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第三章 真相
真相 序2
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目を開けると、目の前には木組みの天井があった。初めて見るものだ。少なくとも自分の家ではい。
状況の把握をするため、とりあえず上体を起こし、辺りを見渡そうとする。
すると、ジャリンという音が、首元から響いた。慌てて自分の体を確認する。
首輪が付けられていた。次いで俺の脳が認識したのは、自らが全裸であるという事実だ。
どういうことだ? 何故俺は全裸で首輪に繋がれている?
首輪から伸びる鎖は一m程の長さしかなく、床に刺さって完全に固定されているため、ほとんど動きがとれない。
どうやら歓迎されている訳ではなさそうだ。
だが、そもそもここはどこだ? 俺は自らの記憶を細緻に掘り起こしていく。
昨日の晩、俺はアインと酒場で会い、話の流れでアインに自分の過去を語った。そこまではいい。それから俺は店を出て、アインに……刺された……!
そうだ! 傷は!? 俺は瞬時に背中に手を回し、刺された場所を確認する。
傷は、無くなっていた。だがまだ痛みは残っている。そこまで深く刺された訳ではなかったらしい俺はほっとため息を吐く。
だが安心している場合ではない。どうすればここを脱出できる? 考えろ。俺は周りを見渡す。そして、俺は愕然とした。
俺は3m強四方の木の柵で囲われた空間におり、横1mの場所に、同様に全裸で鎖に繋がれたエルフの雌がいたのだ。
薬でも打たれたのだろうか、充血した目を見開き、口からは止めどなく涎が垂れ、アァー、アァーと掠れた声を上げている。
一体、何がどうなっている。疑問は膨らんでいくばかりだ。
しかし身動きがとれない以上、何らかの接触を行う他ない。
状況が変化するのを見極めるために、俺はじっくりと接触する機会を待つことにした。
しかし、その日も、その次の日も、小屋を訪れる者はいなかった。
俺はにわかに焦り始める。このまま誰もここに来なかったら俺はどうなってしまうんだ? 死ぬのか? しかしそんな俺の焦燥も嘲るかのように、エルフの雌の笑い声だけが闇夜にむなしくこだましていた。
三日目の朝。少しだけ状況に変化があった。小屋の外からエルフの子供がこちらの様子を窺っていのだ。
何でもいい、手掛かりが掴めるかも知れない、そう思った俺は、エルフの少年の警戒心を解くためにっぱりとした笑顔を少年に向けた。
すると少年は恐る恐る藁敷きの床に、足を踏み入れる。
思えば、俺がリリアと出会った時もこんな感じだっただろうか。おどおどしている少年と、リリアの面影が、ふいに脳裏で重なった。
同時に、ほのかな感傷と情けなさが胸中に芽生える。
俺はそんな感情を浮かべてしまった自分に腹が立って、吐き捨てるように小さく舌を打った。
少年は俺の前で立ち止まる。しばらくは親指をくわえながら、俺を興味津々に見詰めていたが、やがてその場にしゃがみ込むと、俺の頭を撫で始めた。俺の頭に手が届くように短い腕を懸命に伸ばし、可愛らしい掌で。ぎこちないなでなでの所作があどけなさを感じさせる。
「いいこ、いいこ」
屈託のない笑顔で俺の頭を撫で続ける少年は、俺をどのように認識しているのだろうか。人間?動物? もしかして家畜?
いずれにせよ、無邪気で無知な子供だからこそ、そういう行為に対して腹が立つものだ。
「おい、あんま調子乗ってっと……ブチ殺すぞクソガキッッ」
俺はあらん限りの気迫を顔に乗せ、エルフの幼い少年にぶつける。
少年は驚いて尻もちをついてしまった。そして一瞬間を空けて、顔をしわくちゃに歪ませると、とうとう泣き出してしまう。
何度かよろめきながらも立ち上がると、とてとてと小屋の外へ泣きながら駆けていった。
遠巻きに「びぇーん、おにいちゃーん、ヒト怖いよ~」という少年の声が聞こえた。
続いて、「よしよし、恐かったな、だけどヒトの小屋に行っちゃダメって言ったじゃないか。ヒトは野蛮で凶暴なんだ。近づいたらダメだぞ」
とエルフの少年を諭す声が聞こえる。
それはまごうことなきアインの声だった。
状況の把握をするため、とりあえず上体を起こし、辺りを見渡そうとする。
すると、ジャリンという音が、首元から響いた。慌てて自分の体を確認する。
首輪が付けられていた。次いで俺の脳が認識したのは、自らが全裸であるという事実だ。
どういうことだ? 何故俺は全裸で首輪に繋がれている?
