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第40話 国王謁見、次任務へ
大絶壁から帰還して数日後、俺たちは王宮の大広間に呼び出された。
ガーディアン討伐の報告会――のはずだった。
「……アッシュ・アルマンド・特別監察官どの」
三十代半ばの、威厳ある顔立ちの国王が、玉座から俺を見下ろしている。
その隣には、俺の『物理的ステータス(神の膂力)』にすっかり心酔しきったセレスティア王女が、誇らしげに胸を張って立っていた。
そして俺の背後には、エレナ(狂信者第一号)や魔法省のアルベルト長官らがズラリと並んでいる。
「この度の大絶壁における、旧文明兵器の討伐の報……誠に大儀であった」
国王が深く頷く。
「いかなる魔法も通じぬ悪夢を、貴殿は【己の腕一本】で木端微塵に打ち砕いたと聞く。我が娘セレスティアも、貴殿の武神のごとき力に完全に魅了されているようだ」
「過分なるお言葉、光栄です」
俺は公務員として波風を立てないよう、丁寧に礼をした。
「うむ。そこでだ、アッシュ卿」
国王が、少し声のトーンを落とした。
「これまで魔法省の『特別顧問』『監察官』などという肩書きで誤魔化してきたが……もはや貴殿の存在は、いち省庁に収まる器ではない。国家そのものの命運を左右する、まさに『生きる神』」
──嫌な予感がする。
「よって、我ら王家は決定した。アッシュ卿には、我が娘セレスティアの【婚約者】として王族に連なってもらい、いずれは『王配』としてこの国の軍権と政権の頂に立ってもらう!」
「……は!?」
俺は思わず裏返った声を出してしまった。
「ちょっと待ってください、国王陛下! 俺はただの事務官で──」
「おおっ! 父上、素晴らしいご判断です!」
セレスティア王女が感極まって叫んだ。
「アッシュ卿の傍で、卿の威光を王国民に知らしめる【第一の剣】となること。それこそが私と、そしてこの王家の悲願でございました!」
「ふざけるなッ!!」
王女の声を引き裂くように、大広間に凍てつくような冷気と怒号が響き渡った。
俺の背後にいたエレナだ。
彼女は隠し持っていた杖を抜き放ち、その白い顔を夜叉のように歪めていた。
「エ、エレナ!?」
「泥棒猫め! アッシュ様の神威に縋りつくばかりか、結婚という【血の檻】で神を縛り付けようなどと! アッシュ様の隣に立つのは、命を賭してその御背中を護り抜くと誓った、この私の第一特権……!」
エレナの周囲の空気が急速に冷却され、床の絨毯がピキピキと音を立てて凍りつき始める。
「やめろ馬鹿! ここで魔法を撃ったら国家への反逆だぞ!」
俺は慌ててエレナを止めようとするが、彼女の目は完全に据わっている。
「下賤な魔法使いの小娘が、王家を前に武器を取るか!」
王女が魔剣を抜き放ち、エレナの前に立ち塞がった。
「アッシュ卿の『真なる無力(神の膂力)』を見た今、もはや貴様の魔法など児戯にも等しい。ここで卿にふさわしい者が誰か、力で知らしめてくれる!」
「「やああああああっ!!」」
大広間のど真ん中で、王国第一の騎士と学園の最高魔法士による、俺を巡るガチの殺し合い(死闘)が始まってしまった。
「……あの、国王陛下。止めてもらえませんか?」
俺が助けを求めると、国王は玉座で組んだ指の上に顎を乗せ、なぜかニヤリと笑った。
「ふっ。英雄色を好む、か。よきかな。神にふさわしい正妃は、最も強き者が選ばれるべきだ」
ダメだ、この国の上層部、全員頭がおかしい。
魔法と剣閃が交錯し、王宮の柱が両断され、シャンデリアが凍りついて落ちてくる。
完全に『大怪獣バトル』の様相を呈してきた。
【System:アラート。ユーザー(アッシュ)の周辺30m以内で、極めて高度な致死性プロセスが複数実行中】
【System:強制終了(パッチ)を実行しますか? [YES/NO]】
「イエス! 今すぐ両方の機能を落とせ!!」
俺は脳内でコンソールを開きつつ、もう本当に泣きたくなってきた。
バグを直しても直しても、周囲の人間関係が最大の「バグ」として無限に湧いてくる。
もういい。俺は公務員になって静かな老後を迎えたかっただけだっていうのに……。
──その時だった。
『ウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーッ!!!!』
王都全体を震わせるような、鼓膜を破るほどの巨大な【サイレン音】が鳴り響いた。
それは、教団の時でも見せたことのない、視界のUI全体を真っ赤に染め上げる【システム・クリティカル・アラート】だった。
「な、なんだ!?」
剣と魔法をぶつけ合っていたセレスティアとエレナが、思わず手を止める。
玉座の国王も、顔を引きつらせて窓の外を見た。
『全権限ユーザー(アッシュ)への最終通告』
『王都の直下、地下深度10,000層』
『旧文明の【メイン・フレーム(中央統括AI)】そのものに、未知のウイルス(悪意ある意思)が侵入』
『システムの完全初期化(フォーマット)プロトコルが起動されました』
視界に流れる赤い文字を見て、俺は背筋に氷柱を突き立てられたような悪寒を覚えた。
『カウントダウン:残り、30分』
『30分後、この世界のすべての環境管理プロセス(空気、重力、魔素)が停止し、星の生命活動は終了(フォーマット)されます』
「……は?」
