52 / 163
season1
52話:さらなる脅威
しおりを挟む
ワタクシ達は慌てて立ち上がり、波打ち際へ走りました。
「アレク~! 早くこっちへ!」
「アレク兄ちゃんサメだよ!」
「うん? 雨? いや晴れてるぞ……?」
「あぁもう! 雨じゃなくて、サメですってば!」
のんきに泳いでいる彼をどうやって助けようかと思ったその時――
「ホッホッホ、お若い方。大丈夫じゃよ」
後ろから声をかけられ振り返ると、地元の人と思われるアロハシャツを着た優しそうな老人が立っていました。
「ご老人、サメが出たのに大丈夫と言うのはどういうことですか?」
「あのサメは温厚なやつですからな」
「そうなんですか?」
温厚なサメと聞いて、ワタクシは少しホッとしました。
「――ただ、光るものが好きでしてな。ギラギラのきわどいビキニでも着用してない限り襲ってきませんぞ」
「今まさにそんなギラギラのきわどいビキニの兄が海にいるんですが……」
「――ちくしょう! 水着を奪いやがった‼ 返せ‼」
波間でアレクの怒号が聞こえました。
サメは彼の水着を奪って、口に咥えたまま悠々と沖の方へ泳いで行こうとしています。
「まてぇ! こらぁぁぁぁ~‼」
アレクは叫びながら全速力でサメを追いかけて泳いで行ってしまいました。
「これは……どうしたらいいんでしょうねぇ」
「アレク兄ちゃんが戻ってくるまで待つしかないんじゃない?」
しばらくすると、アレクがげんなりした顔でこちらの方へ泳いできたので声をかけました。
「アレク~! 大丈夫ですか~⁉」
「おう、水着は取り返したからだいじょ…………うぉっ!」
「アレク⁉」
急にザブッと大きな水音がして、彼の姿が水中に消えました。
まるで何かに引き込まれたように見えましたが、これはいったい……?
「ジェル、あれ見て! ブクブク大きな泡がでてる! 水の中に何かいるよ!」
シロが叫んだその時、海中から船にも匹敵する大きさの巨大なタコが浮上しました。
「なんですか、この規格外の大きさは。まるでクラーケンじゃないですか……!」
「ホッホッホ、大丈夫ですぞ!」
驚愕しているワタクシの隣で、先ほどの老人がまた話しかけてきました。
「あのタコは男の好みにうるさくてな……」
「男の好み?」
「さよう。中途半端に鍛えたひょろい身体でギラギラビキニを穿いて調子に乗ってるアホそうなイケメンでもない限り、襲ってきませんぞ」
「今まさに、そんなアホそうなイケメンが海にいるんですが……」
「あっ! アレク兄ちゃんがタコに捕まった!」
「おい、ジェル! シロ! のんきに見てないで助けてくれよ~! くそ、吸盤いてぇな!」
アレクはタコの太い足に巻きつかれて必死でそこから脱出しようと、もがいています。
その時、タコは顔をアレクに近づけてジッと彼の姿を見つめました。
「……な、なんだよ⁉」
――そして。
バシャン!
