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10章:戦いの行方
28.インフィニティ
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私達が転送された平原には焦げ臭い匂いが漂っていた。
おそらく魔王が吐いた火炎のせいだろう。
少し先に師匠の戦っている背中が見える。
「師匠!」
私達は彼の元へ走り出した。
「ジュリアス様! 加勢いたしますっ!」
「――天の鎖……ヘブンズチェイン!」
イリスさんが黒いローブの集団に長剣で切りかかり、ホワイティ王子が魔王に向かって捕縛の呪文を唱えた。
師匠に振り下ろされる直前だった魔王の巨大な右腕を、金色に輝く鎖が捕らえる。
「ジュリィ、待たせてごめんね」
「イリス、ホワイティ……! すまん。アバンティが――」
「うん。でも、僕らならきっと兄上を助けられる……そうだろう?」
王子はさらに金色の鎖を増やして魔王を縛り上げ、ミシミシ音を立てる鎖を右手に力を込めて握っている。
その時、背後から無数の金属が重なりあう音がした。
「ホワイティ様! ご無事ですか⁉」
「爺や、早かったね」
振り返ると、たくさんの兵士達を従えた爺やさんが剣を構えていた。
「お父様!」
「イリス! 今助けるぞ!」
爺やさんは勇猛果敢に、黒いローブの集団に切りかかった。
「爺や~、なるべく殺さずに捕まえて~!」
「承知した、ホワイティ様もお役目を果たしてくだされ!」
爺やさん達は剣を突きつけながら、異形達を取り囲んで捕縛していく。これでもう何も悪さできないだろう。
「ウォォォォォォォ!!!!」
その直後、急に魔王が咆哮をあげて鎖を引きちぎった。
鎖は光の粉になって空中に消え、その反動でホワイティ王子はよろける。
「やっぱりこの魔法じゃ無理だよね。――じゃあ、僕の本気見せちゃおうかな」
彼は体勢を立て直してしっかりと両足を踏みしめ、両手を魔王に突きつけた。
「――さぁ、見せてあげるよ。僕の究極の捕縛呪文を。神々の脅威すら封じるこの世に存在できないはずの鎖にして我々が失いしもの。それは貪り食うもの……グレイプニル!!!!」
王子の詠唱と同時に突き出した両手から細く輝く糸のような光が何本も伸びて、まるで獲物を捕らえたクモのように輝く糸が魔王の自由を奪っていく。
「さぁ、ジュリィ! 後はキミの魔法で……ジュリィ⁉」
「……くっ」
じっと魔王と対峙していた師匠は、急に力が抜けたようにその場に膝をついた。
私は慌てて師匠に駆け寄る。
「師匠!」
「メイ、どうしてここに。避難しなかったのか……」
師匠は私の呼びかけに、かろうじて立ち上がったものの、呼吸が荒い。
かなり魔力を消耗しているんだと思う。
「ジュリィ! 僕が魔王を押さえている間に究極浄化の魔法を――」
「……あぁ」
ホワイティ王子の呼びかけに、師匠は苦しそうに声を絞り出した。
「メイ……危ない、から……俺の、後ろに……」
「師匠! そんな体で魔法を使うのは危険です!」
よくわからないけど魔王相手に“究極”なんて言うくらいだから、きっとすごい魔法なんだと思う。
たぶん今の状態でそんな強力な魔法を使ったら、魔力切れで気絶を通り越して死んでしまう。
「わかっている。だがこれは、世界最強の魔法使いの……俺の役目なんだ……!」
彼は残された気力を振り絞り、銀色の杖を魔王に向けた。
私は師匠の隣に立って、彼の杖を握る手に自分の手を重ねた。
「師匠、だったら私の魔力を使ってください」
「メイ……?」
「私はもう、あなたの背中に守られているだけの幼い女の子じゃない。隣に立って共に戦いたいんです」
「……俺の隣――か。大変だからな、覚悟しろよ」
「はい!」
師匠がかすかに微笑む。そして金色の糸に包まれた魔王を見据えて、呪文を唱えた――
辺りが真っ白な光に包まれて、思わず眩しさで目をとじる。
師匠の手に添えている両手が熱い。
体の力がどんどん抜けていくような感覚がある。たぶん今まで経験したこと無い量の魔力が吸われているんだ。
でも、私はインフィニティ。無限の魔力を持つ存在。
そして世界最強の魔法使いの弟子。
「――だからきっと、大丈夫!」
おそらく魔王が吐いた火炎のせいだろう。
少し先に師匠の戦っている背中が見える。
「師匠!」
私達は彼の元へ走り出した。
「ジュリアス様! 加勢いたしますっ!」
「――天の鎖……ヘブンズチェイン!」
イリスさんが黒いローブの集団に長剣で切りかかり、ホワイティ王子が魔王に向かって捕縛の呪文を唱えた。
師匠に振り下ろされる直前だった魔王の巨大な右腕を、金色に輝く鎖が捕らえる。
「ジュリィ、待たせてごめんね」
「イリス、ホワイティ……! すまん。アバンティが――」
「うん。でも、僕らならきっと兄上を助けられる……そうだろう?」
王子はさらに金色の鎖を増やして魔王を縛り上げ、ミシミシ音を立てる鎖を右手に力を込めて握っている。
その時、背後から無数の金属が重なりあう音がした。
「ホワイティ様! ご無事ですか⁉」
「爺や、早かったね」
振り返ると、たくさんの兵士達を従えた爺やさんが剣を構えていた。
「お父様!」
「イリス! 今助けるぞ!」
爺やさんは勇猛果敢に、黒いローブの集団に切りかかった。
「爺や~、なるべく殺さずに捕まえて~!」
「承知した、ホワイティ様もお役目を果たしてくだされ!」
爺やさん達は剣を突きつけながら、異形達を取り囲んで捕縛していく。これでもう何も悪さできないだろう。
「ウォォォォォォォ!!!!」
その直後、急に魔王が咆哮をあげて鎖を引きちぎった。
鎖は光の粉になって空中に消え、その反動でホワイティ王子はよろける。
「やっぱりこの魔法じゃ無理だよね。――じゃあ、僕の本気見せちゃおうかな」
彼は体勢を立て直してしっかりと両足を踏みしめ、両手を魔王に突きつけた。
「――さぁ、見せてあげるよ。僕の究極の捕縛呪文を。神々の脅威すら封じるこの世に存在できないはずの鎖にして我々が失いしもの。それは貪り食うもの……グレイプニル!!!!」
王子の詠唱と同時に突き出した両手から細く輝く糸のような光が何本も伸びて、まるで獲物を捕らえたクモのように輝く糸が魔王の自由を奪っていく。
「さぁ、ジュリィ! 後はキミの魔法で……ジュリィ⁉」
「……くっ」
じっと魔王と対峙していた師匠は、急に力が抜けたようにその場に膝をついた。
私は慌てて師匠に駆け寄る。
「師匠!」
「メイ、どうしてここに。避難しなかったのか……」
師匠は私の呼びかけに、かろうじて立ち上がったものの、呼吸が荒い。
かなり魔力を消耗しているんだと思う。
「ジュリィ! 僕が魔王を押さえている間に究極浄化の魔法を――」
「……あぁ」
ホワイティ王子の呼びかけに、師匠は苦しそうに声を絞り出した。
「メイ……危ない、から……俺の、後ろに……」
「師匠! そんな体で魔法を使うのは危険です!」
よくわからないけど魔王相手に“究極”なんて言うくらいだから、きっとすごい魔法なんだと思う。
たぶん今の状態でそんな強力な魔法を使ったら、魔力切れで気絶を通り越して死んでしまう。
「わかっている。だがこれは、世界最強の魔法使いの……俺の役目なんだ……!」
彼は残された気力を振り絞り、銀色の杖を魔王に向けた。
私は師匠の隣に立って、彼の杖を握る手に自分の手を重ねた。
「師匠、だったら私の魔力を使ってください」
「メイ……?」
「私はもう、あなたの背中に守られているだけの幼い女の子じゃない。隣に立って共に戦いたいんです」
「……俺の隣――か。大変だからな、覚悟しろよ」
「はい!」
師匠がかすかに微笑む。そして金色の糸に包まれた魔王を見据えて、呪文を唱えた――
辺りが真っ白な光に包まれて、思わず眩しさで目をとじる。
師匠の手に添えている両手が熱い。
体の力がどんどん抜けていくような感覚がある。たぶん今まで経験したこと無い量の魔力が吸われているんだ。
でも、私はインフィニティ。無限の魔力を持つ存在。
そして世界最強の魔法使いの弟子。
「――だからきっと、大丈夫!」
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