Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました~

美保馨

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恋の忘れ形見③

ドアの向こうの誰か

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「耳鼻科行けよ。そして2度と帰ってくんな!
って‥‥コレ前にも言ったわね、クソ。‥‥ん?」


私は脳内でしこたま千鶴を殴った後、ふと雨宮先生の研究室のドアに目をやった。


誰‥‥?


20メートル先の廊下にあるドアを、誰かが開けた。



「澪、どうしたんですか?
もっと話しましょうよ。電話で話すのって新鮮です。
いつもは至近距離ですから、たまには遠距離というのも良いですね。」


「あ‥‥いや。」


ウキウキする千鶴の楽しそうな声が遠くに聞こえる。

私の視線は、開けっ放しのドアに注がれたままだ。


先生の研究室に、男‥‥?

そう、チラリと見たアレは男だったのだ。
しかもこの学校の教師ではない、ラフな格好をした若者だ。

顔は見えなかったけど、何となくアレは‥‥。



「フッ‥‥もしや、僕の声に痺れたのでしょうか?」


「あ~うん‥‥。」


話をまともに聞いていなかった私は、上の空で気の無い返事をする。


「‥‥え、本当ですか?
今、何と‥‥。」


「うん‥‥。」


誰だろう‥‥。
私、バッグを研究室に置いたままだったなぁ。

先生の友達とか彼氏だったらどうしよう。
取りに戻ったら、私邪魔になりそうだ。


「そうですか、やっと僕の魅力に気付いたのですね?
嬉しいですよ澪。」


「はぁ~‥‥まぁねー。」


クドイようだが、私は千鶴の話なんか聞いちゃいない。


「挙式、いつにしましょうか?」


いや、帰るならさっさと帰ろう。
先生だってそう思っているだろうし。

私は廊下を駆け出すと、バッグを取りに行くため研究室に向かった。


「ああ、ちょっと待って。
今帰るから。」


小声で無意識にそう受話器に呟けば、千鶴の嬉しそうな声。


「はい。寝床を暖めておきますね。」


「んー。」



とは言ったものの、ドアの前に着いた途端、立ち往生してしまった。

『どうもーお邪魔しまーす』
なんて言えばイイのだろうか?


そう、頭で巡らせていた時だった。

半開きだったドアは、私の鼻先で完全に開かれた。



―ガチャ‥‥



「あ!すいません、バッグ取ったらすぐ帰りますか‥‥ら‥‥。」



―え‥‥?
 
 
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