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やって来ました、異世界に!

ユーナとお風呂

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  美湖は、ユーナを連れて、宿屋の隣にある酒場に来ていた。今日も、酒場の中はアルコール臭が充満していて、美湖達は、窓際に陣取って座る。が、ユーナは席に付かなかった。

「ん?どうしたのさ、ユーナちゃん。座らないの?」

「いえ、ご主人様が食べ終わりましたら、厨房で残飯を頂きますので。」

「あ~、またか。もう!さっき言ったでしょ!ユーナちゃんを奴隷としては扱わないって。一緒に座って食べよ?それとも、僕と一緒の机は嫌かな。」

 美湖は、座りながらユーナに上目遣いで話しかける。ユーナは頬を染めて、

「っ、そういうのは卑怯です、ずるいです、ご主人様。わかりました、座りますから、一緒に食べますから。」

 そう言って、ユーナは美湖の真向かいに座る。すると、ウェイトレスがメニューを持ってくる。二人はそのメニューを見て、

「じゃあ、僕はカウのステーキ定食で。あとこれ、二人分の札です。」

「私も、同じものをお願いします。」

「はい、安らぎの風亭のお客様ですね。では、カウのステーキ定食が、二つで400ルクスです。少々お待ちください。」

 美湖が差し出した銅貨を受け取ると、ウェイトレスは厨房のほうに戻っていった。

「さて、ご飯が来る前に、明日の話をしておくね。」

「はい。」

 美湖はユーナに向き直り、コホンと咳払いをすると、

「明日は、午前中にユーナちゃんの装備を整えます。部屋に戻ってからだけど、ステータスを確認して、得意な武器とか探してみようね。それからは、クランで探索者登録して、一緒に何か依頼をこなそう。そんな感じかな。」

「わかりました。しかし、私などに装備を下賜していただけるのですか?」

「もう、このやり取りも疲れたよ...。いい?ユーナちゃんは確かに奴隷だけど、僕にとっては大事な仲間なんだから。それに、こんなかわいい子が傷つくのなんて見たくないじゃん。」

 美湖が言いきったところで、食事が運ばれてきたため、いったん会話が途切れた。

「おお、やっぱり、ここのご飯は美味しそうだね。」

 美湖の言葉に、

「すごい、こんなに分厚いお肉は初めてです!」

 ユーナも期待に満ちた表情を浮かべている。

「そうなんだ。これからはいろんなものを一杯食べようね。」

「はい!」

 二人は、ナイフとフォークを持ち、ステーキにかぶりつく。

「美味しい!美味しいですご主人様!!」

 肉を一切れ口に入れたユーナが、共学と喜びが混じった表情をして美湖に言う。その様子を見て、美湖は微笑むのだった。

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「ふー、おいしかった。」

「ええ、とてもおいしかったです。あんな食事を食べたのは初めてでした。」

 食事を終え、二人は宿の部屋に戻ってきていた。美湖は、二人分の着替えを持って、

「じゃあ、ユーナちゃん、お風呂入りに行こっか。」

「...お風呂も、本来は奴隷には、いえ、お供致します。」

 ユーナは何か言いかけたが、美湖の視線を感じて言葉を切った。美湖に買われてからの彼女の行動で、求めていることが大体わかるようになった。
 二人はカウンターに行く。そこには、元気そうな表情のソクラがいた。

「ソクラちゃん、お風呂に入りたいんだけど、いいかな。」

「はい、大丈夫ですよ。お二人ですので、200ルクスですね。」

 美湖は、ポケットから銅貨二枚を取り出しソクラに渡す。ソクラはそれを受け取ると、タオルのような布を2枚取り出し、

「では、4番の部屋のお風呂を使ってください。あ、どの部屋も大体同じつくりになってますから、昨日と同じように使ってくださいね。」

 ソクラからタオルを受け取ると、美湖はユーナを連れて言われた部屋に向かう。
 部屋に入ると、脱衣場、扉を隔てて浴室になっていた。

「じゃあ、ユーナちゃん。ここで服を脱いで。」

 ユーナに教えつつ、自分の服も脱いでいく。ユーナもそれを見習い服を脱いでいく。脱ぎ終わった二人は、ボディータオルを持つと浴室に入っていく。その浴室は、先日、美湖とソクラが使った部屋とほぼ同じつくりだった。

「うん、やっぱりお風呂はこうでないとね。さ、ユーナちゃん、そこの小さい椅子に座って。」

 ユーナは、美湖に言われたとおりに椅子に座る。

「はーい、じゃあお湯かけるね。目は閉じといてね。」

 桶にお湯をすくった美湖が、ユーナの頭にお湯をゆっくりかけていく。そして、石鹸を手に取り泡立てると、ユーナの髪の毛を洗っていく。

「ひゃっ、ご主人様!?何を!?」

「ん?何って、髪の毛を洗ってるんだよぉ。それにしても、ユーナちゃん、きれいな銀髪だねぇ。」

 美湖は、ユーナの髪の毛を洗いながらうっとりとした声でつぶやく。ユーナは、顔を赤らめながらもされるがままになっていた。

「それじゃ、石鹸を流すから、目は閉じておいてね。目に入るとしみるからね~。」

 美湖はそう言って、ユーナの髪に着いた石鹸を洗い流していく。時折、美湖が神をテグ市で整えていくのを、ユーナは気持ちよさそうにしていた。

「はい、終わり。うん、きれいになったね。ユーナちゃんの銀髪。次は体を洗うからね。」

 そう言って、美湖は石鹸を泡立てて、ユーナの手を取りなでるように洗っていく。

「ん、ふっ、ごっ、しゅじんさっ、ま、くすぐったいですぅ。」

 ユーナは、撫でられること自体あまりないのか、体に走るぞわぞわした感覚に驚いていた。美湖はその反応も楽しみながら、首筋、反対側の手、胸元、お腹、背中、と、次々と洗っていく。

