魔力ゼロの落ちこぼれ貴族、神々のエラーメッセージが読めるようになる~「神罰」のシステム権限で学園無双しつつ、本人だけはただのデバッグ作業だと

蒼月よる

文字の大きさ
31 / 66

第31話 落下城を質量0.0001%へ

 落ちてくる巨大な城。
 空を覆い尽くす絶望の質量。王都中から人々の悲鳴が上がり、もはや誰もが最期を覚悟していた。

「アッシュ卿……」
 セレスティア王女が、祈るように俺の手を握った。いつもは凛々しい彼女の手が、微かに震えている。
「……貴方がいなければ、この国はとっくに教団によって地図から消されていた。最期まで貴方という奇跡と同じ時間を過ごせたこと、騎士として誇りに思う」
「諦めるな! まだゲームオーバー(システムクラッシュ)したわけじゃない!」

 俺は脳内のコンソールパネルをフル回転させ、必死に解決策(デバッグの手法)を探っていた。
 魔法としての「浮遊機能」は消した。
 全体を「デリート(消去)」するにはサイズがデカすぎる。

 ——なら、ただの『物理的な落下』に対して、どうやって対処すればいい?

『高度な事象の書き換え(Rewrite)機能にアクセス中……』

 そうだ、レベル2権限の『書き換え』だ。
 あの時、地下大祭壇で極太レーザーを「シャボン玉」に書き換えたように、パラメーターをいじればいい!

「Target:Falling_Castle_Mass (落下城の『質量』パラメーター)」
「Action:Rewrite_Value」
「Value:Limit_to_0.0001% (質量を極限まで軽量化!)」

 俺は『城の重さ』そのものを書き換えるコマンドを叩き込んだ。
 これなら処理コストは小さくて済むはずだ!

『Warning:対象オブジェクトの「質量」パラメーターの上書きは、周辺の重力場(環境変容)に致命的なバグを引き起こす可能性があります』
『それでも実行(Commit)しますか? [YES/NO]』

「YESだッ!! 王都が潰されるよりマシだ!」
 俺が脳内でエンターキーを強く打ち鳴らした瞬間。

 ——ピィィィィン……ッ。

 世界が一瞬、無音になった。
 そして。

「……えっ?」
 エレナが間抜けな声を上げる。
 俺たちの頭上、まさに学園の屋上に激突する寸前だった数千万トンの巨大城が。

 ぽふっ。

 と。
 まるで発泡スチロール……いや、綿毛のような軽い音を立てて、学園の時計塔の尖塔に引っかかり、ふわりと停止したのだ。

「な……に……?」
 王女が、大きく目を見開いたまま固まっている。

 巨大な城の先端が時計塔にぶつかっているというのに、時計塔にはヒビ一つ入っていない。
 なぜなら今のあの巨大城は、見た目の大きさこそそのままだが、重さは『巨大な風船』程度にまで極限に軽量化(書き換え)されているからだ。

『システム:対象の質量書き換えに成功しました』
『環境変容バグの発生:王都の一部区域において、重力場が一時的に低下します』

 そのアナウンス通り、学園の屋上にいた俺たちの体が、ふわりと数センチほど宙に浮き上がった。
「きゃっ!?」
 エレナのスカートがふわりと舞い上がり、彼女が顔を赤くして裾を押さえる。

「……助かった」
 俺はその場に仰向けに倒れ込み(ゆっくりと宙に浮かび上がりながら)、深い安堵の息を吐いた。
 冷や汗で体中がびっしょりだった。

「アッシュ様……」
 エレナが浮かび上がりながら、空を泳ぐようにして俺の隣にやってきた。
「無数の民を押し潰さんとした絶望の城を……質量そのものを無(ゼロ)へと還し、一本の時計塔の上に……そっと降り立たせた……」

 エレナの瞳から、ポロポロと真珠のような涙が溢れ出し(無重力なので空中に丸い水玉として漂い)、俺の周りをキラキラと飛び交い始めた。

「ああ……神よ……! 神よ……!! どこまでも優しく、どこまでも偉大な、私たちの主……!!」
「アッシュ卿!!」
 セレスティア王女も、空中で足をバタバタさせながら俺の方へ泳いできた。
「貴方は……貴方は本当に、この世界を救うために舞い降りた『創造の神』であったか! このセレスティア、王国の全てを投げ打ってでも、貴方の御側に侍ることをここに誓おう!!」

「いや、違うんだ。物理法則弄ったら重力バグっちゃって……」

 俺の弁解は、王都中から巻き起こった「神の奇跡だあぁぁっ!!」という数百万人の熱狂の大歓声にかき消された。

 かくして、教団が引き起こした未曾有の天空テロは。
 巨大な城を風船のように時計塔に引っ掛けるという、シュールかつ圧倒的な「神の御業(デバッグ跡)」を王都のど真ん中に残して幕を閉じたのであった。
 そして翌朝、王都中が見上げる「空の城」の後始末という最悪の追加タスクが、俺を待っていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。