「……あ、タコがアレクを投げ捨てた」
「好みのタイプじゃなかったんだ、よかったね!」
巨大タコは投げ捨てたアレクには目もくれず、沖の方へ泳いで波間に消えて行きました。
「ゲホッ! ゲホッ……!」
「大丈夫ですか、アレク?」
「くそ、なんかわからんが腹立つな……」
「あっ、前! 前隠してください!」
「兄ちゃん! パンツどうしたの⁉」
浜辺へ上がった彼は何も穿いてない状態でした。
周囲からキャーと悲鳴が上がり、視線がワタクシ達に突き刺さります。
「うわ、さっき海に落とされた衝撃で脱げちまったのか……」
「あっ! あの光ってるの、アレク兄ちゃんのパンツだ!」
シロが指差した方向には波間でキラキラと輝くビキニパンツと、それを咥えたサメの姿が。
「おい! またオマエかぁぁぁぁぁ~~‼」
アレクは再びザブンと水に飛び込んで、全裸のままサメを追いかけて行きました。
「あーあ、遠すぎて見えなくなっちゃった。またしばらく戻ってこないね……」
「――疲れたし、先にホテルに帰りましょうか」
「うん、そうだね」
ワタクシ達は帰り支度を始めました。幸いホテルはビーチのすぐそばなのでアレクも適当になんとかするでしょう。
「海、面白かったね~! ぴちぴちぎゃるもいっぱい見れたし」
「ふふ、たまにはこんなバカンスもいいもんですね」
その後アレクはずいぶん遠くまで行ったらしく、数時間後に腰に海草を巻きつけて股間を隠した姿でホテルの部屋に戻ってきました。
「アレク兄ちゃんおかえり!」
「……結局、サメに水着盗られちゃったんですか?」
「うん」
「そうですか……」
――あぁ、よかった。明日もここに滞在予定だったんですが、これでもう浜辺で妙な注目を集めることも変な生き物に襲われることも無くなるでしょう。
「じゃ、明日はアレク兄ちゃんの新しい水着を買いに行こうよ!」
「そうですね。今度はもっと布が多めで、なるべく地味なのを――」
「大丈夫だ! 実はもう1枚ある!」
「えっ」
アレクが愛用のトランクの蓋を開けると、そこにはギラギラと輝く青いビキニパンツがありました。
「どうだ! 明日は色違いのキラキラビキニでビーチの視線を独り占めするぜ!」
「あー、うん。よかったよね」
「そうですね……」
「じゃ、俺シャワー浴びてくるから、その後で飯にしようぜ!」
リアクションに困るシロとワタクシを残して、彼は尻が丸出しのままバスルームに消えて行きました。
「アレク兄ちゃん、あんな目に遭ったのにまったく懲りてないね……」
「あのポジティブさ、ある意味うらやましいです」
ワタクシ達は顔を見合わせ、ひそひそと話し合ったのでした。
「アレク~! 早くこっちへ!」
「アレク兄ちゃんサメだよ!」
「うん? 雨? いや晴れてるぞ……?」
「あぁもう! 雨じゃなくて、サメですってば!」
のんきに泳いでいる彼をどうやって助けようかと思ったその時――
「ホッホッホ、お若い方。大丈夫じゃよ」
後ろから声をかけられ振り返ると、地元の人と思われるアロハシャツを着た優しそうな老人が立っていました。
「ご老人、サメが出たのに大丈夫と言うのはどういうことですか?」
「あのサメは温厚なやつですからな」
「そうなんですか?」
温厚なサメと聞いて、ワタクシは少しホッとしました。
「――ただ、光るものが好きでしてな。ギラギラのきわどいビキニでも着用してない限り襲ってきませんぞ」
「今まさにそんなギラギラのきわどいビキニの兄が海にいるんですが……」
「――ちくしょう! 水着を奪いやがった‼ 返せ‼」
波間でアレクの怒号が聞こえました。
サメは彼の水着を奪って、口に咥えたまま悠々と沖の方へ泳いで行こうとしています。
「まてぇ! こらぁぁぁぁ~‼」
アレクは叫びながら全速力でサメを追いかけて泳いで行ってしまいました。
「これは……どうしたらいいんでしょうねぇ」
「アレク兄ちゃんが戻ってくるまで待つしかないんじゃない?」
しばらくすると、アレクがげんなりした顔でこちらの方へ泳いできたので声をかけました。
「アレク~! 大丈夫ですか~⁉」
「おう、水着は取り返したからだいじょ…………うぉっ!」
「アレク⁉」
急にザブッと大きな水音がして、彼の姿が水中に消えました。
まるで何かに引き込まれたように見えましたが、これはいったい……?
