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第30話 黒い浮遊城、降下開始
空に浮かぶ巨大な黒い城。
それはかつて旧文明が打ち上げた『環境制御サテライト』——気象や魔素濃度を宇宙空間からコントロールするための巨大コンピュターだった。
それが今や、教団のハッキングによって『王都を物理的に潰す巨大質量兵器』へと成り下がっている。
「アッシュ卿! 無茶です、上空数千テミル先にあるあの質量を、地上からどうやって落とすというのですか!?」
学園の屋上。駆けつけてきたセレスティア王女が、突風に金髪を煽られながら叫ぶ。
「魔法の射程は長くても数百テミル。神の如き卿の力であっても、対象に干渉できなければ——!」
「物理的な距離なんて関係ない」
俺は王都の上空に居座る逆三角形の巨体を睨みつけながら答えた。
「世界のネットワークに繋がっている以上、あいつのIPアドレスさえ特定できれば、コマンドは通る!」
俺は視界のUI(コンソール)を開き、権限レベル2で解放された『詳細スキャン』を実行した。
『Scanning_Target: Orbital_Satellite』
『Status: Override_by_Unauthorized_User』
『Distance: 3,500m... decreasing...』
城はゆっくりと、だが確実に王都に向かって落下してきている。
だが、プロテクトが固い。教団の連中、死に物狂いでパスワードロックを何重にもかけて落としやがったな。
「……エレナ!」
俺は後ろで控えていたエレナを振り返った。
「お前の全力の魔力でいい。あの城の『底面(赤い光を放っている部分)』に向かって、ありったけの氷の槍を撃ち込んでくれ!」
「えっ……? 私の魔法では、あれには傷一つ付けられません! 距離も遠すぎます!」
「傷を付けるんじゃない! 『ネットワークの衝突ログ(エラー)』を起こすんだ!!」
俺がやりたいのは、昔のハッカーがよくやっていた ping 爆撃だ。
エレナの高密度な魔力が敵の防衛結界にぶつかった瞬間の「エラーの跳ね返り」を見れば、プロテクトの抜け穴が見つかるはずだ。
「理由はわかりませんが……アッシュ様がそう仰るのなら!!」
エレナが顔を上げ、杖を空高く掲げた。
「この命、アッシュ様のための標(しるべ)と使い潰します! 『極星の氷槍(コメット・ランス)』!!」
エレナの杖から放たれた極太の氷の槍が、轟音と共に上空の巨大城へと撃ち出される。
距離が離れるにつれて氷の槍は威力と速度を落としていくが、それでも数千メートル先の城の底面に到達し——薄い紫色の結界(プロテクト)に弾かれて、パキンッ!と砕け散った。
——その瞬間。
『Ping受信。対象の防衛ポート[443]に微細な脆弱性を確認』
「見つけた!!」
俺の視界に、敵のプロテクトのほんの一瞬の『ほころび』が緑色の文字でハイライトされた。
そこを見逃さず、俺は脳内で猛烈な勢いでコマンドを叩き込む。
『Target_IP: 192.168.XXX.XXX (Orbital_Satellite)』
『Port: 443』
『Action: Remote_Access & Force_Shutdown (遠隔操作からの強制終了)』
『Execute!』
ガキンッ!!!
空に浮かぶ巨大城から、王都全体を震わせるほどの不気味な金属音が鳴り響いた。
「な……っ!?」
王女が息を呑む。
王都に向かって落下してきていた巨大城の『底部の赤い光』が、不規則に点滅し始めた。
『システムエラー:メインエンジン強制停止。補助浮力プロトコル切断。落下軌道に入ります』
『警告:対象の質量(約2千万トン)が王都に直撃した場合、物理的消滅が予測されます』
「……え?」
俺は青ざめた。
「アッシュ卿!? 城の落下速度が上がっている! このままでは王都が潰されるぞ!!」
セレスティア王女が叫ぶ。
「待って待って! 俺はエンジンの稼働を止めただけだ! 浮遊魔法(プロトコル)ごと切ったから、ただの【超巨大な石ころ】になって落下してるんだ!!」
これだ。この世界の「魔法」と「物理」の厄介な関係。
魔法で浮いていたものを止めれば、当然重力に従って落ちる。
王都の真上で巨大兵器の停止処理をすれば、そのまま王都が潰れる。物理として当然だ。
「クソッ! なら空中にいる間に構成素材(ナノマシン)ごと全部『デリート』してやる!」
俺はコンソールを開き直し、慌てて削除コマンドを叩き込んだ。
『エラー:対象オブジェクトのデータサイズが高すぎます。完全なデリート(消去)には約72時間の処理が必要です』
「Windowsのゴミ箱を空にしています(残り3日)じゃねえよ!!」
俺は屋上で絶望の叫びを上げた。