教団のサイバーテロなんて目じゃない。
世界(システム)そのものが、あと30分でシャットダウンしようとしているのだ。
ガーディアン討伐の報告会――のはずだった。
「……アッシュ・アルマンド・特別監察官どの」
三十代半ばの、威厳ある顔立ちの国王が、玉座から俺を見下ろしている。
その隣には、俺の『物理的ステータス(神の膂力)』にすっかり心酔しきったセレスティア王女が、誇らしげに胸を張って立っていた。
そして俺の背後には、エレナ(狂信者第一号)や魔法省のアルベルト長官らがズラリと並んでいる。
「この度の大絶壁における、旧文明兵器の討伐の報……誠に大儀であった」
国王が深く頷く。
「いかなる魔法も通じぬ悪夢を、貴殿は【己の腕一本】で木端微塵に打ち砕いたと聞く。我が娘セレスティアも、貴殿の武神のごとき力に完全に魅了されているようだ」
「過分なるお言葉、光栄です」
俺は公務員として波風を立てないよう、丁寧に礼をした。
「うむ。そこでだ、アッシュ卿」
国王が、少し声のトーンを落とした。
「これまで魔法省の『特別顧問』『監察官』などという肩書きで誤魔化してきたが……もはや貴殿の存在は、いち省庁に収まる器ではない。国家そのものの命運を左右する、まさに『生きる神』」
──嫌な予感がする。
「よって、我ら王家は決定した。アッシュ卿には、我が娘セレスティアの【婚約者】として王族に連なってもらい、いずれは『王配』としてこの国の軍権と政権の頂に立ってもらう!」
「……は!?」
俺は思わず裏返った声を出してしまった。
「ちょっと待ってください、国王陛下! 俺はただの事務官で──」
「おおっ! 父上、素晴らしいご判断です!」
セレスティア王女が感極まって叫んだ。
「アッシュ卿の傍で、卿の威光を王国民に知らしめる【第一の剣】となること。それこそが私と、そしてこの王家の悲願でございました!」
「ふざけるなッ!!」
王女の声を引き裂くように、大広間に凍てつくような冷気と怒号が響き渡った。
俺の背後にいたエレナだ。
彼女は隠し持っていた杖を抜き放ち、その白い顔を夜叉のように歪めていた。
「エ、エレナ!?」
「泥棒猫め! アッシュ様の神威に縋りつくばかりか、結婚という【血の檻】で神を縛り付けようなどと! アッシュ様の隣に立つのは、命を賭してその御背中を護り抜くと誓った、この私の第一特権……!」
エレナの周囲の空気が急速に冷却され、床の絨毯がピキピキと音を立てて凍りつき始める。
「やめろ馬鹿! ここで魔法を撃ったら国家への反逆だぞ!」
俺は慌ててエレナを止めようとするが、彼女の目は完全に据わっている。
「下賤な魔法使いの小娘が、王家を前に武器を取るか!」
王女が魔剣を抜き放ち、エレナの前に立ち塞がった。
「アッシュ卿の『真なる無力(神の膂力)』を見た今、もはや貴様の魔法など児戯にも等しい。ここで卿にふさわしい者が誰か、力で知らしめてくれる!」
「「やああああああっ!!」」
大広間のど真ん中で、王国第一の騎士と学園の最高魔法士による、俺を巡るガチの殺し合い(死闘)が始まってしまった。
「……あの、国王陛下。止めてもらえませんか?」
俺が助けを求めると、国王は玉座で組んだ指の上に顎を乗せ、なぜかニヤリと笑った。
「ふっ。英雄色を好む、か。よきかな。神にふさわしい正妃は、最も強き者が選ばれるべきだ」
ダメだ、この国の上層部、全員頭がおかしい。
魔法と剣閃が交錯し、王宮の柱が両断され、シャンデリアが凍りついて落ちてくる。
完全に『大怪獣バトル』の様相を呈してきた。
【System:アラート。ユーザー(アッシュ)の周辺30m以内で、極めて高度な致死性プロセスが複数実行中】
【System:強制終了(パッチ)を実行しますか? [YES/NO]】
「イエス! 今すぐ両方の機能を落とせ!!」
俺は脳内でコンソールを開きつつ、もう本当に泣きたくなってきた。
バグを直しても直しても、周囲の人間関係が最大の「バグ」として無限に湧いてくる。
もういい。俺は公務員になって静かな老後を迎えたかっただけだっていうのに……。
──その時だった。
『ウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーッ!!!!』
王都全体を震わせるような、鼓膜を破るほどの巨大な【サイレン音】が鳴り響いた。
それは、教団の時でも見せたことのない、視界のUI全体を真っ赤に染め上げる【システム・クリティカル・アラート】だった。
「な、なんだ!?」
剣と魔法をぶつけ合っていたセレスティアとエレナが、思わず手を止める。
玉座の国王も、顔を引きつらせて窓の外を見た。
『全権限ユーザー(アッシュ)への最終通告』
『王都の直下、地下深度10,000層』
『旧文明の【メイン・フレーム(中央統括AI)】そのものに、未知のウイルス(悪意ある意思)が侵入』
『システムの完全初期化(フォーマット)プロトコルが起動されました』
視界に流れる赤い文字を見て、俺は背筋に氷柱を突き立てられたような悪寒を覚えた。
『カウントダウン:残り、30分』
『30分後、この世界のすべての環境管理プロセス(空気、重力、魔素)が停止し、星の生命活動は終了(フォーマット)されます』
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