「ジェル、あれ見て! ブクブク大きな泡がでてる! 水の中に何かいるよ!」
シロが叫んだその時、海中から船にも匹敵する大きさの巨大なタコが浮上しました。
「なんですか、この規格外の大きさは。まるでクラーケンじゃないですか……!」
「ホッホッホ、大丈夫ですぞ!」
驚愕しているワタクシの隣で、先ほどの老人がまた話しかけてきました。
「あのタコは男の好みにうるさくてな……」
「男の好み?」
「さよう。中途半端に鍛えたひょろい身体でギラギラビキニを穿いて調子に乗ってるアホそうなイケメンでもない限り、襲ってきませんぞ」
「今まさに、そんなアホそうなイケメンが海にいるんですが……」
「あっ! アレク兄ちゃんがタコに捕まった!」
「おい、ジェル! シロ! のんきに見てないで助けてくれよ~! くそ、吸盤いてぇな!」
アレクはタコの太い足に巻きつかれて必死でそこから脱出しようと、もがいています。
その時、タコは顔をアレクに近づけてジッと彼の姿を見つめました。
「……な、なんだよ⁉」
――そして。
バシャン!
「……あ、タコがアレクを投げ捨てた」
「好みのタイプじゃなかったんだ、よかったね!」
巨大タコは投げ捨てたアレクには目もくれず、沖の方へ泳いで波間に消えて行きました。
「ゲホッ! ゲホッ……!」
「大丈夫ですか、アレク?」
「くそ、なんかわからんが腹立つな……」
「あっ、前! 前隠してください!」
「兄ちゃん! パンツどうしたの⁉」
浜辺へ上がった彼は何も穿いてない状態でした。
周囲からキャーと悲鳴が上がり、視線がワタクシ達に突き刺さります。
「うわ、さっき海に落とされた衝撃で脱げちまったのか……」
「あっ! あの光ってるの、アレク兄ちゃんのパンツだ!」
シロが指差した方向には波間でキラキラと輝くビキニパンツと、それを咥えたサメの姿が。
「おい! またオマエかぁぁぁぁぁ~~‼」
アレクは再びザブンと水に飛び込んで、全裸のままサメを追いかけて行きました。
「あーあ、遠すぎて見えなくなっちゃった。またしばらく戻ってこないね……」
「――疲れたし、先にホテルに帰りましょうか」
「うん、そうだね」
ワタクシ達は帰り支度を始めました。幸いホテルはビーチのすぐそばなのでアレクも適当になんとかするでしょう。
「海、面白かったね~! ぴちぴちぎゃるもいっぱい見れたし」
「ふふ、たまにはこんなバカンスもいいもんですね」
その後アレクはずいぶん遠くまで行ったらしく、数時間後に腰に海草を巻きつけて股間を隠した姿でホテルの部屋に戻ってきました。
「アレク兄ちゃんおかえり!」
「……結局、サメに水着盗られちゃったんですか?」
「うん」
「そうですか……」
――あぁ、よかった。明日もここに滞在予定だったんですが、これでもう浜辺で妙な注目を集めることも変な生き物に襲われることも無くなるでしょう。
「じゃ、明日はアレク兄ちゃんの新しい水着を買いに行こうよ!」
「そうですね。今度はもっと布が多めで、なるべく地味なのを――」
「大丈夫だ! 実はもう1枚ある!」
「えっ」
アレクが愛用のトランクの蓋を開けると、そこにはギラギラと輝く青いビキニパンツがありました。
「どうだ! 明日は色違いのキラキラビキニでビーチの視線を独り占めするぜ!」
「あー、うん。よかったよね」
「そうですね……」
「じゃ、俺シャワー浴びてくるから、その後で飯にしようぜ!」
リアクションに困るシロとワタクシを残して、彼は尻が丸出しのままバスルームに消えて行きました。
「アレク兄ちゃん、あんな目に遭ったのにまったく懲りてないね……」
「あのポジティブさ、ある意味うらやましいです」
ワタクシ達は顔を見合わせ、ひそひそと話し合ったのでした。
0
あなたにおすすめの小説
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー
みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。
魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。
人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。
そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。
物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる