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やって来ました、異世界に!

初めての依頼2

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 美湖は、ラティアの町を出て、町の周囲を囲っている草原「ラティアヌス草原」にやってきていた。この、草原では、今回、美湖が受けた依頼のほとんどが達成できる。

「よーし、初仕事頑張るぞ!!」

 美湖は、腰に差しているブロンズソードを抜いて、周囲を警戒しながら歩いていく。鑑定スキルを使用して、周囲に有用な素材がないかもチェックしていく。

「へぇ、鑑定スキルでも、草を鑑定すると『雑草』って出るんだ。元の世界では、どんな雑草にも名前があったのに。」

 美湖は、草に鑑定をかけてライフミントを探していく。10分くらい探し続けていると、

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 ライフミント
 主に、回復ポーションの材料として使われる。
 そのまま、ハーブティーにして飲んでも体力回復効果がある。
 生命力が強く、どんな地域でも育つことができる。
  採取する際は、根本から摘み取るか、土ごと掘り上げ、植木鉢に植え替える。
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 と、目的のライフミントが見つかった。

「やった。ライフミントだ。ん~、採取の方法聞くの忘れたなぁ。確か、数の指定はなかったから、両方のパターンを同じだけ採って行こう。」

  美湖は、ライフミントを根本から摘み取り、封じ札に封じる。すると、封じ札にライフミントの絵が浮かび上がっ上がり、「ライフミント×1」と表示された。さらに、近くにライフミントが生えていたので、今度は掘り上げて封じてみた。すると『ライフミントの株×1』と表示された。

「おお、土も一緒に封じちゃうんだ。これで一つのアイテム、ってことになるのかな。」

 美湖は、封じ札をしまうと、再びライフミントを探して歩き出した。
 
 歩きだしてから少ししたところで、牛のような動物と遭遇した。美湖はそれに鑑定スキルを発動する。

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 フレンジカウ
 レベル 2
 HP  70/70
 ST  50/50
 MP   0/0
 AT  25
 DF  20
 MA  0
 MD  0
 SP  20
 IN  30
 DX  10
 MI  10
 LU  14 
 スキル
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 と出た。

「うわぁ、ほんとに牛だね。しかも、僕のステータスよりもすごく低い。これなら勝てるかな。」

 美湖は、腰に下げているブロンズソードを抜くと、フレンジカウの後方から側面に回り、ブロンズソードで首を斬りつけた。

「ブモォ!!?」

 フレンジカウは、その一撃で首から両断され、力なく倒れこんだ。

「ん、やっぱり倒せたね。んじゃ、銅の封じ札に封札っと。」

 美湖が封じ札をかざしてスキルを発動すると、フレンジカウが封じ札に封じられ、札にはフレンジカウの絵が浮かび上がり、『フレンジカウの死体×1』と表示された。

 美湖はそれからも、フレンジカウを狩りながら、ライフミントを採取していった。時折、それ以外の薬草や、何かに使えそうなものがあれば、追加で封じていく。美湖が見つけたのは、『マナミント』、『ポイズミール』、『石ころ』、『フレンジカウの骨』、『錆びた短剣』だった。どうやら、魔物と人族の戦闘も行われているらしい。結構な数の劣化した武器や防具が落ちていた。

「やっぱり、異世界なんだな。人が死んでも、野ざらしにされるくらいには、命が軽いんだ。それに、死体を見ても、魔物を殺しても特に罪悪感や、嫌悪感を感じない。デュナミス様が言っていた最適化ってやつかな。助かるけど、釈然としないかな。」

 美湖は、拾ったものをすべて封じ札に封じていく。また、フレンジカウや、コケなどの魔物とも遭遇し、その死体を封じていくのだった。

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 それから美湖は、日が傾くまで探索を続けたが、街に帰れなくなるので探索を切り上げることにした。ラティアの街に帰り、そのままクラン支部に向かう。支部に着くコロンは、もう日もだいぶ暮れていたので人もまばらだった。