「あ、や、ごしゅ、じんさ、ま、それ以上は、自分で、洗い、ますから...」

「いいからいいから、ここかな?ここがいいのかな?」

 ユーナの言葉を無視して、美湖は体を洗い続ける。その間、ユーナの嬌声が浴室に響いていた。

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「はっ、はっ。」

  浴室の床に、息を荒げて、ユーナが寝転んでいた。その横では、彼女の頭を膝に載せて、美湖がやりきった表情を浮かべている。

「ふう、満足。じゃ、僕も体を洗おうかな。」

 と、美湖が自分の体を洗おうとしたとき、

「ご主人様?私が体を洗って差し上げます。」

 と、ユーナが美湖を椅子に無理やり座らせる。

「あ、あれ?ユーナちゃん、どうしたのかな?」

「ご心配なく。しっかり気持ちよく、きれいにさせていただきます。」

 それから、ユーナは美湖の手から洗い始める。

「ひゃん、ユーナちゃ、ん。くすぐったい、よぅ...」

 美湖は、ユーナの手触りにされるがままになっていた。ユーナは、首元、反対側の手、胸元、背中、脇腹、と少しずつ上から下に洗っていった。

「んっ、だ、め。ゆ、なちゃん、それ以上は...」

「大丈夫ですよ。私の力では、ご主人様は死にません。サキュバスの本気を見せてあげます。きっと病みつきになりますよ。」

 そして、美湖の大事な部分に指を這わせる。

「だめ~~~~!!」

 美湖の嬌声が浴室に響いた。

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「で、申し開きはありますか?」

 現在、美湖とユーナは脱衣場で全裸で正座していた。正面には腕を組んで仁王立ちしたソクラが、二人を見下ろす形で立っている。

「...いえ、ありません。」

 美湖は、ソクラの顔を見れずに、うつむいたまま言葉を返す。

「はぁ、ここは連れ込み宿ではないのですから、そういったことは控えていただかないと。」

「本当に、申し訳ございません。」

 美湖は、先ほどよりも頭の高さを下げて謝罪する。

「...ったく。注意してくださいね。この宿にはほかのお客様もいるのです。欲にかられた男性に襲われても知りませんよ?」

 ソクラが、あきれたように言うと、

「あ、もしそんな奴がいたら殺すので大丈夫です。」

「あ、はい。」

 美湖の、底冷えすような声を聴いて、ソクラとユーナは若干引いていた。

「...じゃ、そろそろ服を着ないと風邪をひいてしまいそうですし、これくらいで勘弁してあげます。今後、気を付けてくださいね。」

 ソクラは、脱衣所を後にする。美湖たちは、足がしびれてしばらくまともに動けなかった。

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「あ~、ソクラちゃん怖かった~。」

 部屋に戻った美湖は、ベッドに寝転がりながら笑っていた。

「ご主人様。私は、サキュバスの血を引いております。あまり、ああいうことをされると、私も自分を制御できなくなります。」

「ははは、僕からしたらうれしい限りだけどね。ユーナちゃんみたいな美少女に襲われるのは。」

 美湖は、顔だけユーナのほうに向けて微笑みながら言う。そして、上半身を起こすと、

「さて、ユーナちゃんのステータスを確認しようか。鑑定スキルで確認するから、見せてくれる?」

「ご主人様は、鑑定スキル持ちなのですね。わかりました、お願いします。」

 美湖は、ユーナに鑑定を発動する。

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 ユーナ・ヴラドニル
 年齢 15
 職業 奴隷(主・ミコ・シタガイ)
 称号 吸血鬼・淫魔の血を継ぎ者
 レベル 8
 HP  150/150
 ST  80/80
 MP  100/100
 AT  90
 DF  70
 MA  100  
 MD  100
 SP  90
 IN  80
 DX  100
 MI  100
 LU  50
 VP  10/100
 EP  50/200
 スキル
 吸血(MAX)
 吸精(MAX)
 双剣術(15/30)
 闇魔法(5/20)
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「えーと、いくつか確認したいんだけど、VPとEPって何?」

 美湖は、見たことのない数値に疑問を抱いた。

「はい、まずVPは、ヴラッドポイントといって、吸血スキルに関係する数値です。吸血スキルで対象の血液を吸うと、その持ち主の能力に応じてポイントが蓄積されていきます。そして、そのポイントは吸血鬼が日々を生活する際、一日に2ポイント消費されるほか、任意に消費して、その数値文最大値を増加させることができます。あとは、父が言うには、吸血スキルの上のスキルに『血力開放』というスキルがあるようですが、全ポイントを消費して、その分全ステータスが上昇するらしいのです。」

 そのあと、しばらく動けなくなりますが、と付け加えて、ユーナは言葉を切った。

「うわぁ、てことは、ユーナちゃんは定期的に血を吸わないといけないんだね。まぁ、それは言ってくれたら僕の血でよければいくらでも吸わせてあげるから言ってね。」

「そ、そんな!ご主人様の血をいただくなど、そこらの獣の血で十分ですので!」

 ユーナは、驚いて否定したが、美湖は、

「いいのいいの、むしろご褒美?みたいな。美少女吸血鬼に血を吸われるとか、僕もう死んでもいいわ。」

 と、どこかトリップして言うような眼で言うので、ユーナは少し引いてしまった。

「語、ごほんっ、それでは、EPについて説明しますね。こっちは、吸精スキルに関係するスキルで、エクスタシーポイントといいます。こちらは、対象に性的興奮、絶頂を与えた際に急逝スキルによって吸収し、蓄えます。こちらは、サキュバスが一日過ごすのに2ポイント証するほか、MPの代わりに使用することができます。また、VPと同じで、任意に消費し、最大値を増加させることもできます。」

「おお、すごい。つまり、ユーナちゃんはMPをどんどん増やせるわけだ。EPだっけ?どうして、こっちのほうが多いの?」

 美湖は、ポイントの数値がEPだけ多いことに疑問を抱いた。すると、ユーナは表情を暗くして、

「...先に買われた男どもから吸収した分が満タンになってしまったので、もったいなかったので増やしました。」

「...ごめんね、つらいこと思い出させて...」

「いえ、あの男どもは、私の愛撫だけで絶命したので、ご主人様の思っているようなことはなかったですよ。ただ、あの汚らわしい男どもから吸ったものだと思うと、どうしても身の毛がよだつのです。」

 ユーナの言葉に、美湖は目をぱちくりさせた。

「待って、ユーナちゃん、まだ純潔なの?僕、てっきりけがされてるのかと。」

「はい、幸か不幸か、あの男どもは金だけが取り柄の者たちだったので、本番の前に絶命してしまいましたね。」

 美湖は、その言葉を聞いて心から安堵した。

「よかった。ユーナちゃんがけがされる前に出会えて、ほんとによかった。」

 その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。その様子を見たユーナは、

「ご主人様。私のために泣いていただきありがとうございます。私は、ご主人様に買われて、幸せ者です。この命尽きるまで、ともにいたいと思います。」

「こちらこそだよ。さて、明日は、ユーナちゃんの武器と防具を買わないとね。双剣術って、どれくらいの長さの剣を使うの?」

 美湖がスキルについて尋ねると、ユーナは手を胸の前に出し、両手で長さを表した。

「大体これくらいの物ですね。あとは、闇魔法が使えるので、短い物でもいいので、杖がほしいです。」
 
「わかった。それじゃ、買い物が終わったら、探索者登録をして魔物討伐に行こう。明日からが楽しみだなぁ。」

 美湖はそう言うと、ユーナをベッドに誘い眠りについた。


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