不確定恋愛。

小都

文字の大きさ
2 / 2

確定恋愛中。

うぅ・・・きつい・・・

朝のラッシュの満員電車はきつい。
押されるし身動きとれないし足は踏まれるし
空気は薄いし何だか臭い。

気分が悪くなる人もたまに見かける。

毎日毎日の事だし、少しずつどうすれば自分が楽か、というのは学んだけれど
6駅で20分。
この距離と時間が何よりも苦痛なのはずっと変わらなかった。






確定恋愛中。






ぞわっと鳥肌が立った。
満員電車の中、尻をするりと撫でられた。

くそ・・・!またか!

俺は数か月前に痴漢やストーカーにあった。

自分はそれまで、男同士とか、自分がされる側になる事なんて
全くと言っていいほど微塵も考えていなかった。
だけどそれは俺の常識、知識、認識不足だという事を学んだ。
俺が、親友の健曰く『男にしては可愛い顔』
なんだという事を嫌でも認識させられた出来事だった。

あの事は、思い出す度にまだ気持ち悪くなったり、
腹が立ったり、落ち込んだりもするけれど、
極力考えないように、考えないようにと自分に言い聞かせて
なんとか平常心を装えるようになったのだ。

それから、俺は健に言われた通り自分の容姿を認識して
なるべく気を付けるようにはしているのだが
こんな満員電車ではどうしようもなくて・・・

やっぱり数週間に1回くらいの割合でまだ痴漢にあうのだった。

あぁ、最悪。
なんとか身を捩りながら抵抗するけれどその抵抗も満員電車では微々たるもの。
中々うまく痴漢を追い払う事ができないでいた。

その時、電車が大きく揺れた。
その揺れに乗じて腕を掴まれ身体がぐいと横に引っ張られた。

「わっ!」

よろける様に腕を掴んだ人物に倒れかかるとそこにいたのは道隆だった。

「大丈夫か?」
「あぁ、なんとか…ね」

そう言いながら道隆は俺の身体を痴漢から隠すように
満員電車の中ながら強引に身体を移動させた。

「ありがと」
「いや」

そうして俺は道隆の腕に守られるようにして学校のある駅まで着いたのだった。


佐藤道隆は俺のストーカー事件に係わった人物だ。
最初のきっかけは佐藤道隆が落とした生徒手帳を拾ったという
なんとも有りがちな出会いだがその後色々な事があって
今は、なんていうか、俺の、彼氏だったりする。

だからこうして助けてくれるのだ。


最初は男同士なのにっていう気持ちが強かったけど
自分の気持ちに正直に問いかけてみたら結局はこうなってしまった。
それについては恥ずかしいけどもう納得しているから触れないでおく。

「幹おはよー!道隆先輩もおはようございまーす」

ホームに降りて歩きだした所でのんびりした声に呼び止められる。
長崎健。こいつも、ストーカー事件に係わった俺の友人。
たぶん、道隆と健がいなかったら今ここに俺はいないだろう。
そのぐらいこの二人は俺の中の重要なポジションを占めている。

「おはよ」
「おはよう」

健は不思議なやつで、俺の心を読んで行動するのがうまい。
俺が道隆の事、気になっていたのを見抜いていたし、
それを踏まえた上で道隆を屋上まで呼び出しつつ
道隆の話題を俺に切り出したのも全部こいつの計算の上での事だった。
後で知った時はそれは吃驚したものだ。

「相変わらず仲がいいですねー」
「なっ健!」

からかわれて頬を赤くした俺を見て笑って
「ま、俺も今日は若菜とデートだけど」
と言って健はニッと笑った。

「BL好きの若菜ちゃんは元気か」
「おー元気元気。昨日も電話の向こうで萌え~って言ってたぞ」

俺がそう言って仕返しすると健は苦笑した。
健の彼女はBLというものが好きらしい。
それのおかげで健に色々世界を教えてもらったというのもあるが
まだ見ぬ若菜ちゃんに俺が若干引いているのも仕方ない事だろう。

「二人は今日は?デート?」
「・・・・・まぁ」

その言葉を聞いてにんまりと健は笑って
「良かったなぁ~雨降って地固まったみたいで」
と鼻歌交じりに少し先を歩いて行った。

俺たちもそれに倣って学校までの道のりを進んでいった。





あれから道隆と、その、両想いということになって、
付き合うようになって数ヶ月経った。

あの時はまだ道隆の事をよく知らなくて
付き合っていく中でお互いの事を教えあっていった。

道隆には弟が二人いるとか、
俺と付き合う前に付き合っていた人がいたが
その人はちゃんと女の子だった、とか。

道隆は口数は多くないものの、意思表示ははっきりしているし
気持ちは言葉よりも動作ですぐに出るから意外と分かりやすかった。
だから、すごく大切にされてるのも分かるし、
俺の事、すごく好きなのかな、っていうのも態度で分かった。

そういう態度を見せられると、
俺も何だか嬉しくなって頬を染めずにはいられなくなる。
とてもくすぐったくて、その時は道隆にぎゅっとしがみ付いてしまう。
そうすると、やっぱり道隆もぎゅうと抱きしめ返してくれるんだ。
それが、何より嬉しかった。

そんな道隆もやっぱり男だなって思うのはその後の事。

口数が少ないから最初こそ分かりにくかったが
草食のような態度とは裏腹に道隆は意外にもガツガツしていた。

最初は、あんな事があってトラウマになっている俺に
これ以上ないって程すごく優しくしてくれた。
でも慣れてきた頃から道隆はもう何だかめちゃくちゃで。
我慢できないってくらいに激しい。
それに俺もいつもとろとろにさせられちゃうから文句ばっかり言えないけど。

でも、ぎゅってしてくれるのは嬉しいけど、
毎回のように俺の弱いところを探り出すから
もうホント俺の身体がもたなくなってくるんだ。

もうちょっとゆっくり、ゆっくりして、って
何度も何度もお願いするのにちょっとすると忘れてる。

だから最後には感じすぎて泣いちゃうし、
びくびくする身体を抑えられなくなる。

それだけ愛されてるって、それは分かるけど
できればもうちょっと俺の言う事も聞いてほしいのが目下の悩み。

「幹、今日も俺の家に寄っていくだろう?」
「う…」

ほら、こうやってデートになるといつも。
いや、デートじゃなくたってそうだけどさ。

……別に、俺だって嫌な訳じゃないんだ。
道隆のこと好きだし、そりゃそういう事したいって思うし。
道隆もすごい好きって思ってくれてるのが分かるし。

でも、でも、毎回毎回しつこいんだ…!
疲労感がハンパないんだよ……

「どうした?」
「……」

でもそんなこと言っても道隆には通じない。
じっと道隆を見つめるけど、道隆はただ不思議そうに俺を見るばかり。

「幹?」
「ううん、何でもない。寄っていくよ」

俺がそう言うと道隆はふわっと笑った。

道隆の家は共働きで、弟たちは部活で帰りが遅い。
そうじゃなくても弟たちには既に俺たちが付き合っている事を
道隆は話しているらしく特別問題ないらしい。

それにしたって……ねぇ。
毎回毎回こんなにしてて、道隆は全然疲れないの?

気持ち良くて、いつも何がなんだか分からなくなっちゃうくらい
何度も何度も俺を追い上げてめちゃくちゃにするのに
自分だってすごく疲労感はあるはずなのに。

それともこれが普通なの?
みんなこうなの?

嬉しそうに笑っている道隆の隣で、
道隆にバレないように俺は溜め息をふうと吐いた。




いくら俺の気持ちに聡いとは言っても、
こんなこと健も想像してないだろうなぁ・・・

ってか健にこんなこと言っても、健は道隆の気持ちのが分かるんだろうし。
一番頼れる健に相談することもできず
もんもんと悩みを抱える俺に、誰か解決策を授けてほしい。

幸せの中にある悩みを
ちょっと抱えるそんな俺の日常。
あぁ今日も空は快晴。

感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話

ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生 Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158 ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/ fujossy https://fujossy.jp/books/31185

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

田中家の男たち…

B
BL
田中家… ごく普通のどこにでもいる5人家族… そんな田中家の男たち… 父親-田中駿-Shunー in one's 40s businessman 長男-田中慎二-Sinjiー in one's 10s 男子高校生 次男-田中守-Mamoruー in one's 10s男子中学生 祖父-田中昂-Noboruー in one's 60s free-lance

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー