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第三章 真相
真相 4 ジミーの正体
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アインはそう言って一つ溜息を吐く。長話を終えて単に疲れているのか、俺の愚鈍さを呆れているのだろうか、俺には判断する術はない。
「……ってんだ」
「あぁん?」
「何だってんだ! テメーさっきからごちゃごちゃ語り散らかしてよう、全部テメーの身勝手な推理に過ぎねーじゃねーかッ!何でお前なんかが真相なんて知ってるんだ!おめぇは養殖場のッ、単なる種エルフにすぎねぇだろーがよぉ! ああオイ? お前にリリアの何が分かる! 根拠のねぇ憶測だけで俺のリリアを汚すんじゃねえ!」
俺の、最後の足掻きだった。自尊心を一かけらでも守りたいが為の最後の足掻き。だがそれも、アインに軽く一蹴される。
「はっははははぁ、お前、自分が何て言ったかもう一回復唱した方がいいぜぇ? だってよ、クク、可笑しいだろ、さっきまでは『リリアのせいで人生がっ!』とか言ってたクセによォ、今度は何だ? 『俺のリリアを汚すな』だァ? ころころ変わり過ぎだろォ、オイ、レイ君よォ?」
「う、それは……」
「まァいい。そんなに知りてぇなら教えてやるよ。なんで俺が真相を知っているのかをなぁ! いいか、まずよぉ、リリアは密猟監視官だったわけだよなぁ? じゃあよぉ、お前は疑問に思わねぇのか? もう一人はどこに行ったのかってことをよぉ」
あ、と声が漏れる。そうだ、何故俺は今まで気づかなかったのだ、密猟監視官は、2人一組で行動するはずだろうに。
「そうだよ、あの時、お前らの旅を逐一監視していたもう一人の監視官がいたんだよぉ! 誰か、分るかィ?ビックリするぜぇ?」
「誰だよ……、誰なんだよっ!!」
気付けば俺は、あんなに聞くのを拒絶しようとしたアインの話に聞き入ってしまっていた。我に返り、口元を手で押さえる。
「ジミーだよォ、屠殺人ジミー」
アインは満面の笑みで監視官の名前を発表する。
「う、嘘だッ !!ジミーがそんなことするはずない!俺の監視なんてするはずがないっ」
俺は、根拠もなくただひたすら否定をする。認めたくない。
次々に、自分の知っている人物が崩れてゆく。次々に、俺の知らない人物が現れてくる。俺はそれがただひたすら怖かった。だってそうだろ? リリアは無知なエルフの少女だ。ジミーは屠殺場のおっさんだ。父さんは村を見捨てて出て行った、ただの甲斐性なしだ。
……なんで、みんな違う人になるんだよぉ、戻ってよぉ。
「クク、ショックかぁ?ジミーはよぉ、昔、帝国の騎士だったって言ってたらしいがありゃあ嘘だ。実際は密猟監視官で、屠殺場に異動になったのはつい最近のことだ。だからこの真相は、全部お前らのことをずっと監視していたジミーから聞いたんだぜぇ」
アインはうつむく俺をツンツンと、指でつつく。俺には既に、それに反応する気力などなかった。
「そもそも、お前の昔話なんて聞いてやってたのは、ジミーの話との整合性を確かめるためみてぇなんだ。お前を拉致る前に、どうしても本人の口から喋ってもらう必要があったからなぁ」
アインは手をひらひらさせながら言う。
そうか、俺の長い長い昔話は、所詮単なる答え合わせに過ぎなかったという訳か。なら、俺は半ば自らこの状況を作り出してしまったようなものではないか。もう、笑うしかない。
「……なぁ、レイよぉ、ジミーはいやに、エルフの肩を持つと思わなかったか?屠殺なんて物騒なことしてる割にはよぉ。実はジミーもなぁ、エルフ側に通じていたんだよ、人間でありながらなぁ。まぁ、エルフの屠殺をやってりゃあ、エルフに通じてるとは思われないわな。だから、エルフ側もジミーが屠殺することに関しては黙認していたんだ。まぁ、情報を流してもらえるなら、それくらいは我慢するだろう。
そしてジミーは、屠殺処分になったエルフを殺さず密かに育てていたんだ。勿論全部じゃない、数十匹に一匹、ロメリに気付かれないように、こっそりと、だ。そしてその中の一匹が俺だったという訳だ。ラッキーだったぜぇ、本来なら俺は、精力が弱まった種エルフとして一生を終える予定だっんだからなぁ!そして俺は、ジミーハウスで言語を習う傍ら、俺をおもちゃにして遊んだハーフエフ野郎の話を聞いた。そうだよ、テメェだよっ!