落下まであと数分。
王都の数百万の命と、俺の平穏な公務員ライフが、俺自身の浅はかなデバッグ作業のせいで物理的に押し潰されようとしていた。
それはかつて旧文明が打ち上げた『環境制御サテライト』——気象や魔素濃度を宇宙空間からコントロールするための巨大コンピュターだった。
それが今や、教団のハッキングによって『王都を物理的に潰す巨大質量兵器』へと成り下がっている。
「アッシュ卿! 無茶です、上空数千テミル先にあるあの質量を、地上からどうやって落とすというのですか!?」
学園の屋上。駆けつけてきたセレスティア王女が、突風に金髪を煽られながら叫ぶ。
「魔法の射程は長くても数百テミル。神の如き卿の力であっても、対象に干渉できなければ——!」
「物理的な距離なんて関係ない」
俺は王都の上空に居座る逆三角形の巨体を睨みつけながら答えた。
「世界のネットワークに繋がっている以上、あいつのIPアドレスさえ特定できれば、コマンドは通る!」
俺は視界のUI(コンソール)を開き、権限レベル2で解放された『詳細スキャン』を実行した。
『Scanning_Target: Orbital_Satellite』
『Status: Override_by_Unauthorized_User』
『Distance: 3,500m... decreasing...』
城はゆっくりと、だが確実に王都に向かって落下してきている。
だが、プロテクトが固い。教団の連中、死に物狂いでパスワードロックを何重にもかけて落としやがったな。
「……エレナ!」
俺は後ろで控えていたエレナを振り返った。
「お前の全力の魔力でいい。あの城の『底面(赤い光を放っている部分)』に向かって、ありったけの氷の槍を撃ち込んでくれ!」
「えっ……? 私の魔法では、あれには傷一つ付けられません! 距離も遠すぎます!」
「傷を付けるんじゃない! 『ネットワークの衝突ログ(エラー)』を起こすんだ!!」
俺がやりたいのは、昔のハッカーがよくやっていた ping 爆撃だ。
エレナの高密度な魔力が敵の防衛結界にぶつかった瞬間の「エラーの跳ね返り」を見れば、プロテクトの抜け穴が見つかるはずだ。
「理由はわかりませんが……アッシュ様がそう仰るのなら!!」
エレナが顔を上げ、杖を空高く掲げた。
「この命、アッシュ様のための標(しるべ)と使い潰します! 『極星の氷槍(コメット・ランス)』!!」
エレナの杖から放たれた極太の氷の槍が、轟音と共に上空の巨大城へと撃ち出される。
距離が離れるにつれて氷の槍は威力と速度を落としていくが、それでも数千メートル先の城の底面に到達し——薄い紫色の結界(プロテクト)に弾かれて、パキンッ!と砕け散った。
——その瞬間。
『Ping受信。対象の防衛ポート[443]に微細な脆弱性を確認』
「見つけた!!」
俺の視界に、敵のプロテクトのほんの一瞬の『ほころび』が緑色の文字でハイライトされた。
そこを見逃さず、俺は脳内で猛烈な勢いでコマンドを叩き込む。
『Target_IP: 192.168.XXX.XXX (Orbital_Satellite)』
『Port: 443』
『Action: Remote_Access & Force_Shutdown (遠隔操作からの強制終了)』
『Execute!』
ガキンッ!!!
空に浮かぶ巨大城から、王都全体を震わせるほどの不気味な金属音が鳴り響いた。
「な……っ!?」
王女が息を呑む。
王都に向かって落下してきていた巨大城の『底部の赤い光』が、不規則に点滅し始めた。
『システムエラー:メインエンジン強制停止。補助浮力プロトコル切断。落下軌道に入ります』
『警告:対象の質量(約2千万トン)が王都に直撃した場合、物理的消滅が予測されます』
「……え?」
俺は青ざめた。
「アッシュ卿!? 城の落下速度が上がっている! このままでは王都が潰されるぞ!!」
セレスティア王女が叫ぶ。
「待って待って! 俺はエンジンの稼働を止めただけだ! 浮遊魔法(プロトコル)ごと切ったから、ただの【超巨大な石ころ】になって落下してるんだ!!」
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「クソッ! なら空中にいる間に構成素材(ナノマシン)ごと全部『デリート』してやる!」
俺はコンソールを開き直し、慌てて削除コマンドを叩き込んだ。
『エラー:対象オブジェクトのデータサイズが高すぎます。完全なデリート(消去)には約72時間の処理が必要です』
「Windowsのゴミ箱を空にしています(残り3日)じゃねえよ!!」
俺は屋上で絶望の叫びを上げた。
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