにが起こったんだ?」
リョウと二人で唖然としていると、ジウシードが俺の前へと歩いて来た。そして、俺の両手を握り、ふぅぅっと大きく息を吐いた。
「ラウルが痺れさせて気絶させたんだ」
「し、痺れ……」
な、なるほど? 魔法を使ったってことか?
「アキラ……すまなかった……」
「え?」
ジウシードは顔を伏せたまま呟いた。その声は少し震えているようで、握る手も少し震えている気がした。
「母がお前に酷いことを言った。本当にすまない」
俯いてしまい表情がよく分からないが、ジウシードが泣いているような気がした。
「お前のせいじゃないだろ。俺は大丈夫。こんな俺でもジウシードが愛してくれているのは分かってるし」
そう言ってジウシードの頬に手を伸ばし、そっと包んだ。ジウシードはビクリとし、顔をこちらに向ける。その顔はやはり泣きそうな顔だった。
「大丈夫だよ。お母さんになにを言われようと、ジウシードが俺を嫌いにならない限りは、俺は絶対お前の傍にいるから」
「アキラ……」
眉を下げ、涙が滲むジウシードの背中に腕を回し、ぎゅっと抱き締めた。ジウシードは「ひと前お触り禁止令」のおかげか、一瞬躊躇ったが、俺から抱き付いてきたのなら良いのだろうという判断をしたようで、同様にぎゅうっと抱き締めてきた。
「俺がお前を嫌いになることなど一生ない」
「うん」
「お前はどうだ」
「え、俺? ……俺もないよ」
「なにか一瞬躊躇しなかったか?」
「し、してない!!」
「そうか」
「そうだよ!!」
いつもなら笑ってくれそうな会話なのに、ジウシードは俺をぎゅうっと抱き締め、首筋に顔を埋めたまま、しばらくなにも言葉にすることはなかった。
「それにアキラは世界で一番可愛い」
「は!?」
俺に振り返り微笑んだジウシード。う、うん、その発言はちょっと……いや、かなり恥ずかしい……。
おばさん以外の全員が「ブッ」と噴き出した。おい。
しかしおばさんは顔を真っ赤にさせながら怒り心頭のようだった。頭から湯気が出そうだな。
「こんな男が可愛いはずがないでしょう!! 頭がおかしくなったの!?」
「貴女のほうがおかしくなったのではないですか?」
「なんですって!?」
おばさんはキッと俺を睨み付けると、こちらに歩み寄ろうとした。咄嗟にリョウが俺の前へと立ち、ジウシードがおばさんの腕を掴んだ。
「離しなさい!! こんな奴放り出してやるわ!! 目を覚ましなさい!!」
「いい加減にしないと、母上とて容赦はしません」
ギリッとおばさんの手首を絞め上げたジウシードは、凍り付くような冷たい視線を落とした。おばさんは蒼褪めながら後退る。
「母親にこんな態度を取っていいと思っているの? 領主になれるよう、私がどれだけ苦労したと思っているの!? この親不孝者!!」
「俺は……領主になりたいと言った覚えはありません」
カッと怒りを露わにしたおばさんはジウシードに掴みかかろうとしたところでラウルに腕を掴まれた。
「ラウル!! 離しなさい!! 無礼者!!」
「はぁ……」
あからさまにラウルは溜め息を吐き、そしてジウシードに視線をやると聞いた。
「強制退出させても良いでしょうか?」
「あぁ、頼む」
「かしこまりました」
ラウルはそう返事をすると、おばさんの両手首を掴む。そして後ろ手に拘束したかと思うと、キーキーと金切り声を上げていたおばさんは急にぐったりと前のめりに倒れた。
「えっ!?」
一体何事!? と思うとラウルはおばさんを抱き上げ、そのままスタスタと退出していった。
「な、なにが起こったんだ?」
リョウと二人で唖然としていると、ジウシードが俺の前へと歩いて来た。そして、俺の両手を握り、ふぅぅっと大きく息を吐いた。
「ラウルが痺れさせて気絶させたんだ」
「し、痺れ……」
な、なるほど? 魔法を使ったってことか?
「アキラ……すまなかった……」
「え?」
ジウシードは顔を伏せたまま呟いた。その声は少し震えているようで、握る手も少し震えている気がした。
「母がお前に酷いことを言った。本当にすまない」
俯いてしまい表情がよく分からないが、ジウシードが泣いているような気がした。
「お前のせいじゃないだろ。俺は大丈夫。こんな俺でもジウシードが愛してくれているのは分かってるし」
そう言ってジウシードの頬に手を伸ばし、そっと包んだ。ジウシードはビクリとし、顔をこちらに向ける。その顔はやはり泣きそうな顔だった。
「大丈夫だよ。お母さんになにを言われようと、ジウシードが俺を嫌いにならない限りは、俺は絶対お前の傍にいるから」
「アキラ……」
眉を下げ、涙が滲むジウシードの背中に腕を回し、ぎゅっと抱き締めた。ジウシードは「ひと前お触り禁止令」のおかげか、一瞬躊躇ったが、俺から抱き付いてきたのなら良いのだろうという判断をしたようで、同様にぎゅうっと抱き締めてきた。
「俺がお前を嫌いになることなど一生ない」
「うん」
「お前はどうだ」
「え、俺? ……俺もないよ」
「なにか一瞬躊躇しなかったか?」
「し、してない!!」
「そうか」
「そうだよ!!」
いつもなら笑ってくれそうな会話なのに、ジウシードは俺をぎゅうっと抱き締め、首筋に顔を埋めたまま、しばらくなにも言葉にすることはなかった。
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