……俺ははらわたが煮えくり返る思いだったよ。俺の生きがいはお前への復讐になった。まぁ、今違うがな。アインを未だに名乗っているのは臥薪嘗胆ってやつだ。お分かりかな?」
アインの口調はすっかり元の調子に戻っていた。もう、何も言い返すことはできなかった。
「まぁ、別にお前が信じようが信じまいが、本当はどうだって良かったんだ。お前がこれを聞いて何を思おうが、どうせ何も行動できやしないんだ。憤慨し、俺に殴りかかることも、リリアの墓を建て死を悼むことも、立って歩くことすらなァ!」
そう言ってアインは悪どい笑みを浮かべる。俺は歪み切ったその笑顔に、本能的な恐怖を覚えずはいられなかった。
「……ってんだ」
「あぁん?」
「何だってんだ! テメーさっきからごちゃごちゃ語り散らかしてよう、全部テメーの身勝手な推理に過ぎねーじゃねーかッ!何でお前なんかが真相なんて知ってるんだ!おめぇは養殖場のッ、単なる種エルフにすぎねぇだろーがよぉ! ああオイ? お前にリリアの何が分かる! 根拠のねぇ憶測だけで俺のリリアを汚すんじゃねえ!」
俺の、最後の足掻きだった。自尊心を一かけらでも守りたいが為の最後の足掻き。だがそれも、アインに軽く一蹴される。
「はっははははぁ、お前、自分が何て言ったかもう一回復唱した方がいいぜぇ? だってよ、クク、可笑しいだろ、さっきまでは『リリアのせいで人生がっ!』とか言ってたクセによォ、今度は何だ? 『俺のリリアを汚すな』だァ? ころころ変わり過ぎだろォ、オイ、レイ君よォ?」
「う、それは……」
「まァいい。そんなに知りてぇなら教えてやるよ。なんで俺が真相を知っているのかをなぁ! いいか、まずよぉ、リリアは密猟監視官だったわけだよなぁ? じゃあよぉ、お前は疑問に思わねぇのか? もう一人はどこに行ったのかってことをよぉ」
あ、と声が漏れる。そうだ、何故俺は今まで気づかなかったのだ、密猟監視官は、2人一組で行動するはずだろうに。
「そうだよ、あの時、お前らの旅を逐一監視していたもう一人の監視官がいたんだよぉ! 誰か、分るかィ?ビックリするぜぇ?」
「誰だよ……、誰なんだよっ!!」
気付けば俺は、あんなに聞くのを拒絶しようとしたアインの話に聞き入ってしまっていた。我に返り、口元を手で押さえる。
「ジミーだよォ、屠殺人ジミー」
アインは満面の笑みで監視官の名前を発表する。
「う、嘘だッ !!ジミーがそんなことするはずない!俺の監視なんてするはずがないっ」
俺は、根拠もなくただひたすら否定をする。認めたくない。
次々に、自分の知っている人物が崩れてゆく。次々に、俺の知らない人物が現れてくる。俺はそれがただひたすら怖かった。だってそうだろ? リリアは無知なエルフの少女だ。ジミーは屠殺場のおっさんだ。父さんは村を見捨てて出て行った、ただの甲斐性なしだ。
……なんで、みんな違う人になるんだよぉ、戻ってよぉ。
「クク、ショックかぁ?ジミーはよぉ、昔、帝国の騎士だったって言ってたらしいがありゃあ嘘だ。実際は密猟監視官で、屠殺場に異動になったのはつい最近のことだ。だからこの真相は、全部お前らのことをずっと監視していたジミーから聞いたんだぜぇ」
アインはうつむく俺をツンツンと、指でつつく。俺には既に、それに反応する気力などなかった。
「そもそも、お前の昔話なんて聞いてやってたのは、ジミーの話との整合性を確かめるためみてぇなんだ。お前を拉致る前に、どうしても本人の口から喋ってもらう必要があったからなぁ」
アインは手をひらひらさせながら言う。
そうか、俺の長い長い昔話は、所詮単なる答え合わせに過ぎなかったという訳か。なら、俺は半ば自らこの状況を作り出してしまったようなものではないか。もう、笑うしかない。
「……なぁ、レイよぉ、ジミーはいやに、エルフの肩を持つと思わなかったか?屠殺なんて物騒なことしてる割にはよぉ。実はジミーもなぁ、エルフ側に通じていたんだよ、人間でありながらなぁ。まぁ、エルフの屠殺をやってりゃあ、エルフに通じてるとは思われないわな。だから、エルフ側もジミーが屠殺することに関しては黙認していたんだ。まぁ、情報を流してもらえるなら、それくらいは我慢するだろう。
そしてジミーは、屠殺処分になったエルフを殺さず密かに育てていたんだ。勿論全部じゃない、数十匹に一匹、ロメリに気付かれないように、こっそりと、だ。そしてその中の一匹が俺だったという訳だ。ラッキーだったぜぇ、本来なら俺は、精力が弱まった種エルフとして一生を終える予定だっんだからなぁ!そして俺は、ジミーハウスで言語を習う傍ら、俺をおもちゃにして遊んだハーフエフ野郎の話を聞いた。そうだよ、テメェだよっ!
……俺ははらわたが煮えくり返る思いだったよ。俺の生きがいはお前への復讐になった。まぁ、今違うがな。アインを未だに名乗っているのは臥薪嘗胆ってやつだ。お分かりかな?」
アインの口調はすっかり元の調子に戻っていた。もう、何も言い返すことはできなかった。
「まぁ、別にお前が信じようが信じまいが、本当はどうだって良かったんだ。お前がこれを聞いて何を思おうが、どうせ何も行動できやしないんだ。憤慨し、俺に殴りかかることも、リリアの墓を建て死を悼むことも、立って歩くことすらなァ!」
そう言ってアインは悪どい笑みを浮かべる。俺は歪み切ったその笑顔に、本能的な恐怖を覚えずはいられなかった。
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