首輪から伸びる鎖は一m程の長さしかなく、床に刺さって完全に固定されているため、ほとんど動きがとれない。
どうやら歓迎されている訳ではなさそうだ。
だが、そもそもここはどこだ? 俺は自らの記憶を細緻に掘り起こしていく。
昨日の晩、俺はアインと酒場で会い、話の流れでアインに自分の過去を語った。そこまではいい。それから俺は店を出て、アインに……刺された……!
そうだ! 傷は!? 俺は瞬時に背中に手を回し、刺された場所を確認する。
傷は、無くなっていた。だがまだ痛みは残っている。そこまで深く刺された訳ではなかったらしい俺はほっとため息を吐く。
だが安心している場合ではない。どうすればここを脱出できる? 考えろ。俺は周りを見渡す。そして、俺は愕然とした。
俺は3m強四方の木の柵で囲われた空間におり、横1mの場所に、同様に全裸で鎖に繋がれたエルフの雌がいたのだ。
薬でも打たれたのだろうか、充血した目を見開き、口からは止めどなく涎が垂れ、アァー、アァーと掠れた声を上げている。
一体、何がどうなっている。疑問は膨らんでいくばかりだ。
しかし身動きがとれない以上、何らかの接触を行う他ない。
状況が変化するのを見極めるために、俺はじっくりと接触する機会を待つことにした。
しかし、その日も、その次の日も、小屋を訪れる者はいなかった。
俺はにわかに焦り始める。このまま誰もここに来なかったら俺はどうなってしまうんだ? 死ぬのか? しかしそんな俺の焦燥も嘲るかのように、エルフの雌の笑い声だけが闇夜にむなしくこだましていた。
三日目の朝。少しだけ状況に変化があった。小屋の外からエルフの子供がこちらの様子を窺っていのだ。
何でもいい、手掛かりが掴めるかも知れない、そう思った俺は、エルフの少年の警戒心を解くためにっぱりとした笑顔を少年に向けた。
すると少年は恐る恐る藁敷きの床に、足を踏み入れる。
思えば、俺がリリアと出会った時もこんな感じだっただろうか。おどおどしている少年と、リリアの面影が、ふいに脳裏で重なった。
同時に、ほのかな感傷と情けなさが胸中に芽生える。
俺はそんな感情を浮かべてしまった自分に腹が立って、吐き捨てるように小さく舌を打った。
少年は俺の前で立ち止まる。しばらくは親指をくわえながら、俺を興味津々に見詰めていたが、やがてその場にしゃがみ込むと、俺の頭を撫で始めた。俺の頭に手が届くように短い腕を懸命に伸ばし、可愛らしい掌で。ぎこちないなでなでの所作があどけなさを感じさせる。
「いいこ、いいこ」
屈託のない笑顔で俺の頭を撫で続ける少年は、俺をどのように認識しているのだろうか。人間?動物? もしかして家畜?
いずれにせよ、無邪気で無知な子供だからこそ、そういう行為に対して腹が立つものだ。
「おい、あんま調子乗ってっと……ブチ殺すぞクソガキッッ」
俺はあらん限りの気迫を顔に乗せ、エルフの幼い少年にぶつける。
少年は驚いて尻もちをついてしまった。そして一瞬間を空けて、顔をしわくちゃに歪ませると、とうとう泣き出してしまう。
何度かよろめきながらも立ち上がると、とてとてと小屋の外へ泣きながら駆けていった。
遠巻きに「びぇーん、おにいちゃーん、ヒト怖いよ~」という少年の声が聞こえた。
続いて、「よしよし、恐かったな、だけどヒトの小屋に行っちゃダメって言ったじゃないか。ヒトは野蛮で凶暴なんだ。近づいたらダメだぞ」
とエルフの少年を諭す声が聞こえる。
それはまごうことなきアインの声だった。
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