「あ、美湖さん。今お帰りですか?」

 支部に入ってきた美湖を見つけたアリアが、大きく手を振って声をかけてきた。

「はい、少し張り切りすぎました。一応、依頼の物は集まったと思うのですが。」

 美湖はそう言って、封じ札の入ったカードケースをポンポンと叩く。アリアはそれに気づき、

「わかりました。では、解体室に行きましょう。」

 と、少し呆れた顔で美湖を、解体室に案内した。

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「おや?アリアじゃねぇか。どうしたんだ?」

 解体室に入ると、筋骨隆々の男がいた。

「ええ、ドラグさん。この方の今回の納品をこちらで受け付けようと思いまして。」

 アリアも、軽く会釈してから、ここに来た理由を伝える。

「ほう、見ねぇ顔だな。俺は、ドラグ・エレント。このクラン支部で、解体室のまとめ役をしている。ま、ここの責任者ってことだな。」

「初めまして。僕は美湖と言います。昨日探索者になったばかりですけど、よろしくお願いします。」

 美湖も、自己紹介を済ませる。

「何だ、新入りだったのか。なら、ここで受け付けなくても、買取カウンターですむだろうに。」

「ふふ、そういってられるのも今のうちですよ。美湖さん、今回の成果を見せてください。」

 アリアに言われ、美湖は今回集めた物を封じ札から解放した。美湖、アリア、ドラグの前に積まれる素材の山に、美湖以外の二人は呆然としていた。封じ札からの解放が終わると、まずアリアが、

「美湖さん、やりすぎです。とりあえず数えるので待っててください。」

「あ、アリアさん。あと、天然水とライフミントの土つきもあるんですけどどうしたらいいですか?」

 美湖の言葉に、

「...わかりました。植木鉢とタルを持ってきますからそちらに出して下さい。」

 アリアは呆れながら、植木鉢と樽を持ってきた。美湖は、まず植木鉢にライフミントの株を一つずつ入れていく。そして、一緒に取ってきていた土を隙間に入れて、ライフミントを植え付けていった。次に、天然水を樽に入れていくが、少しだけ残し、ライフミントの鉢植えに与える。

「おお、美湖さん、なかなか処理がお上手ですね。」

 それを見ていたアリアは、感心したように呟く。実際、美湖の植え付けは店に並んでいても遜色ないものだった。
 それから、アリアとドラグで素材の査定を行うとのことなので、美湖はエントランスに戻る。エントランスでは、ほかのクラン員が依頼を確認したり、同業者と意見交換したりとかなりの賑わいも見せていた。美湖はそのエントランスにあるベンチで、アリアの作業が終わるのを待っていた。

「おい、お前確か昨日探索者になった新入りだよな?」

  美湖に、一人の男が声をかけてきた。全身金属鎧装備のいかつい男だった。

「はい、確かに昨日登録したばかりですけど。」

 美湖はそっけなく返事をする。すると男は嫌らしい笑みを浮かべ、

「どうだ?俺が新人研修をしてやるよ。なに、遠慮はいらないぜ。とりあえず、有り金全部だしな。それから、俺と一緒に来い。」

「は?どうして、見ず知らずのあなたにお金を渡さないといけないの?それに、来いって言われてもどこにいくのさ?」

 美湖は、周りから見ても不機嫌だとわかるくらい表情を暗くした。しかし、それが男には気に入らなかったみたいで、

「ごちゃごちゃうるせぇな。大人しく言うこと聞いとけや。俺は、Eランクの探索者、デール様だぞ?Hランクの小娘が逆らう気か?」

 デールと名乗った男は、美湖の胸ぐらをつかんだ。しかし、美湖を宙にぶら下げる前に、彼女の魔法が発動した。

「『アイシクルロック!!』」

 美湖は、氷魔法を発動させ、デールを氷の中に閉じ込めてしまった。アイシクルロックは本来、氷による手かせや足かせを作り出し、相手の動きを阻害する魔法なのだが、美湖は、全身を氷で覆ってしまった。

「美湖さーん、お待たせしましたー、って、何ですかこの状況は!?」

 査定を終えて戻ってきたアリアが、現状を見て驚いていた。

「あ、アリアさん。査定の結果はどんな感じですか?」

 しかし、美湖はデールなどいなかったかのようにアリアに話しかける。

「いやいや、この状況をスルーしないでくださいよ。せめて説明してください。」

「え~、面倒くさいな~。僕がアリアさんを待ってたら、この男が新人研修するから、有り金全部渡して、ついて来いっていうので、断ったら胸倉つかんできて気持ち悪かったので、氷魔法で凍らせました。」

 美湖はつまらなさそうにあった出来事を伝えた。

「って、何してるんですか!!早く魔法を解除してください。でないとデールさん死んじゃいますよ。」

 アリアに言われて、いやいや美湖はアイシクルロックを解除した。すると、氷が霧散するように消えて、デールが氷から解放された。

「ぶはぁ!!クッソ、この小娘がぁ。よくもやってくれたな!!」

 デールは解放されて、美湖を見つけるや否や、顔をゆでたこのように赤くして自身の武器を取りだそうとした。

「デールさん、何してるんですか!早く武器をしまってください!」

 アリアが、大声で注意するが、デールは止まらない。武器を振り上げ美湖に振り降ろそうとした。が、

「何だ、騒がしいな。お前たち、何を騒いでいるんだ?」

 凛とした声がクラン支部に響いた。美湖が声のした方向、クラン支部の二階のエントランスを見ると、ひとりの女性が立っていた。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おいデール。お前は何をしてるんだ?」

 女性は、デールに向かって質問する。だがデールは、さっきまでの威勢のよさはどこへ行ったのか、まるで蛇に睨まれた蛙のように震えている。

「い、いや、この新人に、教育をしてやろうかと、思いまして...」

 何とか振り絞った言い訳だったが、

「ふむ、お前の勤勉さは認めよう。だが、それは私が指示して行うことだ。お前が勝手にすることではないな。で、なんでお前は、クラン支部内で武器を抜いているんだ?」

 女性は、デールの言い訳を切り捨てると、次の質問を投げる。

「こいつが、あまりにも生意気なもんで、懲らしめてやろうかと思いました...」

「はぁ、いくら新人が生意気だからと言って、武器を抜くのは感心せんな。で、新人、デールの言ってることは本当か?」

 女性は、今度は美湖に聞いてきた。美湖は、

「いえ、嘘です。僕はこの人に新人研修をしてやる。有り金を全部出せ、そしてついて来いと言われ、断ったら胸倉をつかまれたので氷漬けにしました。アリアさんに言われて氷を解除したら、武器を抜いて僕に襲い掛かってきたんです。」

 と、あったことを伝える。横でアリアが首を縦に振っているのを見た女性は、

「はぁ、デールよ、お前の素行の悪さは今まで目をつむってきたが、こんな人目の付く場所で騒ぎを起こしていては、いくら私でもかばいきれん。おい、騎士クランの者たちよ。この男をとらえておけ。負って沙汰を伝える。温情はないと思っておけ。いいな、デール。」

 女性が、騎士クラン員に指示を出すと、クラン員がデールを取り押さえ連行していった。

「さて、新入り探索者。お前にも伝えたいことがある。クラン支部長室まで来てくれ。」

 女性はそう言うと、踵を返して二階の奥に戻っていった。女性がいなくなったことで、一階のエントランスの緊張した空気が緩むのがわかった。

「はぁ、美湖さん、いくら突っかかられたとしても、氷漬けはやめてあげてください。」

 アリアが、一応くぎを刺すが、

「だって、気持ち悪かったんですよ。男に触られるとか、マジ無理ですって。それより、さっきの人は誰ですか?」

 まるで意に介さず、美湖の興味は、先ほど現れた女性に向いていた。

「ああ、そういえば言ってなかったですね。彼女は、このクラン支部をまとめる4人の支部長の一人、探索者クランの支部長、『アヤメ・リンドリア』ですよ。」


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