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season1
43話:ジェル、キノコを枯らす
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その翌日。
アレクの枕には昨日と同じ大きさのイケメンダケが1本生えていました。
「おい、ジェル! またキノコが生えたぞ!」
「――えぇ⁉ すぐジンに連絡して買い取ってもらいましょう!」
ワタクシは大急ぎでジンに連絡してキノコを売りました。
しかしそれでは終わらず、さらに次の日も同様に1本生えていて再びジンを呼ぶことになったのです。
「キノコ1本だけの為にわざわざ来ていただいてすみませんねぇ……」
「いいのよぉ~! こっちも商売になってるから気にしないで♪」
「もしかしたら、また明日も生えてきそうな気がするんですが……」
ワタクシの予想にジンはうんうんと頷き、ある提案をしました。
「そうねぇ、そのペースだとたぶん明日以降も毎日生えるんじゃないかしら? ――ねぇねぇ、物は相談なんだけど、そのキノコって量産できないの?」
「量産……ですか?」
「えぇ。今って1本しか生えないでしょ。もしもっと収穫数を多くできるなら買取価格をさらにアップさせてもいいわよ? 仮に10本増えたとして……」
そう言って、ジンは電卓を取り出して高級車が買えるような数字を提示してきました。
「――こ、これは。イケメンダケを売ったお金で美術品や宝石も買い放題じゃないですか……!」
提示された数字の桁の大きさにワタクシの心は大きく揺れ動きました。なにせ元手は無料(タダ)です。売った分だけ丸儲け。これはビジネスチャンスに違いありません。
「け、検討してみます……!」
「あらよかった、頼んだわよ~! ――それじゃアタシまた明日来るわね。楽しみにしてるわぁ~!」
笑顔で手を振るジンを見送った後、ワタクシはアレクの部屋のドアをノックしました。
「アレク、ちょっといいですか?」
「おう、いいぞ。あれ、ジンちゃんもう帰ったのか?」
「えぇ」
「残念だな~、パン男ロボ買ったからジンちゃんにも見せてやろうと思ったのに」
「また明日も来るそうですよ」
「そっか~……えへへ、パン男ロボはやっぱりいいなぁ!」
アレクは売り上げで買ったロボットの玩具を箱から取り出してご満悦です。
ワタクシは楽しそうな彼の様子に軽く目を細めると、視線をベッドに移しました。
「やはり何度見てもにわかには信じがたいです……」
ベッドは薄い羽毛布団と白いシーツに白いカバーのかかった枕があるだけで清潔そのもので、とてもキノコが生えるような環境には見えませんし、そんな痕跡も一切ありません。
「――でもここにイケメンダケは生えるんですよねぇ。目には見えないけどおそらくアレクの枕に胞子がついてるということですよね……ふむ」
少し思案したのち、ワタクシはハサミを持ってきて彼の枕カバーの生地を数センチほど切りとりました。
「――わ、おい! な、なにやってんだよジェル‼」
「見ればわかるでしょう、イケメンダケの胞子をいただいてるんですよ!」
「は? どういうこった?」
「量産するんですよ!」
「へ、量産?」
「イケメンの傍にしか生えないキノコなんでしょう? だったらワタクシの傍にだって生えていいはずです……!」
「おい、ジェル……オマエ、真剣すぎて顔怖いぞ。うわぁ、俺の枕カバーが……」
「あとは適当に縫っておいてください」
「いや、適当にってなぁ……おい、ジェル~!」
ちょっと呆れ顔のアレクをよそに、ワタクシは胞子が付いたであろう枕カバーの切れ端を持って悠々と自室へと引き上げたのでした。
その日の就寝前。
自室でワタクシは枕をじーっと観察しておりました。先ほど切り取った枕カバーの切れ端を自分の枕に縫い付けたのです。
「たしかにアレクの顔は整ってますよ。でもワタクシだってイケメンなんです。だから絶対生えるはず……!」
すると期待通り、ワタクシの枕の隅に薄茶色のキノコのカサらしき物が小さくこんもりと生えてきました。
「やった……! これで量産して大儲け……‼」
ワタクシはガッツポーズをしました。
キノコはものすごい早さでグングン成長しました。カサの部分にはピンクのハートマークがあります。間違いなくイケメンダケです。
しかし……
――ワタクシがその光景を覗き込んだ瞬間、イケメンダケはシュウゥゥゥゥと音をたてて急激に萎れてしまいました。
「失敬な‼ ワタクシがイケメンじゃないとでも⁉ ワタクシの顔のどこに不満が‼」
思わず文句を言っていると不思議なことにイケメンダケはさらに縮こまり、とうとう跡形もなく消えてしまいました。
「うぅ、かなりショックなんですが……」
アレクの枕には昨日と同じ大きさのイケメンダケが1本生えていました。
「おい、ジェル! またキノコが生えたぞ!」
「――えぇ⁉ すぐジンに連絡して買い取ってもらいましょう!」
ワタクシは大急ぎでジンに連絡してキノコを売りました。
しかしそれでは終わらず、さらに次の日も同様に1本生えていて再びジンを呼ぶことになったのです。
「キノコ1本だけの為にわざわざ来ていただいてすみませんねぇ……」
「いいのよぉ~! こっちも商売になってるから気にしないで♪」
「もしかしたら、また明日も生えてきそうな気がするんですが……」
ワタクシの予想にジンはうんうんと頷き、ある提案をしました。
「そうねぇ、そのペースだとたぶん明日以降も毎日生えるんじゃないかしら? ――ねぇねぇ、物は相談なんだけど、そのキノコって量産できないの?」
「量産……ですか?」
「えぇ。今って1本しか生えないでしょ。もしもっと収穫数を多くできるなら買取価格をさらにアップさせてもいいわよ? 仮に10本増えたとして……」
そう言って、ジンは電卓を取り出して高級車が買えるような数字を提示してきました。
「――こ、これは。イケメンダケを売ったお金で美術品や宝石も買い放題じゃないですか……!」
提示された数字の桁の大きさにワタクシの心は大きく揺れ動きました。なにせ元手は無料(タダ)です。売った分だけ丸儲け。これはビジネスチャンスに違いありません。
「け、検討してみます……!」
「あらよかった、頼んだわよ~! ――それじゃアタシまた明日来るわね。楽しみにしてるわぁ~!」
笑顔で手を振るジンを見送った後、ワタクシはアレクの部屋のドアをノックしました。
「アレク、ちょっといいですか?」
「おう、いいぞ。あれ、ジンちゃんもう帰ったのか?」
「えぇ」
「残念だな~、パン男ロボ買ったからジンちゃんにも見せてやろうと思ったのに」
「また明日も来るそうですよ」
「そっか~……えへへ、パン男ロボはやっぱりいいなぁ!」
アレクは売り上げで買ったロボットの玩具を箱から取り出してご満悦です。
ワタクシは楽しそうな彼の様子に軽く目を細めると、視線をベッドに移しました。
「やはり何度見てもにわかには信じがたいです……」
ベッドは薄い羽毛布団と白いシーツに白いカバーのかかった枕があるだけで清潔そのもので、とてもキノコが生えるような環境には見えませんし、そんな痕跡も一切ありません。
「――でもここにイケメンダケは生えるんですよねぇ。目には見えないけどおそらくアレクの枕に胞子がついてるということですよね……ふむ」
少し思案したのち、ワタクシはハサミを持ってきて彼の枕カバーの生地を数センチほど切りとりました。
「――わ、おい! な、なにやってんだよジェル‼」
「見ればわかるでしょう、イケメンダケの胞子をいただいてるんですよ!」
「は? どういうこった?」
「量産するんですよ!」
「へ、量産?」
「イケメンの傍にしか生えないキノコなんでしょう? だったらワタクシの傍にだって生えていいはずです……!」
「おい、ジェル……オマエ、真剣すぎて顔怖いぞ。うわぁ、俺の枕カバーが……」
「あとは適当に縫っておいてください」
「いや、適当にってなぁ……おい、ジェル~!」
ちょっと呆れ顔のアレクをよそに、ワタクシは胞子が付いたであろう枕カバーの切れ端を持って悠々と自室へと引き上げたのでした。
その日の就寝前。
自室でワタクシは枕をじーっと観察しておりました。先ほど切り取った枕カバーの切れ端を自分の枕に縫い付けたのです。
「たしかにアレクの顔は整ってますよ。でもワタクシだってイケメンなんです。だから絶対生えるはず……!」
すると期待通り、ワタクシの枕の隅に薄茶色のキノコのカサらしき物が小さくこんもりと生えてきました。
「やった……! これで量産して大儲け……‼」
ワタクシはガッツポーズをしました。
キノコはものすごい早さでグングン成長しました。カサの部分にはピンクのハートマークがあります。間違いなくイケメンダケです。
しかし……
――ワタクシがその光景を覗き込んだ瞬間、イケメンダケはシュウゥゥゥゥと音をたてて急激に萎れてしまいました。
「失敬な‼ ワタクシがイケメンじゃないとでも⁉ ワタクシの顔のどこに不満が‼」
思わず文句を言っていると不思議なことにイケメンダケはさらに縮こまり、とうとう跡形もなく消えてしまいました。
「うぅ、かなりショックなんですが……」
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